第51話「修行」
────ムーンマウンテン。
俺達はムーンマウンテンの麓にいた。
標高三千メートル級の山
屹然とした茶色の一つの山である。
その姿はビニ町から見る事が出来る。
山頂には霧のような薄雲がゆるく流れている。
ムーンマウンテンに向かう前にビニ町の教会へ寄った。
いつもの様に祈りを捧げたが、
シルビアは現れなかった。
初めて現れなかった。
俺は不思議に思い。
何故現れなかったのか気になったが、
とりあえず、先に進む事にした。
会いたくない日もあるんだなと思いながらも。
俺達が麓で立ち止まっている理由。
セナがここで修行をする。
それからムーンマウンテン内に入ると、
言うのでここにいる。
セナとレイは俺が一人でビニ町にいた際、
ここで修行をしていたみたいだ。
周りには崖が反り立ち、
足元には岩肌が見える。
足場の悪い場所で修行を開始していた。
「じゃあ、僕と対人戦の練習をしよう! 準備して」
「わかった!」
「でも、タクロウも強くなったね!
でも、師匠の強さを教えてあげるのだよ!!」
「勝負だ! セナ!!」
「お兄様! 頑張って!!」
俺はセナに言われるがまま、少し間をあけ対面で立った。
レイはその間で立ち。
見届け人をしている。
レイは少し心配そうに俺を見つめている。
俺はアイテムボックスから千万のローブを纏い。
短剣を左手に持ち構える。
よし行くぞ──
気合いを入れている俺。
それを見て、セナは悪い顔をしながら言う。
「ふ〜ん その短剣で刺されたら痛いだろうなぁ〜
また、お腹刺されて血がドバドバ出るのかな〜?」
「セナ、何言ってるんだ!」
俺はセナの言葉で天使との戦闘をフラッシュバックした。
若干──短剣を持つ手が震えた。
セナは俺の事を完璧に見切っていた。
この修行の意味を理解した。
俺を抉る言葉を言うなセナ。
流石セナだな。
レイは心配そうな顔で俺に告げる。
「お兄様!! セナとの特訓は地獄です。
お兄様──最初から全力で」
「あぁ!!」
「じゃあ、僕も刺されるの嫌だから、武器を準備しなきゃだね」
ふふふっと笑いながら、
セナはアイテムボックスから剣を出し構えた。
剣を見た、俺はその絶美に驚嘆を受けた。
「──双剣」
セナの左手で握りしめている、
剣は柄頭から刀身まで真っ白。
右手で握りしめている、
剣は柄頭から刀身まで真っ黒だ。
俺はセナの立ち姿に見惚れてしまった。
まるで絵本の中で出てくるような、
伝説の勇者の様な姿であった。
セナはの剣同士を合わせながら音立て、
俺を威嚇している。
その、金属音が俺を緊張させる。
俺は息を呑みながら、セナに告げた。
「セナ、その剣はなんだ──」
「エクスカリバーとデュランダルだよ!」
「なっ──」
「お兄様、知っていますの??」
「あぁ」
俺はまた、驚嘆した。
知ってるも何も、有名すぎる剣だ。
だが、なんて、美しい剣なんだ。
だが、この状況はレベル五くらいの村人の俺。
レベル八十くらいの勇者のセナ。
模擬戦とかありえないだろ。
セナはニヤリとしながら戦闘態勢に入った。
「じゃあ、行くよ!」
「あぁ!!」
今まで穏やかな目付きしか見た事がなかったが、
俺は初めて対面するセナの鋭い目付きを。
セナは瞬時に間合いに近付こうとする。
そのスピードはまるで獲物を狩る、
チーターの様に跳躍している。
剣の攻撃範囲に入ると。
セナは右手のデュランダルを前に突き出し攻撃する。
「────ッ!!! 〝魔力盾〟」
「ふ〜ん」
「──なっ!!」
俺は障壁を出し。
セナのデュランダルの突きが障壁で止まる。
だが、セナは余裕の表情を見せる。
俺はヒヤリとしながらも安心した。
だが、束の間にセナはニヤリとまたしながら、
左手のエクスカリバーを障壁に向け、
剣を縦に思いっきり斬り込んだ。
「ぐっ──なんて衝撃だっ」
「これも耐えるんだ〜」
セナは障壁の強度を確認しながら、
攻撃を放っている。
障壁は消えずに耐えているが、
今の二激で障壁を維持する為の魔力をごっそり、
取られているのを感じた。
なんて力なんだ………
魔強でこんなにも強い剣を振れるのか、
障壁越しでも分かる。
衝撃に俺は少したじろいでいた。
これはやばい。
「足元がお留守だよ〜
〝突出氷柱〟!!」
双剣で攻撃しながらもセナは魔法を唱えた。
セナの詠唱から俺の足元に魔法陣が出る。
俺は咄嗟に後ろに下がり、魔法陣から出ようとするが、
俺の意識が変わるのを見越して、
セナがデュランダルで障壁を斬り裂く。
「なっ…………」
「さっきより、耐久性が脆いよ〜」
障壁はデュランダルに斬り裂かれ、消えていく。
俺は初めて、障壁を破られた。
━━━━━━━━━━━━━━━刹那。
セナは左手で握りしめている、
エクスカリバーで俺の腹を薙ぎ払った。
「ぐっ……がっは……」
俺は吹き飛ばされ、
壁に思いっ切りぶつかった。
全身に衝撃が伝わって、
目の前の視覚が真っ暗になっていく。
そして、暗くなる視界からセナの声が聞こえた。
「僕は君と出会ってからだいぶ弱くなったんだ……
大切な者ができてから」
俺はこの修行で最強への一歩を手に入れると、
まだ思っていなかった。
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