第75話「父親と息子」
俺はトイレにいた。
何時になったら、
セナとレイの許しの声が聞こえるか──
俺はずっと待っている。
「みゃあ〜」
「よしよし〜」
トイレに猫ちゃんは衛生的にいいのか?
──っと思うが。
クロは俺の傍を絶対に離れない。
本当に闇の女神なのか疑わしくなる。
俺はトイレに入って。
一時間が以上いるが音沙汰がない。
しかも、扉の外から音が聞こえない。
暇である。
時間があるから久しぶりにクリスに電話をしてみるか。
色々と報告もあるからな。
俺は徐にプラティークで電話をかけた。
「もしもし、父さん!」
「おう〜珍しいタクロウの方から電話なんて。
何かあったか?」
「まあ、時間があるし話したかっただけさ」
「そうか──そうか〜」
声色で伝わるな、喜んでいるって電話をしてよかった。
「とりあえず、母さんは元気かい?」
「はっはっはっ元気だよ。タクロウも元気かい?」
「あぁ、元気だ。
色々あって──今はリスブン街に来てるんだ」
「ほぅ〜この時期にリスブン街とはフェスティバルかな?
あれは中々のモノだよ! はっはっはっ!」
「そうなのか?」
「ネタバレはしないよ〜
でも、参加にはクランに加入が必要だが。
タクロウは作ったのか? クランを」
「作ったと言うか加入をしたんだ。
円卓の騎士ってクランにな!」
「……そうか! なら、優勝を狙うんだぞ!」
(円卓の騎士……これも──運命なのか?
まさか、このクランの名前を再び聞くことになろうとは)
俺は少しクリスの声色が変わったような気がした。
俺はクリスにムーンマウンテンから──ここに至るまでを全てクリスに話した。
しかし、シルビアとクロ以外の話を。
「ほぅ、君は巻き込まれ気質にあるみたいだね」
「その言葉には何とも言い返せないが──」
「親に似て子もか、ふふふっまぁ面白い」
「面白いのかよ!」
俺はもうちょっとクリスが驚くと思っていたが。
笑い声を漏らしながらクリスは聞いていた。
ただ、カインの話になった際は、
間が出来たような気がした。
「君も魔法学園に入るまでに色々見て周り。
経験を積むといい」
「あぁ、そうするよ〜」
「父さんからの助言をあげよう。
残りの五人の転生者には気を付けた方がいい。
神からの恩恵を貰った、転生者は化物だ。
その血を引くモノにもね。わかったかい? タクロウ」
「わかった」
えっと〜クリスの話だとやはりルークは転生者。
残りの五人の同じ周期に呼び寄された。
五人の転生者には気をつけろって意味合いだよな。
しかし、クリスも知っていたのか?
聞いてみる方が早いか。
「父さん知っていたのか? 七人の転生者の件は」
「あぁ〜知っているさ。それは僕も転生者だからね〜」
「────ぇぇぇっっええええええええええ」
「ふふふっ〜」
俺は面を食らった。
クリスは電話越しで、めちゃくちゃ爆笑していた。
ここぞと狙ったように話したんだ。
なんてあっさり……
────くそっ
きっと、俺の反応を楽しみにしていたんだ。
俺と同じ周期でクリスは転生したのか?
──あれ?
んっ、どう言う事だ……?
「今、頭が混乱してるね〜
もう直ぐフェスティバルじゃないかい」
「────あんたのせいだろ!!!!!」
────俺は叫んだ。
ビビったわ──
まさかそんなの告白されるとは思いもしなかった。
この人はまったく……いつもいつも。
「ふふふっ〜思った通り。いや、それ以上の反応だったよ」
「なんで、今のタイミングで言ったんだよ……」
「言わないと会話が噛み合わないからね〜
後は君が一つ真実に近付いたから話さないとな〜って思ったのさ」
「じゃあ、父さんも同じ周期に呼び出された転生者なのか?」
「父さんか……変わらないのか?」
「今更、呼び方は変わらないさ。
この世界の親父はあんただ」
「ふふふっそうか──そうか。
私は君とは違う周期の転生者だ。後は内緒だ〜」
「わかった。
また、変なタイミングで言って俺を驚かせようとしてるな〜」
「ふふふっ、バレたか。
最後に仲間を増やすといい。
一つ一つの縁を大切にするんだ。
それが君の未来の為になる。
フェスティバル頑張りたまえ、タクロウ」
「あぁ、ありがとう。また電話するよ」
「君の行く末に幸運を願うよ」
俺はクリスとの電話を終えた。
まぁ、いいやぁ。
考えるはとりあえず後だ。
クロが俺の頬をぺろぺろ舐めている。
「みゃあ〜」
「可愛いなぁ〜クロ。電話してよかったな〜
なぁクロ。にゃあにゃあ〜」
「にゃあ〜」
猫は本当に可愛いなぁ〜癒される。
すると、外から声が聞こえる。
「お兄様〜トイレから出てきてください。」
「出るのだよ〜」
やっと、終わったか……長かった。
俺は立ち上がりトイレから出ようとした。
『二時間も真面目にトイレに居るからですよ。
もう直ぐフェスティバルの時間だと言うのにあなた様は』
「えっ???」
トイレの中なのに声が聞こえる。
いや違う──頭の中から声がする。
──えっ???
どういうことだ。
これは……クロの声だ──
『当たりですよ! あなた様。
肩に乗っているワタクシですよ〜念話です』
──えぇええええええええええ
「みゃあ〜」
つぶらな瞳で俺を見つめる黒猫は、
間違いなく闇の女神様だ。
女神は俺に念話で話しながらも、
俺の頬をぺろぺろしているのであった。
クロが俺の傍にいる事で、
この世界を知るスピードが早くなるとは、
今の俺は思いもしていなかった。
後!!!!
お前が呼び出した転生者は異常だ!!!!!
馬鹿だろ。
BY過去の俺へ。
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