第91話「雷神対風神」
「じゃあ〜僕はルークの面倒を見るね!」
アテナに背負われているルークを受け取るセナ。
ルークは満足気にすやすや眠っていた。
「すまないセナ」
アテナは少ししょんぼりしていた。
俺はアテナの顔を見て、すぐに告げる。
「アテナありがとうな! ルークを守ってくれて」
その言葉を聞いて、にぱっ〜と喜色を見せるアテナ。
アテナはすかさずタッタッタッと俺の前に近づく。
「主殿!」
「アテナ悪いが、レイの援護をして欲しいのだが、
行けるか?」
「勿論です!」
そう、返事をしてすぐさまその場から跳躍して、
レイの元へと駆けていくアテナ。
「セナはルークを頼む」
「わかったのだよ〜」
俺は上空に浮かぶ、カインを睨む。
俺との距離は結構ある。
しかも、あの回避スピード。
かなり不利だ。
だが、同じクランとして、俺も活躍したい。
「〝雷道〟!」
俺は魔法を唱えて一瞬にして、
上空に浮かぶカインの、後ろに回り込む。
「地を這うものが!!!!」
カインは背中に回り込んだ俺に気づき、
間髪を入れず、そのままの状態で指を鳴らす。
風刃が俺を襲う。
「〝魔力盾〟」
俺はカインの攻撃を障壁で防ぐのと同時に、
数百の障壁を宙に展開させた。
「すごいだぴょん!!
なんですかあれ!!!
防御魔法を足場に使ってるぴょん!!!!!
しかも尋常じゃない数だぴょん!!!」
ルルが実況し、大型ビジョンに俺が映る。
眩い閃光の後の、その姿に、
誰もが、驚嘆し──固唾を呑んで見ていた。
俺は障壁の上に立ち。
カインと相対していた。
「何だよ……それ!!」
(あの数の魔力盾を展開させて、持続させるだと……。
だが、魔力盾を持続させながらだと、他の魔法を放てないはず。
すぐに地に叩きつけてやる)
「〝雷槍〟」
俺は魔法を唱えた。
雷の槍が速攻でカインを襲う。
カインは指を鳴らし、風刃を放ち、魔法を相殺させる。
だが、カインは驚愕していた。
(ツイン魔法だと……。二つの魔法を同時に行使するとは……。
俺でも出来ない技をコイツは……)
どうすればいい……。
俺は魔法を放ったとしても、
カインは指を鳴らすだけで中級魔法を唱えられる。
そして、簡単に相殺される。
考えろ──
閃光……。
そうか。
「〝眩光〟!!!」
俺は上級光魔法を唱えた。
眩い光が一瞬にして過ぎ去っていく。
NO.Vとの戦闘で見た魔法。
あのセバスチャンでさえ、目が眩んだ魔法だ。
「また、閃光だぴょん
目が〜目がやられたぴょん」
「くっ──そう!!!!」
カインが目を瞑りながら辺りを警戒している。
俺は跳躍して左手を握り、魔法を唱えた。
「喰らえ!! 〝雷拳〟」
カインは風の自動障壁に集中させ、疾風を身体に纏わせる。
だが、紫電がバチバチとなる左手は物凄い勢いでカインの腹を抉る。
「ぐきゃあ────」
カインは上空から、くの字で吹っ飛び──海に叩きつかれる。
しかし、咄嗟にカインは風の障壁で、勢いを殺していた為。
気絶はしなかった。
「〝雷閃光〟」
俺は時を移さず魔法を唱えた。
雷鳴を轟せ──雷がカインに向かう。
「〝荒狂暴風〟」
カインが唱えた王級風魔法。
俺が唱えた雷を巻き込み、俺へと襲う。
「〝魔力盾〟!!!」
雷を纏った竜巻は障壁で止まる。
息を切らしながら、遠くから睨むカイン。
(どんな魔力量してやがる。
シールドをまだ足場として展開させているのにも関わらず。
体力が落ちてねぇ。
だが、何だ……あの防御力。王級魔法でもビクともしねぇ。
しかし、攻撃が弱い。それをつけ込めば余裕だ)
カインは上空にあがり、
魔力盾を展開されてない場所へと、すぐに移動をした。
トップスピードで動くカインは、鷹よりも早い。
「ハッハッハっ!!!
もうお前の遠距離攻撃など当たらねぇ!!」
「〝雷道〟」
俺は高速移動して、カインの間合いに近づき。
左手を握り魔法を唱えた。
「〝雷拳〟」
拳を振りかざす俺の姿を見てニヤリとするカイン。
「〝針風〟」
上級風魔法を唱えたカイン。
ハリネズミの様な風の針が目の前に現れる。
俺は勢いそのままで風の針を殴る──
「──ぐぁ!!!」
俺は左腕を潰されて悶絶しそうになる。
左手から大量の血がダバダバと流れる。
その前に足場だ。
魔力盾を唱えないと──
「地に落ちろ〝荒狂暴風〟!!!」
「シッ────」
「遅せぇ!!!!!!!」
すぐにカインは王級風魔法を唱えた。
俺は魔法を唱えられず、竜巻に巻き込まれ地面に叩き落とされた。
家を簡単に倒壊させる魔法に潰された。
「────グハッ!!」
消え入りそうな俺の視界から血飛沫が映る。
瓦礫の中に埋もれながら、頭だけが回転を始める。
俺は……何を俺はやっているんだ。
ただの……観光街のフェスティバルだ。
俺は十分にやった。
もう、こんな痛い思いするのは嫌だ。
痛い。
俺の頭の中に浮かび上がる。
セナ、レイ、アテナ、ルークの表情。
俺はいいのか。
それで……。
俺は悔しいんだ。
負けて……こんなにも……悔しいんだ。
勝ちたい……。
強くなりたい……。
俺だって……。
勝ちたい。
ただ……勝ちたいんだ。
こんなにも悔しいなんて……。
────俺はもうこの世界の人間なんだ。
勝ちたい!!!!!
「〝修正光〟!!!!」
俺は全身を治癒させた。
だが、身体はまだフラフラしている。
ボロボロになりながらも双眸でしっかりと、
上空にいるカインを捉え、左手を向け詠唱する。
左手が紫電を纏い──バチバチと音をたてている。
カインもそれに気づき詠唱を初めた。
「《穿て、穿て、穿て。
──全てを攫う風よ。
──我はどこにでも現れ、全てを奪う。
──消え失せろ。
神風!!!!》」
「《天をわかつ力を持って大地を屠らん。
──音色は幾万を恐怖させ幾万に知らす。
──閃光の前に全てを滅せよ。
──神裁》!!!!!!!!」
俺はまた────放った瞬間。
視界が真っ白になった────
……俺は強くなりたい。
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