第86話「覚悟」
「何だよ……コイツ」
感電しながら気味悪く叫ぶ、ルベルト。
俺はその狂気に少し後退りしていた。
「タクロウ様、ここは僕が倒すので、お先にどうぞ」
爽やかな笑顔を見せ、俺に告げるソノ。
「大丈夫か? 相手はランク、ハートだぞ」
「大丈夫ですよ! 勝たないといけない時が、男にはあるんです」
笑顔を見せるが、鋭い眼光を放つソノに、俺は気づいた。
ソノは優しく言葉を言うが、
臟が煮えくり返っていた。
それは、ソノとピケがタクロウと合流したのにも関わらず。
ルベルトの視線、言動はタクロウにしか向いていなかった。
まるでどうでもいい物を、
ただ退かした程度に思っているルベルトに。
「わかった。ここは頼んだ、ありがとうな」
「はい、タクロウ様もご武運を」
「あぁ」
俺はその場から去ろうとした。
去り際にピケが俺に告げる。
「先程は、すみませんでした」
俺はその言葉に踵を返すと、ピケが深々と頭を下げていた。
「何かあったか? 俺は、気にしていない」
(アテナ様が認める訳ですね)
「ゲエハハハハァ。挨拶は終わりか?」
ルベルトはすかさず、
ハンマーを伸縮させ、上空からハンマーを振り下ろす。
「〝魔力の盾〟!!」
俺の頭上から凄まじいスピードで、振りかざされたハンマーは、
ソノの障壁で止まった。
俺はルベルトに向け、
ニヤリと獰猛な笑みを見せ、その場から消えて行く。
「逃がすかぁああああぁぁあ!!!!!!」
俺の挑発に対して。
ルベルトの咆哮が響く。
視線がタクロウの方を向いているのを見計らって。
ピケは武技を放つ。
「〝五月雨〟」
ピケの細剣から放たれる、素早い連続の突き。
その武技は北土流の伝統の技である。
素早い攻撃を得意とする。
北土流
あらゆるものを受け流しカウンター技を得意とする。
東水流。
圧倒的な一撃を得意とする。
南火流。
トリッキーな道具や武器を得意とする。
西風流。
この世界は四つの伝統流派が存在する。
狂戦士の一族と言われるモノは、
全ての流派の武技を簡単に使えるという。
武器を持つと最強の一族。
それがピケのずっと──憧憬していた。
剣聖アテナだった。
ピケの武技をルベルトは、
ただ、左腕でガードするだけで防いだ。
防具の耐久性、体の魔強化だけで、防いだのだ。
何年も何十年も鍛錬した技を簡単に止めた。
だが、ピケは攻撃を止めなかった。
今までのピケであれば、この光景を眼にすれば。
諦念し、一瞬、いや攻撃が止まっていただろう。
だが、ピケは一切攻撃を止めなかった。
素早く動き、ルベルトの視線から外れるように、
また、武技放つ。
「〝五月雨〟!!!」
ルベルトはソノの攻撃をハンマーで振り払おうとするが、
激情にかられている攻撃など、かすりもしなかった。
ソノの鋭い突きが、何度もルベルトの金色の鎧に刺さる。
「クソっ鬱陶しいいい!!!!!」
ルベルトの咆哮にニヤリと口元を返し言葉を放つ。
「ようやく──私を見たな」
ピケが攻撃が届かずとも、心がぶれずに動けているのは、
信頼する人がいたからだ。
「これで終わりですよ。 〝突出岩〟」
ソノが唱えた上級土魔法。
時間をかけ、魔力を込めた魔法。
ルベルトの足下、いや周りを全て囲むように、
魔法陣が現われる。
そして、魔法陣から数多の尖岩がルベルトに迫る。
一瞬だった。
ルベルトを籠城するように岩が集まった。
それはまるで鋼鉄の処女の様に突き刺していた。
その光景を見て、
ホッと方を撫で下ろす様にソノはピケに笑顔で告げる。
「やりましたね」
この言葉は異世界でも同様のフラグであった。
ルベルトを籠城する岩は凄まじい音を立てて崩れていく。
「クソっやろおうおおおお!!!!」
━━━━━━━━━━━━━━━刹那。
ピケが武技を放つ。
「〝五月雨二式〟!!!!!!」
この時を待っていたかのようなタイミングで放つ。
ピケの渾身の技。
百を超える突きが一瞬でルベルトに向かう。
ルベルトは余裕の笑みを見せ、魔法を使わず、
腕でクロスガードをするが。
甘かった。
ルベルトの余裕を踏まえて放たれた武技は、
圧倒な技であった。
この一撃の為に、
心を、攻撃を研ぎ澄ませていた。
────その一撃は止まらない。
ルベルトは物凄い、勢いでくの字に吹っ飛ばされる。
ピケは吹っ飛ばされる光景など、見ずに踵を返し、
ニヤリとし、ソノへと向かっていくのであった。
ソノは驚嘆していた。
いや、少し悔しさもあった。
自分で倒すと言っておきながら。
肩を撫で下ろした自分に。
だが、それ以上に目の前の強い騎士にただ。
惚れなおしていたソノだった。
「ピケ……凄い」
「いや、そんな事はない」
ピケは何が強さなのか、わかった気がした。
そして、はぐれたセバスチャンとリリーを探しに行くのであった
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タクロウ、ピケ、ソノがルベルトが戦っている最中。
金髪ツインテールは戦場を見渡していた。
リリーのツインテールがぴょんぴょんはねていた。
高ぶっているのだ。
「うぬ、ルルの解説はかなり助かるわね」
「そうですね。お嬢様」
リリーの傍にいるのは執事のセバスチャン。
「おお!!! 鬼神のハドリー殴る倒す。殴るぴょん〜」
円卓の騎士のメンバーが大型ビジョンから消えた直後。
ルルはずっとハドリーの解説。
そして、海の上のウインドフィッシュが、
「もう直ぐくるぴょん、もう直ぐくるぴょん」と解説をしていた。
リリーとセバスチャンはウインドフィッシュが、
街に入るまで戦闘を避けながら、隠れながら移動していた。
だが、ソノとピケとはぐれたのは想定外であった。
「もう少しで魚が街を覆うから視界が悪くなる。
その間に少しでも戦わず。力を温存するわよ!」
「はい、お嬢様」
「やっと──見つけた」
リリーのツインテールの動きが止まった。
聞き覚えのある声。
追いかけてた声。
視線を転じると、
そこにはカインが立っていた。
「魚が来る前にそろそろ脱落しようか。お二人さん」
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