第84話「女騎士ピケ」
私はいつの間にか剣を向けていた。
悔しい──
悔しかった。
私が欲しいものを軽々と手に入れる。
この男が羨ましい。
私はセバスチャンの弟子だ。
力が全てのカルバーム王国で貴族でありながら、
私の家は力がなかった。
私自信も力がなかった。
カルバーム王国は土魔法を得意とする王国であり。
土の神様デュオ様を崇める大国家である。
その中で赤髪で褐色の肌をもつ一族。
狂戦士の一族はこの国でも一目置かれていた。
その中には私の憧れの人がいた。
剣聖アテナ様だ。
弱肉強食のこの国で、
絶え間ぬ努力で剣のみで成り上がった人である。
魔法が下手クソで諦念していた私に、
可能性があると希望を持たせてくれた方である。
私の幼なじみのソノは天才だった。
十になる前から三属性の魔法を操っていた。
彼は爽やかだった。
その当時の私は「ハハハ」と笑いながら、
なんでもこなせる彼が嫌いだった。
私はソノの紹介でリリー様に出会った。
リリー様は太陽みたいな人だった。
何事にも明るく、ただただ、真っ直ぐだった。
リリー様に使える執事。
セバスチャンとの出会いが私の人生を変えた。
セバスチャンはこの国で有名な方みたいだ。
私はリリー様に促されて、この人の弟子になった。
セバスチャンは強かった。
歳を全く見せない動き、眼光、覇気があった。
この人の弟子になれば、
あの剣聖アテナ様にも少し、近づけると実感が湧いた。
胸が高鳴った。
来る日も来る日もリリー様の所に通い。
セバスチャンにご指導をいただいた。
私は──それで気づいた。
幼なじみの彼を。
ソノの事を。
彼も毎日、何処かへと出かけていた。
ハッとして私は彼を探しに行った。
すると、リリー様に会い、言われる。
練習の邪魔になるからダメだと。
私は思った。
彼は見えぬ所で、
天才にも関わず、絶え間ぬ努力をしていたのだと。
子供の頃の私はようやく気付いたのだ。
誰もが高みに登るためには、
絶え間ぬ努力が必要だと。
そして、私は気付いてしまった。
天才が努力をしているのなら、
私はどれだけ努力をすればいいのだろうか。
凡人な私が高みに登るためには。
私はその時から女を捨てた。
すると、ソノは突然。
私に告白をしてきたのだ。
付き合って欲しいと。
私は理解が出来なかった。
いつの間にか私の手はボロボロで、
こんな手を好きになる人はいないと思っていた。
女らしい言葉も愛嬌もない私に、
どうしてか分からなかった。
ソノは私を護る為に、
ずっと努力をしてきたのだと言う。
私は嬉しくもあり、ムカついた。
私はまだ彼にとって護られる存在。
弱い存在なのだと思った。
私は断った。
だが、彼は何度も何度も私にアタックしてくれた。
正直、彼の様な才能があれば、
行くて数多あるのだろうと思ったから。
しかし、私は彼の優しさに惹かれてしまっていた。
そして、リリー、セバスチャン、私とソノ。
それぞれの目的を持って。
虹色ダイヤの捜索依頼を立てていた。
ただ、セバスチャンの目的は知らなかった。
三十階層、虹色ダイヤの依頼は困難を辿っていた。
一つは──私、ソノ、リリーの三人を無事に送り届ける。
後、リリー様は気に入らない方には頼らなかった。
それをクリアできるクランは中々いなかった。
やっと、一つのクランを依頼した後、
ビニ町でリリー様と仲良さそうに話している男がいた。
ソノはその男を昼食に誘った。
その最中で岩龍のクリスタが盗まれた。
元々このクリスタはカルバーム王国の家宝であり、
どうしてかビニ町の博物館に収められたモノである。
私達は動揺した。
そして、男は探すと言い出した。
私も皆と同じ様に何を言ってるんだっと思った。
私が口に出そうとした先にソノが言った。
だが、途中でソノ言葉が詰まった。
それは男の実力を認めたって事だった。
男の内容を聞き、セバスチャンは追いかけて行った。
その男はセバスチャンの後を追いかけた姿を消した。
しかし、やはり、逃げられたらしい。
