《7.妹の食事》
ジュルジュル、と。
妹が右触手をコップに浸けてジュースを飲んでいる。
「ねぇ、妹」
「なんでしょうか、兄さん」
妹がジュースを飲みながら返事をする。
因みに妹はオレンジジュースがお気に入りだ。
「妹は食事しないの?」
うちに来てから自分が見ている範囲で食事をしているのを見たことがないんだが。
「割と平気ですね」
そういってズズズ、とジュースを飲み干す妹。
「でも、お腹空いたりしない?」
心配なんだけど。
「まだ、あまり…。半年くらいは大丈夫だと思います」
歯切れ悪く言う妹はなんだか遠慮しているようにも見える。
「妹は何を食べるの?」
「……肉」
こちらを見ないで言う妹。
………。
「なんの肉でも食べれる? 牛とか豚とか鳥とか」
「ええ、多分」
牛や豚や鳥が〝多分〟食べれる。
主食は〝肉〟。
…普段、何の肉を食べていたのかは聞かないでおく。
【~Az~】
「…という訳でお肉を買ってきた」
「ありがとうございます」
牛と豚と鳥。
取り合えず全部。
「いただきます」
「ちょっと待って!」
買ってきたままの生肉に触手を出そうとした妹を制止する。
「…なんでしょうか、兄さん」
一応確認しておきたいんだけど……。
「妹は生肉を食べるの?」
「? はい」
質問の意図をよく分かってないみたいな顔をしている妹。
ちょっとかわいい。
「普通の人たちは焼いたりして食べる」
「そうなんですか。…兄さんも?」
いや。
「俺は肉は食べない。主食は魚と野菜」
別にベジタリアンとかではないけれど。
趣向の問題で。
「なるほど」
頷く妹。
何に納得したんだろうか。
「普通の人は焼くんですね」
「うん、妹が生肉を食べるっていうんなら別にいいんだけど。一応、焼いて食べるの前提の肉だからちょっと心配」
衛生的に。
「兄さんが心配するなら焼きますね」
「え?」
そういって妹は触手で牛肉を掴んだ。
「えい」
妹がそういうと牛肉は黒焦げになった。
………。
「こんな感じですか?」
「妹」
いろいろ言いたいことはあるけどさ。
「焼きすぎ」
「…そうなんですか。せっかく兄さんが私のために買ってきてくれたのに」
妹がショボくれてしまった。
「残りはフライパンで焼こう。兄がやるから」
そういうと妹は顔を輝かせた。
「兄さんが焼いてくれるんですか!?」
「…コンロでね」
俺の手は発熱したり出来ないから。