第79話「それぞれの思惑」
開会式が終わり。
冒険者達はちりじりに解散をしていた。
例年に比べてスピーチが短いらしい。
まぁ、ハドリーのさっきの行動。
オリハルコンぺちゃんこ事件を見れば、
ダラダラ開会式を続けようとは思わないだろう。
後は今年は異例の参加者。
異例の参加者人数らしい。
詳しい残りの話や王女のお言葉は、
フェスティバルの開始前に少し話すみたいだ。
開会式が終わると同時に、
セナとレイは直ぐにこの場から出ていった。
戦の前の腹ごしらえは大事と言いながら。
俺達の為に何か買いに行っている。
俺はアイテムボックスの中にある、
食べ物でも良かったのになっと思いながらも負けた。
ありがたいことである。
圧巻だったのがクラン赤羅の群青だ。
一斉に軍隊みたいに綺麗に出ていったのは、
見事であった。
一応念のために──
金色のルベルトがどんな奴かチラッと見たが、
馬鹿みたいな金ピカの鎧をつけている男だった。
名の通りの格好である。
顔は普通だった。
イケメンじゃないふふふっ。
許す。
続々と冒険者達が大広場から出ていく中、
聞き慣れた声に俺は視線を転じる。
リリーとカインか。
「私も……そのフェスティバル出るから……その」
吃りながらリリーがカインに声を掛けていた。
俺はその姿を見て一驚していた。
まるでずっと──憧れていた男の子に、
声を掛けているようにモジモジしている。
リリーは本当にカインのこと好きなんだな。
婚約者か……
「俺に構うな」
「あの……」
その一言をリリーに言い、
カインはその場を去っていった。
リリーの自慢の金髪ツインテールが、
しおしおになっている。
カインの背中を見ながら。
呆然と立ち尽くしているリリー。
それを見て同じメンバーの、
ソノがにっこりと笑顔で声を掛ける。
「お嬢様! フェスティバルで目立ちましょう。
頑張りましょう」
ピケもそっとリリーに寄り添って声を掛ける。
「お嬢様、私も微力ながらお力添えさせていただきます」
そう言いリリー達。
琥珀のメンバーは出ていった。
執事のセバスチャンは俺達に会釈をし、
リリーの後を追って行った。
カインの奴め。
あ〜いう、クール系の金髪イケメンはモテるんだよな。
あ〜ムカつく。
もう、俺は彼奴の事はどうでもいい。
同じ転生者かな、とか気になっていたが。
心底興味が無い。
「主殿〜」
「あつっうだ!」
圧倒的な衝撃。
柔らかさ。
俺の背中に──あ、たる。
変な声を出してしまった。
俺は後ろを見る。
「アテナどうしたんだ! 急に──」
ふふふっと笑いながらアテナは俺に告げる。
「開会式中、セナが主殿にこうやっていたので。
真似っ子したのだ」
「いや、その……だからなんで!」
「喜ばれていたと思ったので」
「それはまぁ……」
鋭い殺気が俺を襲う。
セナかレイか?
いや違う、
この感じは──
「私の妹はくだらん男に捕まったようだな」
やはり──千血か。
アテナは俺に抱きつきながら、
鋭く睨みながら千血に告げる。
「ワタクシの主を愚弄するとは姉でも許さん」
「ほほぉ、力の差を忘れたとは言わせんぞ」
アテナと千血の姉妹が睨み合っている。
この場から出ようとしていた冒険者達は足を止め。
ゴクリとその場を見ていた。
アテナ──後ろから抱き付きすぎだろ。
背中、背中、背中!!!
だが──この姉妹は仲が悪いのか?
突如、千血はルークの方に目を向け。
ふんっと鼻で笑い告げた。
「おぃ何故このガキがこの場にがいる。
このガキはなぁ。
酒場にいる時に私に泣きつき、無様に仲間になって欲しいと懇願してきたんだ。
それでボコボコにしても、血反吐を吐かせてもくっついて来る。
みっともないガキが」
千血は冷たくルークを睨みながら言う。
ルークは千血の目を見ながら反応する。
「私はとてもみっともなかったかも、しれません。
弱い貴方に仲間になって欲しいと無様に泣いて。
私は無力でまだ弱いです。でも貴方を越します」
ルークに舌打ちをし睥睨する千血。
「────千血!!!」
俺はそう言い千血に向かった。
何故か──とてもムカついた。
ルークがどんな思いで此奴に頭を下げたのか、
仲間になって欲しいと血反吐を吐きながら懇願したのか、
あの時の涙はなぜ零したのか。
完璧に理解はしていないが。
ムカついた。
俺は左手を握りしめ──紫電を纏い向かった。
俺は気づくと白いハンマーを殴っていた。
なんて──硬さだ。
「ほう喧嘩か? 珍しいな、子供相手にアディラ」
止められた?
雷の攻撃を??
しかも武器で。
感電していない。
ハドリーが俺の攻撃を止めていた。
「なっ……」
「いいパンチだ。ふふふっだが、この続きはあとでだ。
行くぞ、アディラ」
「あぁ」
そう言って二人はその場から去っていった。
千血の名前はアディラか。
対面してわかった────
鬼神のハドリーの強さ。
ビクともしなかった。
「────いでぇ!!!!!」
レイとセナが俺の元へと走ってきた。
「お兄様、大丈夫ですか?」
「大丈夫? 治すから! 慈愛の光」
俺は左指は全部骨折していた。
セナの上級光魔法で俺の指が治っていく。
まさか、あの一撃で俺の左手が粉々になるとは、
これは前途多難だな。
「ありがとうなセナ」
「うん! 大丈夫なのだよ〜」
「お兄様びっくりしました。
まさか、七色の十字やり合っているとは思いませんでした。
もう少し早ければ私も加勢をしましたのに」
「ありがとうなレイ。
でも驚いたよ、あんな、ちみっこなのにあのパワー。
ドワーフは強いんだな〜」
俺の言葉に──
セナとレイとアテナとルークはキョトンとしている。
「お兄様、ドワーフってなんですか?」
「ん? 知らないとか? エルフとかドワーフとか猫族とか犬族とか?」
「タクロウなんなのだよ? それ?」
あれ??!
どういう事だ。
クロはドワーフって言ってたよな?
博識の二人が知らない。
何故だ??
俺は存在をしているのに知らない顔のセナ達に驚きつつ。
理解するのであった。
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