第56話「自由な発想」
俺は岩石魔人の群れに複数の障壁を展開させた。
障壁にぶつかる岩石魔人。
そのぶつかる音は圧倒的な物量を言わせていた。
「なんて数だよ! これ!!!」
弱い魔物なのに────
だが、群れを対処する魔法は俺にはない。
こんな大群いるのかよ。
クソっ。
「しょうがないなぁ〜僕が殲滅するよ」
セナはニッコリと笑みを見せながら、魔法を唱えた。
「〝雷閃光〟」
──バチバチと鳴る。
複数の電閃が岩石魔人の群れを、
一瞬で殲滅をしていく。
「────なっ!!!」
セナが俺と同じ派生魔法の雷魔法を使った。
その地雷に圧巻されていた。
セナはもう、俺と同じ雷魔法を習得したのか。
しかも、俺の雷魔法よりも火力がある攻撃をするなんて。
すごい、セナ。
「えっへん!! すごいでしょ」
「セナ、流石だ!!」
「僕はお師匠だからね〜えへへへ」
俺は驚きと尊敬からセナの頭を撫で撫でする。
レイはそれを見て、少し睨みながら言う。
「セナ! 修行のために手を出さないって約束していたのにずるい!!」
「ふふふっ、僕がタクロウを守ったのだよ〜」
「む〜」
ポコポコ、レイがセナを叩いている。
微笑ましい姿だ。
だが、あの数を一瞬で殲滅する魔法。
いや、本当にビビった。
「セナは雷魔法を使えたのか?」
「うん! 練習したのだよ!
君は自由な発想が出来るのだから臆すること無く、するといいよ! ダメなら僕が助ける!」
「私もです。お兄様!!」
「ありがとう!」
俺達はそのまま先へと進んでいく。
先程まではセナが先導していたが、
今はレイが先導をしている。
そこにはまた三体の岩石魔人がいた。
レイは少し目をキラキラさせた。
俺は──魔法を唱えた。
「〝雷閃光〟」
三体の魔物は消滅し、
それを見てレイは瞳をうるうるさせている。
しまっ────た。
つい、倒してしまった。
「お兄様、その……」
「レイ、よしよし〜」
「お兄様〜」
俺はレイの頭をなでなでした。
レイはニコニコした顔に戻った。
可愛いな、レイ。
「もう完璧に使えたね! 僕の魔法!」
「これ、すごい魔法だな!」
「あの時の戦いのイメージからだよ!」
「そうか──天使とのか!」
「うん!」
固定概念。
それは全ての人に少なからずも植え付けられている。
この世界にはずっと続いている魔法の歴史がある。
元々ある魔法を使わず、自分のイメージだけで魔法を作り上げる。
それをする人は──この世界では稀である。
考える者がいたとしても、使える可能性はほぼ零に近い。
イメージがあったとしても使えないのが殆どである。
俺はなぜたまに完成するのか、
さっぱり分からなかった。
俺達は二階層のフロアを順調に抜けていく。
俺は新しい魔法のお陰で、
体力をあまり使わずに殲滅できていた。
そして、三階層への階段に着いた。
「おお! やっと着いたな」
「お兄様、そうですね!」
「えへへ、僕の弟子はすごいのだよ〜」
「ありがとうなセナ」
三階層への岩の階段を登っていく。
一階層から二階層への階段より、かなり段数がある。
階段の左右には綺麗な鉱石が、
ビッッシリと顕になっている。
様々な色合いの鉱石がだったが、
上に進む程に一色の色に統一されていく。
不思議だ。
「綺麗な階段だな!」
「お兄様。足元をお気を付けてください〜」
「ありがとう!」
そして、三階層に着いた。
目の前に広がるのは、
透明の鉱石だけが辺り一面に広がっていた。
上を見上げると、
蒼天が広がっている。
吹き抜けだ。
まさか、山の中で空が見えるのは思わなかった。
「うわぁ!! すごい!!! なんて景色だ…………」
「お兄様、本当は夜に来ると綺麗なんですよ!」
「そうなのだよ!
お月様の光が鉱石に広がって綺麗なんだ!」
「また一緒に行こう!」
「はい!」
「うん!」
月からの光でこの鉱石が照らされると、
どんな表現をするのだろうか。
自然の美術館だな。
これは。
ずっと見惚れていると、
蒼天の空を飛んでいる、魔物が見える。
俺はそれを凝視した。
いや、まさかな。
そんなことが、あるのか。
「あれは、ビニ町にいたワイバーンか?」
レイはその問いに答える。
「あれはモドキです!」
「さっきは僕が殲滅したから、あの魔物倒すんだよ!」
「あぁ、わかった!」
空から鳴り響く雄叫びは不思議と俺を奮い立たせていた。
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