第96話「忘れられた歴史」
ルベルトの姿を見て、頬をポリポリ掻いているクリス。
「タクロウも巻き込まれ体質だね!」
「それは……まあ、否定はできない」
ルベルトはもう既にハンマーを持ち構えている。
「ラスクに来い!! そうしたらお前の人生が変わる!!!!
セルシア様が全てだ!!!!!!!!!」
狂ったように叫ぶルベルト。
クリスはその光景を見て、ルベルトに左手を向ける。
「ごめんね! 今は親子水入らずなんだ。
少し邪魔かな!」
そう言い放った後、ルベルトの頭上から──
禍々しい黒い球体が現れ、ルベルトを押し潰す。
「ガッグハァィア!!!」
ルベルトは呻き声をあげるも、
圧倒的な力でGで押し潰されている。
これは王級闇魔法の重力圧。
無詠唱で簡単に圧倒的な魔力を込め放った。
冒険者ランク、ハートのルベルトが、
瞬殺されているのだ。
俺は驚嘆していた。
この人……強すぎる。
クリスは威圧を込めながらルベルトに問いただす。
「何が目的かな? 教えて貰えると、嬉しいんだけど。
君は何者だい」
ルベルトは呻き声をあげるだけで──何も話さない。
「父さん! こいつは光のブックマンのNO.Ⅲなんだよ」
「いや……そんな訳がない。ナンバーズはこんな雑魚じゃない」
クリスは訝しみながらルベルトを睥睨している。
そして、確信があるかのように俺の言葉を否定する。
だが、すぐにルベルトは口を割らないと判断し。
そのまま気絶させたクリス。
突如──クリスの魔法が消えた。
それと同時に──人が現れた。
俺とクリスは跳躍して現れた二人に視線を転じた。
「お久しぶりです。
タクロウ様、フェスティバル素晴らしい活躍でア〜ル」
ニッコリと笑みを見せながら神出鬼没で現れる銀髪野郎。
ビニ町の岩龍のクリスタを奪った男。
光のブックマンのNO.V。
その隣にいるのはエメラルドグリーンの長髪に、
スーパーモデルの様なスタイルの良い女が居た。
────俺は左手に紫電を纏わせた。
「お前……何でこんな所にいる!!」
「今日は私用ですよ。まぁ、前回も教会で会った時も私用でしたが。
ただ、今回はナンバーズではない人間が──
勝手に名乗られていたのでここに来たのでア〜ル。
本当のNO.Ⅲは隣の彼女でア〜ル」
NO.Vは会話をとても楽しんでいる。
恍惚とした表情、声色から伝わってくる。
気持ち……こいつ。
「タクロウ様! お初にお目にかかります。
NO.Ⅲと申しますでア〜ル。
貴方がNO.VIIでしたか」
とNO.Ⅲが言うと、クリスは俺の前に立ち、
二人の目線から遠ざけた。
「おやおやおやおやおや!!! まさか! まさか!!
興奮ものでア〜ル。
こんな所に宝六魔の一人。水魔神様がこんな所にいるとわ!
しかも、タクロウ様、その息子とは……素晴らしいでア〜ル」
NO.Vは今すぐにでも涎が出そうな程に、
悦に浸っていた。
「宝六魔……水魔神……何だそれ」
俺はボソッっと呟いた。
その言葉にすぐさまNO.Vは反応した。
「あらあら〜タクロウ様知らないのでア〜ル?
では私がご教授しましょう。
宝六魔と言われるのは最強の称号です。
火、水、風、土、闇、光、その一つを極めた者がそう名が付くのです。
クリスさんは水を極めた、水魔神です。
それと同格なのは四宝剣です。
一応、タクロウ様! 私は東水流の東水神です。
いつでも剣もお教え致しましょう〜」
この場の遊悦に酔いながら、NO.Vは俺に語りかける。
だが、俺は話がよく分からなかった。
ただ、宝六魔の話は分かった。
クリスは水魔法を極めた最強の魔法使いなのか。
「ごめんね、君には私の大切な息子を任せられないよ。
まさか、君が光のブックマンだとは思わなかった……が。
アルベルト・R・ガウェイン」
俺はクリスの言葉に驚愕した。
アルベルト ・R……。
セナ!!!
「私はタクロウ様の驚く顔を見れて──とても幸せでア〜ル。
私と会った時、まさか……知らないとは思わなかったので。
少し、こちらが驚きましたが……。
私は結構、有名な人間なのですよ〜タクロウ様。
王族であり、東水神である私。
まるでこの世界の人間ではない様に……知らなかったですね〜
タクロウ様〜」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら話す、ガウェイン。
「お前は……セナの家族なのか?」
「ふふっ私の妹ですね〜恐悦至極でア〜ル。
光の王族と言われながら光魔法が使えない妹に価値があったとは。
タクロウ様の妾になり血族となればアルベルト・R家は永久の者となりましょう〜」
セナが光魔法を使えない??
どういう事だ?
普通に使っていたが……。
だが、今はそんな事はどうでもいい。
こいつはセナを完璧に物として扱ってやがる。
「おぃお前!!」
俺が感情に任せて襲いかかろうとした所をクリスが制止した。
「これ以上煽るようなら、私が相手になるけど!!」
クリスは殺気に満ちた眼光で光のブックマンを睨む。
だが、それを嘲笑うようにガウェインは告げた。
「ですので今回は私用でア〜ル。タクロウ様!
この世界はご存知ですか?
獣人、エルフ、龍族、ドワーフなどなど、なぜいないのでしょう?
誰も知りません。歴史も存在しない!!!
タクロウ様も気にされてはいないのでしょうか?
私達、光のブックマンは全てを明かす者!!
二つの世界を一つにする、それがセルシア様のお望みなのです〜
その方は何も話せません。
一戒の呪いがかかっておりますので。
だが、何故、三百年前の転生者がここに居るのか不明ですが!
タクロウ様のいる場所はそこではありません。
貴方は必ず私の元へと現れる。
その為のNO.VIIです
ではタクロウ様! また会いましょう」
俺とクリスはただ、ただ、ガウェインの話を聞いていた。
クリスは代わりに話す者を邪魔しなかった。
ガウェインの言葉……宿敵にも関わらず。
漁り火のような明かりを目印に俺は進んで行くことになる。
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