第57話「モドキ」
あれはワイバーンじゃないのか。
だとしても、デカすぎだろ。
「モドキって、なんだ?」
俺の問にレイが言う。
「お兄様、モドキはエレメントになれなかった魔物です。
あれは岩が一つ一つワイバーンを真似て、出来たのです」
「あれが、そうなのか」
六メートル級の岩のワイバーンモドキが飛んでいる。
その姿は様々な鉱石を取り込んだ様な、
色合いを見せていた。
セナが追加で言う。
「モドキは出現した際、近くの魔物を真似するんだ。
だから数日前か、そこらにワイバーンが通ったって言うことだよ!」
「そっ、そうなのか!!」
この地域にはワイバーンなんて、
強い魔物は存在しないはず。
俺の脳裏に過ぎるのはやはり、
ビニ町のワイバーン。
じゃあ、コイツもあのワイバーン並に強いのか?
だどすると、これはなかなかキツイな。
セナとレイは俺をを見つめてニコニコしている。
一人で倒せって、事だな。
やるだけ、やるかぁ。
俺は上空に左手を上げ魔法を唱えた。
「────〝雷閃光〟!!」
稲妻が岩のワイバーンモドキに向かっていく。
岩のワイバーンモドキは旋回しながら魔法を避けた。
「──くそっ!! 少し遠いなぁ!!」
岩のワイバーンモドキが咆哮をあげた。
「──────グワーッグワアアガ!!!」
咆哮と共に上空から魔法陣が出る。
嫌な予感がするが、
全くといっていいほど、恐怖がない。
ワクワクしかない。
拳サイズの岩が上空から無数に降り注ぐ。
俺は降り注ぐ岩に向けて魔法を唱えた。
「────〝魔力盾〟!!」
障壁が岩のワイバーンモドキの攻撃を防ぐ。
俺は複数の障壁を展開させていた。
俺は魔法を唱えた。
「────〝雷道〟」
障壁を足場にして高速移動した。
瞬く間に岩のワイバーンモドキの上まで向かった。
「お兄様、すごい!!!」
「──すごい!!
魔力盾を足場にしたのだよ!!」
俺は左手を握りしめ魔法を唱えた。
「落ちろ!! 〝雷拳〟!!」
俺は左拳を振り切った。
岩のワイバーンモドキが片翼で防御するが
岩のワイバーンモドキが錐揉みしながら、
物凄い勢いで墜落した。
俺はすぐに追撃の魔法を唱えた。
「──消えろ!! 〝雷槍〟」
雷の槍が岩のワイバーンモドキが墜落した、
粉塵がたっている方へ向かう。
俺はフラグを言わない。
じっと、
俺は粉塵が消えるの見守る。
この世界のフラグは知らないが。
粉塵が消え、岩のワイバーンモドキは消滅していた。
「はぁ〜やったか!」
「お兄様! 瞬殺ですね!!」
「さすが、僕の弟子なのだよ」
セナとレイが俺の頭をくしゃくしゃ撫でてくる。
案外、弱かった。
なんか、劣化版だな。
「あっ、ありがとうな!!」
「でも、モドキにしては強かったのだよ」
「そうなのか!?」
「はい、お兄様。
最初の雷閃光でモドキなら、避けられずに消滅するはずです」
「なるほど」
「おかしいのだよ」
セナとレイは手を顎にあてながら考えている。
セナは徐ろに、
岩のワイバーンモドキの消滅した場所に向かう。
「これは……魔鉱石の残滓なのだよ!!」
「セナ、それは一体?」
レイがセナの代わりに言う。
「セナが言いたいことは多分。
あのモドキは魔鉱石を食べて、強くなっていたって事です」
「そんな事あるのか?」
「はい! 結構ある事です」
「──そうなのか」
俺達はその場を後にした。
この地帯に岩のワイバーンモドキが出た事を考えながら。
三階層からそのまま順調に一階層に降りていく。
そして──
「出口だ!!!」
「お兄様、着きましたね!」
「着いたのだよ!!」
数時間で俺達はムーンマウンテンを制覇した。
元々弱い魔物が生息する場所だが、群れが多い、
新しい魔法のおかげで、体力を奪われず進めた。
辺りは緑がとても綺麗な広大な草原が広がっていた。
風の涼しさがムーンマウンテンでの疲れを忘れさせる。
セナがニッコリとして告げる。
「ここからは道なりだよ! 行こう!」
「お兄様! リスブン街です」
「おう! 進もう」
俺は緑が美しい高原から水の都と言われている、
リスブン街に向かうのであった。
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