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第87話「婚約者」

 目の前の姿。

 突然の事でリリーは固まっていた。

 ずっと、追いかけてた姿が、目の前にある事に。

 それはリリーにとって邂逅(かいこう)だった。


 だが、偶然ではなかった。

 カインが狙って、リリーとセバスチャンを探したのだ。


「カイン……」


 小さくポツリと呟く様に出る、リリーの言葉。

 いつもの様な太陽みたいな明るさはなく。

 表情も、全く覇気がなかった。


 リリーの表情を見て。

 セバスチャンはリリーの前に出る。

 嫌な予感を察知して。

 カインがセバスチャンを睨み、告げる。


「セバスチャン、何故ここにいるんだ」


 威圧を込めた、言葉を放つカイン。

 カインの言葉を聞き、徐に言葉を返すリリー。


 セバスチャンに問いかけた言葉だったが、

 そんな事が判断出来ないくらい、リリーは動揺していた。


「フェスティバルで……その、活躍したくて」

「はぁ……お前は大人しく家に入ればいい。

 余計な事はするな!」


 必死に振り絞るように声を出すリリーに対して。

 深いため息をした後、鋭い言葉を入れるカイン。


 その、カインの鋭い言葉はリリーに深く突き刺さる。

 リリーの目尻にはもう涙を浮かべていた。

 セバスチャンはリリーの顔を見て、言葉を飛ばす。


「お嬢様は貴方を追いかけてきたのです」

「くだらん。ストーカーか? 元婚約者だろ。

 新しい婚約者の方を大切にしろよ」

「カイン……私は……」



 ---



 カインとリリーは婚約者だった。

 土の神様デュオ様を崇める、大国カルバーム王国。

 風の神様ファンド様を崇める、空中都市マルタニア王国。


 カルバーム王国、伯爵家の長女リリー。

 マルタニア王国、伯爵家の長男カイン。

 二人は二国家間の技術提携の為の政略結婚だった。


 空中都市マルタニア王国だけが持つ、転移魔法陣の技術。

 大国マルタニア王国が持つ、農産技術。

 二つの国は昔から仲が良かった。


 それは三大英雄と言われる。

 水のライア。

 風のコゼット。

 土のエース。


 その絡みもあってか、二国間は尊敬しあっていた。

 カルバーム王国が、もし、転移魔法陣を手に入れば。

 流通が良くなり、多くの人に国内の農産物を広く進められる。


 マルタニア王国がもし、農林技術を手に入れれば。

 空中鎖国と言われた国でも、より国内で自給自足が進む。


 ────メリットしかなかった。



 カインは風の神様ファンドから、呼び出された転生者だった。

 多大なる恩恵を貰い。

 神から受けた使命は、

 島国アースのフェスティバルで優勝する事。


 ────見聞を広める為に。


 それだけが指名だった。


 ファンドの言葉は。

 この周期は()人が呼び出されている。

 光の神、セルシアは気をつけろ。


 カインは前世の記憶もあり、幼い頃から神童だった。

 風の神様を崇める国で風魔法が無双できる。

 カインは何でも出来る気がした。


 イージーな人生だった。


 だが、二国家の技術提携をよくないと考えるモノが、

 何故かカインを襲う。


 カインはその当時、カルバーム王国のリリーの家に、

 よく遊びに足を運んでいた。


 だが、むしのしらせを聞いた。

 二国家の婚約は解消されたと。

 そして、カインに関わる全ての人間が殺されていたのだ。

 その惨状は人が殺したのではなく。

 魔物に殺されていたのだと。



 二国家はそれから、相互不干渉となった。

 戦争もせず、追求もしない。

 二人の英雄を踏まえての、妥協点だった。


 カインはその時から強さを求めるようになった。

 前世と比べて、簡単に命が消える世界。

 力が力が全てだと。


 それからカインは姿を消した。


 リリーがその後、聞くのは。

 彼の噂だけだった。



 ---



 セバスチャンが細剣を構える。


「俺と戦うつもりか? セバスチャン」

「お嬢様を守るためです」


 セバスチャンの言葉にカインは殺気に満ちた眼光になる。


「ハッハッハッハ!! 笑っちゃう

 何が! 何が! 守るだァ?

 自分の奥さんと娘をダンジョンで死なせたお前が?

 守るだと!!」


 カインは高笑いしながらセバスチャンを挑発する。


 カインの言葉を聞き、

 ハッとしたリリーはセバスチャンに告げる。


「そうなの? セバスチャン……」

「はい……お嬢様」


 リリーはその内容は知らなかった。

 カルバーム王国で名が知れたセバスチャンは何故か、

 幼い頃のリリーの執事になったのだ。


 リリーはセバスチャンが何故、

 執事として仕えたくれるか疑問だった。

 だが、献身的にフォローをしてくれるセバスチャンに、

 言葉はいらなかった。


 セバスチャンはカインの瞳を見て、告げる。


「その手から零れてしまったからこそ、

 貴方はわかるのではないのですか?」

「なら!! 守って見ろよ! セバスチャン!!」


 セバスチャンの想いを込めた言葉。


 だが、カインは両手の指を鳴らす。

 すると、無詠唱の中級風魔法が放たれる。

 風刃(ウインドカッター)がセバスチャンに向かう。


 言葉はいらない、力で示せとでも言うように、

 口元が綻びながらカインは放つ。


 セバスチャンは細剣で風刃(ウインドカッター)を振り払う。

 だが、間髪入れずにカインは指を鳴らす。


 指を鳴らす度に簡単に素早く魔法陣が現れ、

 風刃(ウインドカッター)が放たれる。

 無詠唱の連続魔法。


 尋常じゃない速さで放たれる魔法。

 だが、セバスチャンは攻撃しない。

 その場から動かない。

 ただ、振り払うだけで、攻撃をしない。


 カインの一回指を鳴らすと五つの魔法陣が出る。

 先程までと段違いの数を出すカイン。


 全く動こうとしない、セバスチャン。

 セバスチャンの衣服がボロボロになっていく。

 だが、後ろのリリーは無傷だった。


 セバスチャンのその姿を見て。

 カインが苛立ちを見せながら告げる。


「何故! 動かない! 武技を放たない!!!!

 セバスチャン!!」


 カインの激情を初めて見るリリー。

 だが、見守るしか出来なかった。


 セバスチャンは戦う意思がなかった。

 ただ、守るだけ。

 リリーの大切な人を、

 執事である私が傷つける訳にはいかない。

 頑として固い意思をみせるセバスチャン。


 カインが激情に走ったのは。

 セバスチャンの意図が直ぐにわかったからだ。


「守るだけです」

「面白いセバスチャン!!!」


 再度、カインは指を鳴らそうとした瞬間。

 カインは鋭い威圧に気づく。


「〝雷槍(ライトニングスピア)〟」


 バチバチと響く雷の槍がカインを狙う。

 カインは指を鳴らし無詠唱の風刃(ウインドカッター)で相殺させる。


「────お前か」

「よう! 金髪野郎、俺が相手だ!」


 転生者同士の戦いが始まるのであった。

この度は、読んで下さり有難うございます。

皆様の評価とブクマが励みになっております。

今後とも、引き続きご愛読いただければ幸いです。

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読んで下さり有難うございます。
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