私は安心した。
何故か安心してしまった。
その夜。
男と一緒にディナーをする事になった。
すると、セバスチャンは男に、
虹色ダイヤのクエストを依頼した。
私は驚愕した。
男は私と同い年の十四だと言うのに、
頭を下げて依頼をしたのだ。
しかも、私の師と仰ぐ、
セバスチャンの瞳は尊敬の目をしていた。
その言葉にリリー様は声を上げた。
だが、セバスチャンは直ぐにフォローをする。
私よりも強いとすんなり言ったのである。
すんなり認めたのだ…………
私はその時に気づいた。
ビニ町で思った感情はこの男に対しての嫉妬だ。
ただの嫉妬だった。
だが、男はリリー様の依頼を断った。
命が欲しいだと。
くだらん。
そんな────理由。
そして、私はリスブン街にいた。
クラン、琥珀の名を上げるために、
観光街のフェスティバルに参加をする予定であった。
そこには私の憧れの剣聖アテナ様も訪れていると言う。
そして、トップクランの、
七色の十字がフェスティバルに出るらしい。
すると、リリー様が会食があるから付いてきてと言う。
私は疑問に思いながらも追従した。
現れたのはあの男だった。
そこに居たのは小さい子供と女二人だった。
そうか、あの時のクエストの話をか。
依頼を受けたのだと悟った。
だが、なんだ──このメンバーは、
私と変わらない女二人と子供だと。
ふざけている。
リリー様とセバスチャンは何も言わない。
──認めていた。
話が進むとルークと言う少女は言う。
この男は千血と戦って、圧倒しただと言う。
私の憧れの剣聖アテナ様の姉。
剣聖アテナが絶え間ぬ努力の上にも勝てなかった相手が、
私と同い年の男が圧倒しただと。
しかも、しかも、しかも、しかも、しかも、
私は女を捨てたのだ、
なのに、なのに、
コイツはなんだ。
女二人、子供とベタベタして。
こんな奴になんで。
狂ったような嫉妬が私の心を支配していた。
そして、開会式に足を運んだ。
すると、目を疑う光景がそこにはあった。
アテナ様が居た。
私の憧れの剣聖アテナ様が。
クランにとうとう、とうとう、
入られた。
そこにはあの男が居た。
目を疑った。
だが、アテナ様はその男の事を主殿と言う。
耳を疑った。
なんで、なんで、なんで、
私は捨てたのだ。
なんで、
私が欲しかったモノを簡単に手に入れる。
私は剣を向けた。
嫉妬に狂いながら。
---
「あのピケ、俺は女と戦わないんだ。その」
殺気を俺に放っている。
今まで俺と会ってずっと無表情だったピケがなんで。
ピケが俺を睨みながら告げる。
「女と戦わないだと。ふざけるな!!!!!」
ピケの裂帛が辺りに響く。
「どうしたんだよピケ。ソノ、何かあったのか?」
「何故、ソノに聞く、関係ないだろ。
剣聖アテナ様と千血アデュラと戦っただろう!!
女にも関わらず」
「それは仕方なくて!」
「そうか、分かった!!!!」
ピケが俺に向かって素早く剣を突きつける。
俺の無詠唱魔法。
オートプロテクトがピケの剣を防ぐ。
ソノは何も言わず、こちらを見ている。
「なっ……なんだその魔法は!!!!!!!」
なんて、荒れてるんだピケ。
クールビューティじゃないのか。
ピケは連続で剣を振りかざす。
だが、無詠唱の自動障壁が剣を止める。
「クソっ!!! クソっ!!!! クソっ!!!!」
はぁはぁと息を切らしながらピケが距離をとる。
────刹那。
ピケがハンマーの攻撃を横から受け。
クの字に吹っ飛ばされる。
ソノがクッション材の代わりになり後ろから受け取るが、
そのまま吹っ飛んでいく。
「なっなにが……」
突然、ハンマーが現れ、
吹っ飛んでいったソノとピケを見て。
俺は驚愕していた。
「ゲェハハハ。
いたァ!! いたァぞ!!! タクロウ!!!!」
ハンマー持って、現れたのはクラン赤羅の群青。
ランク、ハートの金色のルベルトだった。
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