第55話「ムーンマウンテン」
────ムーンマウンテン。
ビニ町を繁栄にさせたと言っても、
過言ではない名山である。
孤山の内部には多くの鉱石が取れ、
それでビニ町は潤っている。
俺達は安全な街道からリスブン街には向かわず。
ムーンマウンテン内部を抜けて向かおうとしていた。
安全な街道を通るよりは幾分か早いが、
ムーンマウンテンには魔物が多く。
それと──俺の天敵がいる。
それを見越してのセナの修行だろう。
流石、セナだな。
「──レッツゴー! なのだよ」
「あぁ! わかった」
「お兄様! 行きましょう」
ムーンマウンテンを登山する訳ではなく、
山の内部が削られ、洞窟になっているので、そこから向かう。
崩落とかは全くせずに天井高もかなりあり、
内部は広く明るい。
俺達はムーンマウンテンの入口から内部へと入った。
「広いなぁ〜ダンジョンに近い広さだな」
「ここまでのものを人の手で掘られているっていうのは圧巻ですね!!」
確かにこんなのどうやって掘ったのだろう。
何年かかったんだ。
そのまま、道なりに進んでいく。
だが、魔物にはまだ出会っていなかった。
全く出会う気配がしない。
なんでだ?
「全然、魔物はいないなぁ?」
俺の問にセナが言う。
「一階層はいないのだよ! 二階層から出現するよ!」
「階段あるのか? 山の中なのに!!」
「はいお兄様! 一階層から三階層まで登り。
そこから下るとリスブン街に着くのです。
一本道なので、迷うことはないと思いますが、とにかく広いです」
俺達はそのままセナの先導により、進んでいく。
一階層だけでもかなりフロアは広く、
所々で鉱石が無造作に置いてある。
それくらい、ムーンマウンテンは潤沢なんだろう。
そのまま洞窟内を歩いていく。
綺麗に加工された岩の階段があった。
「これが二階への階段なのか?」
「はい! ここから二階に行けます」
「行くのだよ〜」
セナとレイはとてもニコニコとしている。
俺も内心ワクワクしていた。
一階層から二階層へと階段を登っていく。
目の前に広がる景色は──
様々な色彩の鉱石が、壁一面に埋め込まれている。
裸で見える状態で全面に壁ビッッシリとある。
宝石が散りばめられてる空間とか。
これは────
「おぉ──すごいな!」
「──綺麗ですね!」
「美しいのだよ〜」
その風景は圧巻だった。
光の加減で眩く、色合いを変えている。
そのまま、俺達は歩んで行く。
二階層に進んだので、
俺は探知範囲を唱えようとした。
それを見て──セナは告げる。
「ダメだよ! 今回はフォースはなし!
イージーになるから」
「お兄様! 修行です!」
「おぉ──わかった!」
鉱石に包まれる洞窟。
一階層よりも数多の鉱石が見えている。
すると、目の前には一メートル位の、
ただの岩に赤い目が付いた、魔物が居た──岩石魔人だ。
俺は岩石魔人に気づいた。
今回は修行という事なので、
ムーンマウンテン内の魔物は俺が処理する事になっていた。
「お兄様! 岩石魔人です!」
俺は岩石魔人に向かって魔法を唱えた。
「〝雷槍〟!!」
三体の岩石魔人は無傷であった。
やはり、岩には雷は効かないか。
この程度の雷では。
三体の岩石魔人は俺に向かって。
ゆっくりと岩なのに、跳ねながら向かってくる。
めっちゃくちゃ遅いな。
俺も岩石魔人に向かい、左手に魔法を唱え殴った。
「〝雷拳〟!!!」
勢いがある雷を纏った拳。
三体の岩石魔人を砕いて、絶命した。
それを見て、セナとレイは言う。
「本当に格闘家なのだよ!!」
「お兄様! すごいです!」
そのまま順調に前に進む。
その後も出現した。
岩石魔人を次々と殴っていく。
「〝雷拳〟」
「〝雷拳〟!!」
「〝雷拳〟!!!!」
倒してはまた進み──
倒しては──進み。
繰り返していく。
「〝雷拳〟!!!!!」
「〝雷拳〟!!!!!!」
「〝雷拳〟!!!!!!!」
俺は気づいた……
この魔法は火力はかなりあるが雑魚魔物向けじゃない。
魔力よりも、体力がかなり削られる。
思いっきり拳を何度も振り切るって、かなりしんどい。
「はぁはぁはぁはぁ」
「お兄様、大丈夫ですか?」
「大丈夫なのだよ?」
俺は両手を膝に付きながら息を切らした。
目の前から、物凄い音が聞こえる。
前から向かってくる大量の岩石魔人。
二十体、三十体どころじゃない。
なんだよこれ──
俺は微笑を浮かべながら魔法を唱えた。
「────〝魔力盾〟!!!」
岩石魔人は最下級の魔物である。
相性の悪さとそして数。
俺にはかなり分が悪かった。
それも全て──計算済みのセナだった。
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