第69話「前夜」
明日のフェスティバルには七色の十字も出るのか。
あのクラスが出るとなると優勝は少し、難しいかもしれない。
俺が考えに耽っていると、ルークは目を輝かせながら言う。
「ふふふっ! 優勝は円卓の騎士が貰います!
タクロウ様は負けません!!」
「ルークの言う通り、お兄様は負けません!」
「そうなのだよ! 僕の弟子は簡単にやられないよ〜」
レイ、セナ、ルーク達の息のあった。
その真っ直ぐな言葉に俺は普通に照れてしまった。
嬉しかった…………
リリーは俺を一瞥した。
その後、レイ達を物凄い形相で睨みつけている。
金髪のツインテールが暴れている。
今までで一番暴れていた。
「ふ〜ん。でも、七色の十字には勝てないわよ」
リリーが言った後、
同調するようにピケも言う。
「難しいかもしれませんよ。
あの千血もフェスティバルに参加するみたいですから」
やはり、そうなのかあの赤髪隻眼の女も出るのか。
だとするとカインも出る確率は高いな。
ルークの顔をチラッと見た。
その顔は、ほらきた、ふふふっとでも言うような。
とても誇らしげな顔をして、リリー達に語り出した。
「タクロウ様は千血と対等に戦い。
追っ払いました! すごいんです!!」
「「「「なっ!!!!!」」」」
ルークのその言葉にリリー達は驚愕していた。
その反応にレイ、セナ、ルークは満足そうに、
鼻高々な顔をしていた。
リリーは俺にそっと告げる。
「カインと戦ったの?」
「戦ってないけど」
「そう」
カインとリリーは知り合いなのか?
リリーは急に大人しくなった。
しかも、とても汐らしい顔をしている。
俺は突然のその表情に少し戸惑った。
それはセナ達も同じであった。
俺は疑問を抱きながら言う。
「リリー大丈夫か?」
俺の言葉にリリーの代わりにセバスチャンが言う。
「カイン様はお嬢様の婚約者なのです。
少し事情がありまして、申し訳ございません」
「いや、いや大丈夫ですよ!」
セバスチャンは会釈を俺達にする。
これ以上追求は出来ない。
いつもなら何言ってるのよ、セバスチャンっとでも、
言う筈なのに……
普通の恋する乙女みたいな、しゅんとした顔をしている。
内心、びっくりしている。
まさかカインが婚約者とは…………
俺は一拍を置いてセバスチャンに話す。
「セバスチャン! 虹色ダイヤの内容をしよう」
「そうでした、タクロウ様。ありがとうございます」
セバスチャンは俺に会釈をする。
「いえいえ」
「では、クエスト内容ですが。
目的は先程、伝えた通りです。
決行日はフェスティバルの後の日付となります。
参加クランは珊瑚、円卓の騎士、自由の翼、この三つのクランが参加となります」
「なるほど!」
「自由の翼とは二十五階層の依与吏の地で集合となります」
「わかりました」
わかりましたとは言ったものの。
依与吏の地、クラン、自由の翼。
俺は初めて聞いた。
だが、しゅんとしているリリーをこれ以上。
ここに引き止めるのは悪いだろう。
俺はそう思い、質問するのは諦めた。
そして、リリー達と別れた。
とりあえずは目の前の事だなフェスティバルだ。
---
ホテルへと着き。
唐突にルークが俺に告げる。
「何で何も聞かないんですか?
何で子供なのに一人なのかとか。
クランのリーダーなのかとか少しは聞かないんですか?」
「まあ、気になるけど悪い子じゃないから別に気にしていない。ただ、それだけさ」
「そう、ですか」
俺はルークに微笑んだ。
ルークはじっと俺を見つめて言葉が溢れ出した。
「私は本当は子供と認めて欲しかったのです。
自分の子と……。
でも、ちゃんとした血統なのに才能がないのです。
それが悔しくて私はその……」
「そうか、そうなんだな」
途切れ途切れの話なのに……
ルークが本当に心の内に秘めている。
思いだと直ぐにわかった。
俺は何も聞かずにルークの話を聞き。
優しく抱きしめた。
レイとセナもルークの話を聞き。
まるで、鏡を見るように優しい瞳で見つめている。
思いを吐露した後。
ルークはスースと可愛い寝顔を見せた。
「寝ちゃったな? ルーク」
「はいお兄様、この子も色々大変な思いをしたのですね。
きっとちゃんと話せる日が来ます。私のように」
(ルークはすごいな。僕は全然話せていないや)
セナは俺を優しい顔をで見つめている。
俺はその顔を見た瞬間に言葉がこぼれた。
「別に言わなくていいと思うよ。
その人の一部でも、確信的にいいなぁって思えるのであれば、それだけで充分さ。
女の秘密は魅力ってよく言うだろ!」
「ハグハグ〜」
「お兄様! 私もたまたまハグハグがいいです」
「みゃあ〜」
セナはそれを聞きニッコリとした。
──すかさずセナとレイは抱きついてきた。
その後、俺も穏やかな眠りについた。
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「ここの先が彼が泊まっているホテルか」
「悪いけど!
僕の弟子は明日のフェスティバルの為に熟睡中なんだ」
「お兄様に何か用ですか!!」
俺が寝ている際。
夜に剣聖とセナとレイが相見えるとは思ってもいなかった。
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