第52話「君の目」
俺は目を覚ますとレイに膝枕をされていた。
そうか、負けたのか。
瞬殺された。
視線を転じると、レイの艶然な蒼眼が、
俺の瞳を見つめていた。
なんて、綺麗な瞳なんだ。
俺はいつも、そう感じる。
「お兄様──大丈夫ですか?」
「あぁ! 問題ない」
スっと見ると。
俺の身体にセナはハイヒールをかけている。
戦闘の痛みは全くといって感じさせないが、
ただ──
あの、衝撃は覚えていた。
俺は膝枕されながらボソッと言う。
「セナ──強すぎだろ」
レイは言葉が耳に届き、
ニッコリと微笑みながら小さく言う。
「はい──お兄様、セナは強いです。
私のお姉様より強いかも知れません」
「レイのお姉様ってクリサイドって人だよな?
ランクハートじゃなかったか?」
「はい、そうです」
俺はそう言ってても、
あの戦闘でセナの実力は本物と理解した。
それにデュランダルとエクスカリバーって。
ボクっ娘TUEEEEだよな全く。
少ししか、戦闘が出来なかったのに、
実力は痛い程わかった。
流石、師匠だ。
悔しいより、誇らしいって。
もう、完璧、弟子だな。
俺が目を覚ました姿を気づいてセナが言う。
「もう一回なのだよ?!」
「わかった!!」
俺は再戦をした。
俺とセナはまた同じように少し放れて、対面で立っている。
「じゃあ、次は僕の剣、デュランダルを使うといいのだよ」
セナは俺の方へ、デュランダルを投げた。
俺の足元にデュランダルが刺さり、
足元に刺さった、デュランダルを俺は手にした。
なんて──絶世の剣なんだ。
俺はその美しさに目を奪われていた。
俺はデュランダルを握りしめ、再戦をする。
セナはエクスカリバーを握りしめている。
俺は走り込み、デュランダルで斬り込んでいく。
剣を浴びせようとしているのに、
セナはガードをしなかった。
その瞬間、時間が止まった様に思考が巡る。
えっ────セナ。
このまま、俺は縦に斬ると血が…………
ハッとして気づいた時は──
俺はセナの目の前で剣を止めていた。
セナは莞爾を俺に見せた。
セナはエクスカリバーを握り、俺の腹を薙ぎ払った。
「────ぐっはっつ」
俺は先程の様に反り立つ崖にぶつかり、
また──視界が真っ暗になる。
「……二回目か」
俺は目を覚ますとレイに膝枕をされていた。
そして、またハイヒールで治されている。
またしても、瞬殺か。
だが、どうして……
セナは俺が目を覚ましたのを気づいて言う。
「再戦する?」
「あぁ!!」
俺とセナはまた同じように少し放れて、
対面で立った。
模擬戦の前に俺はセナに告げた。
「なんであの時! 俺の攻撃を防御しなかったんだ?!
もし、俺が振り斬っていたら、死んでいたかもしれないんだぞ!」
セナは綺麗な蒼眼で、
真っ直ぐに俺の瞳を見つめ、告げた。
「う〜ん 絶対に斬らないって信じていたから」
「なんだよ……それ!」
「その問いの答えはタクロウが一番知っているのだと思うのだよ」
俺は言葉が詰まった。
確かに、そうだ……
俺は怖いんだ…………
「タクロウは武器は無理なのだよ!
二つ理由はある。
一つは今、剣を習ったとしても、子供の頃から場数を踏んでいる人には追い付くのはとてもなのだよ。
剣の握り方も走り込み方もなのだよ」
「……なるほど」
「でも、それは努力で補える時間をかければり
ただもう一つが重要なのだよ」
「もう一つ?」
セナは口元が綻びながら優しい表情で言う。
「君の目は優しいのだよ。
いいやぁ──優しすぎるのだよ。
僕は君の目を見て、斬らないって感じたのだよ。
でも、僕はその目が大好きなのだよ」
(コピーだった僕が初めて見る目だった)
「なっ……」
俺はそのセナの微笑みに分からないが……
分からないが、すごい意味を感じてしまった。
セナは俺の目を見て、
それだけで斬るか、斬らないかを判断したって言うのか。
セナは言う。
「だから武器は無理に使うのはやめるのだよ。
タクロウの本当に思うままに、強くなればいいのだよ!」
「……」
俺はその言葉に一驚した。
セナはいつだって俺が欲しい時に、
その時に…………
俺が本当に欲しい、言葉をくれる。
この世界に来て俺は囚われていたのかもしれない。
いいやぁ…………
前世でも同じか。
当たり前だ。
この世界ならこう。
勝手に決めつけて流されて──
────だが、俺はもう自重しない。
俺が思うままに生きる。
「セナもう一戦だ!」
俺はセナにデュランダルを返す。
「ありがとうなのだよ」
「お兄様?! 何を!?」
セナはデュランダルを取る────
目線から正面に視線を転じる。
「────なっ!!」
セナとレイは衝撃を受けた。
魔導師のローブを着て、シャドーボクシングをしている。
ありえない不格好な姿を見て。
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