第58話「黒猫」
高原からリスブン街に向かっていた。
美しい緑が高原から降りても、まだ続いている。
川筋に沿って、美しい清流に身を任せながら、
追いかけてゆく。
こんなに綺麗な清流が流れ、
緑が広がる先にはきっと美しい街なんだろうと感じていた。
いや〜風が気持ちいい。
自然豊かだな。
唐突に俺のネックレスから魔法陣が現れ、
目の前には黒色が綺麗な瀟洒な猫がいた。
「んにゃっ〜」
「かっかっかわいい!!!!」
俺はネックレスの魔法陣から出てきたことを忘れて、
黒猫に見蕩れてしまっていた。
その黒猫は子猫のサイズと変わらないくらいで、
細長いしっぽがアクセントになっており綺麗だ。
「お兄様! 猫ちゃんですね!」
「あぁ!!」
「にゃぁにゃあちゃん、なのだよ!」
「あぁ!! そうだなセナ!!」
黒猫は俺の方を見つめて、ちょこんと座っている。
その姿は流麗で愛らしいく、
撫でて撫でて、でも言っているようだ。
目の前にはラスボスがおる。
これは強敵だ。
ちらちらと見ている仲間になりたいのかな。
「かわいなぁ。癒される。かわいなぁ〜触っていいかな?」
「お兄様。こちらを見ているのでいいのでは?」
俺は恐る恐る、左手で黒猫に触れる。
触れると感じる、圧倒的なサラサラの毛並み。
撫でていると、吸い寄せられるような感覚になる。
「にゃあにゃあ〜」
黒猫は自分から頭を俺の手にスリスリさせて、
俺の手を舌でぺろぺろしている。
無敵のコンボ技。
ハメ技である。
「かわいいぁ。最強!」
「かわいいですね! お兄様」
「にゃぁにゃ可愛いのだよ!」
俺の左手をぺろぺろしている黒猫。
左手から登ってきて、俺の肩までシュッと来た。
そして、次は頬にスリスリしている。
何だこの連続攻撃は、
どんな人間でも、ノックアウトされてしまうだろう。
「にゃ〜ぁにゃぁ」
優しい毛並みが俺の頬にずっ──と。
俺の頬をスリスリスリスリしている。
甘えるのがとても上手だよ。
この猫ちゃんと、俺は思いながら悶えていた。
「かわいいぁ震える!!! 可愛すぎる〜」
「お兄様、猫ってこんなに懐くのですか?」
「かわいいのだよ!!」
「にゃぁ〜」
俺は決心した。
連れて行こうと。
誰がなんと言っても俺は連れていく。
新しい仲間である。
「とりあえず、この子を連れて行こう!」
「お兄様! はい!」
「行こう!」
歩む度に──俺の左頬に優しい感触が当たっている。
あ〜幸せだ。
あ〜最高だ。
俺達は黒猫がどうやって現れたか忘れていた。
川の流れが段々と広がって、
遠くの先には大きな城壁が見え。
街の周りには水堀に囲われている。
「うわぁ!! すごいな〜なんてでかさだ!」
「リスブン街は五万人弱が住む街ですからね!」
「橋を渡って行こう!」
俺達は街へと続く綺麗で広い石橋を歩く。
すれ違う人や向かう人。
様々な格好をしている人が通っていた。
橋を歩き
目の前に構える城壁の高さは十メートルにも及ぶ。
全長は約七キロメートル城壁は重々しく。
圧倒的は存在感だ。
まるで要塞みたいな街だな。
その街へと続く石橋も圧巻で、
全長約百四十三メートル。
アーチ部分は約八十二メートルもある。
──多くの人が通る為に作られた、頑丈な橋である。
俺達は橋の上を歩いている。
レイが俺の肩に乗っている、黒猫を見て告げる。
「お兄様! 黒猫に名前は付けられないのですか?」
「あ〜確かにそうだな。なんて名前がいいのかな?」
俺は黒猫をなでなでしながら考える。
なんて名前がいいんだろな、
──柔らかい感触だな。
「にゃぁにゃ〜」
「かわいなぁ〜癒される」
俺は再度、撫で撫でしている。
それを見て、ニコニコしてセナは告げる。
「それなら女神様を由来して名付けるのだよ!」
「セナそれはいいですね!」
「──どういう事だ??」
セナはルンルンしながら言う。
「それは闇の女神シエル様から、御名前を少しいただくのだよ」
「お兄様、敬愛を込めて。
その神様に近い色合いのものには、その名前をお借りして付けていたりします」
「なるほど!」
セナが手を顎に当てながら「ん〜」と考えながら告げた。
「エルちゃんとかどうかな?」
セナは黒猫を見ながら名前を言う。
黒猫はそっぽを向いている。
全く見ていない。
「エル〜なんか色的にはクロっぽいよな〜」
「にゃあ〜!」
俺のクロって言葉に反応したように、
こっちを見て黒猫がスリスリしている。
「にゃぁにゃ〜」
「かわいなぁ〜」
「お兄様! クロがいいのではないでしょうか?
気に入ってる感じがします」
「負けたのだよ〜タクロウが付けた名前の方が喜んでいるよ」
「えっ!!! クロ? それはその」
クロ……か。
まあいいか。
俺は黒猫を見つめながら言う。
「お前の名前はこれからクロな! よろしく」
「にゃぁにゃ〜」
頬をスリスリしながら鳴いてる。
そして、長い石橋を渡りきり、
俺達はリスブン街へと着いたのであった。
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