第67話「出会い」
「なっ!! 急に何しやがる!!」
「アタクシに背を向けるとはいい度胸だ!」
障壁で大剣は止まっていた。
剣聖はニヤリと口元を見せながら剣に力を入れている。
その凄まじい剣圧は言葉よりも早く──
俺を逃がさないと言うのを全身に伝えてくる。
俺はまた面倒事に巻き込まれたと諦め。
立ち向かう意思に切りかえた。
その攻防を見ていたルークは俺に告げる。
「褐色の肌をもつ人は狂戦士の一族が多いです!
武器を持たせると最強の一族です。
気をつけてください!!」
剣聖は一旦後ろに下がった。
大剣を持つ手を上げながらクルクルと大剣を回している。
片手でなんて軽々持ち上げているんだ。
この姿を見たら狂戦士の一族は納得だ。
剣聖はまたニヤリとした口元を見せ。
足をグッと踏み込み。
砂埃を宙に舞いあげながら、
切り裂くように俺に向かった。
剣聖の大振りは魔力盾によって、
止まった。
「クソ! めんどくさい!!」
「これもこれも!!! 耐えるのか!!!!」
剣聖は戦いを楽しむ様に、
俺の出方を伺いながら、攻撃している。
その攻撃は徐々に重くなっている。
剣聖は口元が綻ぶ程に戦いが好きなのだろう。
だが、剣聖は大剣を振り回しているだけなのに、
俺は障壁を維持する魔力を取られていく。
──これが剣聖か。
「守るだけなのか? 見せてみろ!!
見た事ない魔法を!!」
「穿て!!! 〝魔力盾〟」
雷を大剣で払うんだ──
俺はそう思いながら魔法を唱えた。
だが、剣聖は身体をスピンさせて軽々と避けた。
なんて、動体視力なんだ雷を避けるとは……
剣聖は笑いながら、
もう一度、俺に剣を思いっきり、振りかざす。
俺は魔法を唱えた。
「またか! 〝魔力盾〟」
「ふふふっ! 楽しい! 楽しいぞ!!」
剣聖の攻撃を障壁で止めた。
障壁と大剣を合わせる中──
剣聖が俺にだけ聴こえる声で告げた。
「なるほど、この障壁の強度と魔法のスピード。
私の姉と戦って、無事とは納得がいく」
「姉?」
「千血だ」
だから剣聖は俺と模擬戦をしたいと言い出したのか。
この威圧感と深紅の赤髪はソックリだ。
俺はルークが言った言葉と照らし合わせ疑問を浮かべた。
────剣聖が壮絶な殺気を俺に向けた。
「ほう、貴様も疑問に思うのか! 肌の色!!!」
瞳は雄弁とはよく言ったものだ。
何も言っていないのに……
少しの表情だけで剣聖は俺の考えを読み取った。
剣聖の地雷を考えてしまった。
先ほどまでの威圧とは違う、殺気に息を飲んでいた。
剣聖はもう一度下がり、
勢いを付け地響きを立てながら、俺に向かう。
俺はこの戦いをどうしたら止めれるのか──
考えながら魔法を唱えようとした。
━━━━━━━━━━━━━━━刹那。
スローモーションのように緩やかになった時間の中で──
俺の肩からクロが唐突に現れた。
ちょこんと座りながら──
────鳴いた。
「にゃあ〜」
「クロ!!」
「猫!!」
鳴き声の後──
剣聖の上から黒い球体の様なモノが現れた。
その黒い球体から凄まじいGが剣聖にのしかかり攻撃する。
「──────グハッア!!」
剣聖は指も足も瞼さえも動かす事が出来ない。
Gに耐えていた。
抗おうと目だけは見せているが、
それを許さないGが剣聖を支配していた。
その様相を見ていた文官達は悲鳴に近い。
驚きの声を上げていた。
「王級闇魔法の重力圧だと!!」
「剣聖が一切を動けない程のなんと!!」
「闇と光を両方を使えるとは聞いたことがない!!!」
唖然としている俺。
肩にちょこんと乗っているクロが再度──
可愛く鳴く。
「にゃあ〜」
クロが鳴き声を上げた。
剣聖へのGが激化した。
剣聖は何も出来ずに気絶をした。
俺は肩に乗っている──
クロをマジマジとみながら頭を撫でた。
「クロ〜よしよし」
「みゃあ〜」
呆気に取られている俺と文官達。
ルークが王女を睨みながら告げた。
「私達の勝利です! これ以上関わらないでください!!」
デリラは妖艶な眼差しで見つめ立ち上がり告げる。
「よい! わらわは楽しみた。
褒美もやろう〜、馬車で帰るとよい〜」
俺は文官に褒美を貰い。
馬車へ乗り込むのであった。
---
「起きられましたか?」
声をかけられ目を開けると白い天井が見える。
ハッとして。
アッシュはすかさず、身体を起こした。
「私は負けたのか!」
起きて直ぐに出た言葉。
少し驚きながらも、魔導師はアッシュの問に答える。
「はい、その通りでございます」
「そうか」
(私は一撃で伸されたのか? なんと……)
目を輝かせていたアッシュ。
魔導師にもう一度質問をした。
「ちなみにあの方はどうされた!!」
「もう帰られましたよ」
「そうか」
(なんとカッコ良く、颯爽に……
今までに感じた事のない衝撃を全身に浴びた。
これは運命だ! もう彼に仕えるしかない)
俺の知らないところで一撃で伸された。
アッシュが誓いをたてていた。
俺はさっぱり知らずにいた。
初めて感電に運命を感じながら、アッシュは誓ったのである。
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