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夢にうつる桜  作者: 大正九十九
2/2

#2 好奇心と混乱

・・・本当にあった。実在した。何度も夢で見たこの景色。


少し歩いて、その大きな桜の木の近くまで来ると、木の根元にただ葉をかぶせただけの、隠しきれていない場所を見つけた。少し好奇心が勝って葉をどけてみる。


「っ!!」

そこにあったのは、夢の中で男の子が読んでいた本。やたら分厚い印象が残っていて覚えていた。


「これ・・・一体どういうことなんだ・・・」


夢と現実の区別がつかなくなりそうだった。あれは夢の中の出来事で、でも現実にこの風景もあの男の子が読んでいた本も存在する。その本を手に取り、中をパラパラとめくる。その瞬間、目を開けていられないほど眩しい光に襲われる。



――大きな桜の木

その木陰に座る人影――


「ん?ここは・・・?」


さっきまで葉桜だったはずの木は満開の桜が咲いており、その木陰にはあの男の子が座っていた。


「あ、やっと会えたね。」

「あ・・・えと・・・」

「ごめん、混乱してるかな?ここはさっきまでお兄ちゃんがいた世界とは少し違うんだ。」

「ちが・・・う?」

「うん!違うけど同じなんだよ!ぼくたちは同じ!」

「ごめん・・・ちょっと待って」


違う世界?違うけど同じ?考えても分からない。働かない頭で必死に状況を整理する。


拾った本をめくったら急に眩しくなって・・・、目を開けたら今まで夢で見てきた風景があって、そしてあの男の子がいて、俺に話しかけている・・・。


「お兄ちゃん・・・?」

「あ、あぁ、ごめんね。もう大丈夫だ。」

「ぼくね、ずっとお兄ちゃんとお話したかったんだー!やっと話せて本当に嬉しいんだ!いつもお兄さん、ぼくのお話聞いてくれないし、すぐに帰っちゃうから・・・」

男の子はそう言うと、ポケットから何かを取り出した。

「あー・・・時間がないなあ。お兄ちゃん、次に目を覚ましたら、さっき開いた本の裏表紙を見て。絶対だよ!」

「裏表紙?ところできみは一体だれなの!?」

俺の周りが光に包まれる。元の世界に戻るのだろうか。この世界のこと、男の子のこと、知りたいことはまだまだあるのに、理解も追いつかないまま帰されるなんて。

「ぼくの名前は・・・・・・―――



「・・・!・・・やくん!時谷くん!」

「・・・っ!」

「ふふ!お昼寝気持ちよかったかな?ごめんね~待たせちゃって。つい夢中になっちゃってさ。」


カメラって本当難しいね~と言いながら早坂さんは楽しそうに笑った。


「お腹すかない?ちょっとお茶しに行こうよ!」

「そういえばそうですね、行きましょう」


さっきまでのは夢だったのか?眠っていたなら夢、なんだろうけど。そういえば・・・。

男の子が言っていた、本の裏表紙。あれ?本はどこだ?


「時谷くん、こんな分厚い本なんて読むんだね!意外だよ~。」

「あ、それは」

「はい、返すね!木陰で読書をするってなかなかいい光景だったよー!」


本と同時にカメラを差し出される。そこには木陰で分厚い本を読む自分がいた。

そんなに真剣に読んだっけ?記憶にないその写真に、また混乱した。


「ありがとうございます」

「さぁ、車に乗って!この辺においしい紅茶のお店があるんだって!」




「今日は付き合ってくれてありがとね!久しぶりに良いお休みを過ごせたよ!」

「こちらこそです。ゆっくりできてよかったです」

「じゃあ、またね!今度は撮った写真見てね~!」



家に着き、拾った本を机に置く。不思議な気持ちだ。まだ夢でも見ているみたいだ。そういえば裏表紙を見てって言ってたなぁ。

本を裏返し、裏表紙を開く。


「なんだ・・・これ・・・写真・・・?」




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