第62話「神様ゲーム」
赤髪隻眼の女が俺を鋭く睨む。
周囲の音など聞こえていないかの様に、
俺だけを鋭い眼光で睨んでいる。
人がここまで、殺気を放てるものなのか?
徐ろに赤髪隻眼の女はアイテムボックスから武器を出す。
その武器は死神の鎌ような漆黒の武器だ。
女の身長は百六十はあるというのに、
鎌の方が圧倒的にデカい。
それを片手で軽々と持っている。
女の立ち姿は、
どれだけの鍛錬と修羅場を潜ってきたんだと、
分からせるような雰囲気だった。
俺は隻眼の女のキッと睨んだ。
臆するな、臆したら負けだ。
俺は睨み合い、構えた。
「おい!!」
「出るな!!! 外は危険だ!!」
「もう辞めろ行くなぁ!!」
「────死ぬつもりか!!!」
酒場内の男達が物凄い大声で、
何かを止めている。
俺は酒場の入口に視線を転じると、
先程の少年がいた。
髪も服もボロボロなのに、
なんて目をしているんだ……
俺は負けてない、
そんな瞳で、仁王立ちしながら、
隻眼の女を睨んでいる。
酒場の中には屈強な男達も多く居た。
だが、その男達が言葉すら許さぬ女に、
もう一度立ち向かおうとしているか?
少年は瞳をキッとして、
赤髪隻眼の女を睨み、告げた。
「──これは僕の戦いだ!!! 逃げるのか!!」
その言葉が耳に届いた瞬間、
不敵な笑みを見せ、隻眼の女は少年に言う。
「ほう、わからせるとするか」
赤髪隻眼の女が再度、少年の方へと歩み寄る。
俺はそれを見て──女の足を止めるように告げる。
「なら──君の戦いに参戦だ!!」
「えっ!!!!」
少年はその言葉を聞き、
面をくらったような顔をしている。
先程までの鋭い瞳は消えて、
目をぱちくりとさせた後、俺をマジマジ見ている。
俺は獰猛な笑みを浮かべ、
威嚇するように隻眼の女に告げる。
「あれ? お姉さんは子供二人相手だと困っちゃうか?」
何も言わず、
ノーモーションで漆黒の鎌で俺に襲いかかった。
一振の風圧でその力と重さを感じ取る。
酒場内にいた人もギャラリーとなり。
その戦いを息を呑んで、見つめていた。
隻眼の女が振りかざす、
漆黒の鎌が俺の背中を刺そうとする。
「わりぃな、それは効かない!!」
その瞬間、ざわめきが起こった。
「──────なんだあれは!!!」
「千血の攻撃を無詠唱で守った!!」
「どうゆう事だ!!!」
俺は愚者盾で攻撃を防いだ。
隻眼の女が目を見開いて、俺の目を見ている。
まるで戦いを楽しんでいる笑みを見せながら、
俺の瞳を見ている。
なんて、目をしているんだ。
戦闘狂め。
瞬時に隻眼の女は漆黒の鎌で何度も振りかざす、
その連撃を全て、俺の自動障壁が守る。
バカでかい鎌なのに──
まるで木の棒を扱うように素早く連続で振るってくる。
俺は自動障壁で身を守りながら、
左手を握り、魔法を唱えた。
「わからせるんじゃなかったのか?
〝雷拳〟」
隻眼の女を狙った左拳。
この距離なら行ける──!!
隻眼の女は近距離なのに、
咄嗟に体を捻り攻撃を躱した。
なんて……動体視力なんだ。
隻眼の女は回転しながら避け、
そのまま──上級土魔法を唱えた。
「ほおぅ、ただの雑魚ないんだね〜
〝岩荊棘〟」
一切の無駄のない洗練された動き。
漆黒の鎌から放たれる魔法陣から、
無数の茨の岩が出現する。
岩がムチのようにしなりながら、
俺に目掛けて襲いかかる。
──俺は中級光魔法を唱えた。
「────〝魔力盾〟!!」
「ほおぅ──止めるか〜」
その攻防をみて、周りは鼓動を激しくしていた。
一切音を立てないように息を潜めながら──
まるで子供がヒーローショーを見るような瞳で見ている。
「やっぱり、そう来たか」
俺は少年の方にも障壁を張っていた。
隻眼の女は俺と同時に、
少年の方にも魔法を放っていたのだ。
だが、少年は目の前から、
無数の魔法が向かってくるというのに。
眉一つ変えずに見ていた。
あの子なんて子だ……
一部始終を見ていたギャラリー。
一人の男が声を漏らした。
緊張の糸が切れたように、続々と声を漏らしていく。
「すげえ……なんて障壁の数だ」
「────対等に戦ってやがる」
「あぁ七色の十字の千血とだぞ!!」
「ありえねぇ……ありえない」
烏合の衆がザワザワと声を漏らしている。
俺は七色の十字。
その名前に聞き覚えがある。
シグマさんとリリーが言っていたクランだ。
この女がトップクランの一員なのか?
実力は本物だな。
だが、こんな奴が。
考えに耽っていると──
上空から、突風と共に人がゆっくりと降りてきた。
────スタッ。
「────なっ!!!」
「へぇ〜雷か久しぶりに見たな」
上空から現れた、金髪赤眼の男。
笑みを見せながら言葉を放った後、
隻眼の女に声を掛ける。
「アネさんとりあえず帰ろう。師匠が呼んでいる」
隻眼の女はその言葉を聞き、
すぐにその場を後にした。
「待っ──待て!!!!!」
少年はその場から去ろうとする女に向かって、
声を上げる。
「じゃあ、俺も帰るとするか〜」
金髪の男も屋根に颯爽と登り、去ろうとした。
俺は少し気になって男を追いかけた。
金髪の男が放った言葉。
雷か久しぶりに見ただと。
この世界にない雷を知っている。
そんな言葉、
目にした事のある人間が出る、言葉だ。
「ふ〜ん、やっぱり追いかけてくると思った」
屋根の上で金髪の男は待っていた。
コイツは俺が追いかけてくるのを分かっていたんだ。
だから、わざと俺にあの言葉を放ったのか。
屋上の上には冷たい海風が通る。
俺は睥睨し金髪の男を見つめた。
「お前──何者だ?」
「俺は君と同じ、異邦人さ〜」
不敵な笑みを見せながら、金髪の男は告げる。
俺はその言葉でハッとした。
「お前……まさか転生者か??」
「アハハハァ!
まさかこんなに早く、七人の一人に会えるとは思わなかったな〜
そして、光か〜なるほど、面白い」
金髪の男は上を見ながら、
右手で顔を隠し笑っている。
「どうゆう事だ!!」
金髪の男は俺の言葉で驚愕していた。
俺の目を見つめ、
まるで物珍しげに見るような目で見ている。
「まじかよ──何も知らされてないのか?
ハッハッハッなんだよ、話す価値もねぇな!!」
笑いながら金髪の男は踵を返す。
そして、そのままこの場から去ろうとする。
「待っ────待て!!!!」
俺はすかさず、追いかけた。
「名前だけ教えてやるカインだ。じゃあな〜」
カインが言葉を発した瞬間。
竜巻ような突風が視界を覆う。
俺はこの出会いで、
この世界が何なのか、
その断片を聞かされたような気がした。
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