第48話「意思」
俺は先程の感情の波が去って。
クリスと穏やかな、雰囲気で談笑をしていた。
それは中身が三十五歳と知っていて。
ぐちゃぐちゃに泣いた姿をクリスに見せて、
見苦しい所を見せてしまったと俺は少し恥じらった。
「これで、僕は本当の意味での良き理解者だね」
「まあ、そうですね」
「僕が君が転生者だって知っていたことを話した理由。
一つ目は、気を使わずに質問ができる人が近くに必要かなって思ったからさ」
「──なるほど」
クリスの言う通り。
確かにこの世界の当たり前の事、そうじゃない事の、
区別がまだあまりできていない。
これはなかなか、異世界転生してからの壁であった。
「思う所はあるみたいだね。
本当はレイとセナちゃんが良き理解者になるかなって思ったけど。
色々あったみたいだし、そうも言ってられなかったからね」
「……まあ、確かに」
「あと二つ目はこれは僕の推測なんだけれども、君の前世は家族って言うのは血を大事にしたりするのかな?
少しそう感じたからね。
レイを向かい入れる際とか特に。
この世界は貴族や王族は血をかなり重要視する。
それ以外はそんなに気にしていないのさ、それは君が居た世界よりこの世界は命が消えやすいって事だと思うよ。
わかるねえ? この意味は君なら」
「あぁ……なるほど」
命が消えやすい。
その通りだな。
クリスはメガネをクイってしながら言う。
この人、頭良すぎだな。
俺はそう思いながら、
じっとクリスの話を聞き入っていた。
「あと、僕の二つ名は偽名だからね。はっはっはっ」
「えっぇぇぇぇ────────」
クリスの突然の告白に俺は目をぱちくりさせたまま、
空いた口が──閉まらなかった。
いやいや──
じゃあ……
今までの貴族かもとかソワソワしていた、
自分はなんだったの────ありえないこの人。
「父さん。それって──ダメなんじゃないかな?」
それはダメって俺でもわかる。
名義詐称とか異世界で。
父親がそんな事しているとは思わなかった。
俺は呆気に取られていた。
「うん! ダメだと思う。
バレたらまずいかな〜
だからギルドとアポートのない、ラサマ村に居るってのもあるかな〜」
クリスはアハハとツボったように笑っている。
まるでまいったな〜とでも、
自分でツッコミを入れながら、
笑っている。
この人、ズレてるたまに。
「それはそうだよ!」
「でも! 大丈夫だよ。
僕は本当に貴族だから。
でも孤児なのになぜ? とか色々あると思うけどそれはまた教えるよ」
クリスはめっちゃくちゃニヒルな顔をする。
俺は呆れた顔をした。
だが、結局は俺は貴族なのか……?
正直もう、どうでも良くなっていた。
「──怖くて聞けないよ」
「ふふふ……そうかね。
あと、ここのラサマ村に居る理由があって。
幻想の森を調べているのさ」
「幻想の森?」
俺は周りを見渡した。
幻想の森は穏やかな綺麗な光が木、
一本一本を包んでいる。
それを見ていると、
とても心が暖まるような感じがする。
初めて魔物に追われた際。
ここに来て、とても俺は落ち着いた。
「まあこの世界ではこういう現象は差程、珍しくはないんだ。
けど、重要なのはここにある。
この祠にはシルビア様を祀られている事が気になってね」
「こんな小さい祠が……?」
目の前には圧倒的までに成長した、
大樹の下には古びた小さな祠がポッツン建っている。
「あぁ……そうなんだよ。
だいぶ昔は村にあった図書館に祀られていたみたいだ。
何か光る森との関連性があるのかをそれを調べているんだ」
「なるほどあの教会みたいな図書館に……
でも、なんでこんな小さい祠になってしまったんだ?」
クリスは少し祠を見ながら、
悲しい顔をしていた。
「それはね──忘れ去られたからだよ」
「忘れ去られた……?」
俺はシルビアが言った言葉。
光のブックマンが言った言葉が過った。
クリスのその顔付きを見て、確信に変わった。
忘れられたモノは、死んでいるのに近い。
そうか。
「でも、どうしてこんな事に?」
「まあ、この世界にはあるのさ。
一つの原因はアースで行われている学園での年二回のフェスティバルさ」
「どういうことだ?」
学園のフェスティバルで?
こんな事に。
だが、どうして。
クリスとても険しい表情で告げる。
「それはこの世界は義務教育期間っていうのがあるのは知っているかい?」
「あぁ、知っている」
この世界はアースと言う島国がある。
十六歳になるとアースで、
五年間の義務教育期間を過ごさなければならない。
アースの学園は七つあり。
年二回、七学園は競い合い力を示す。
「君は光のリュミル学園に入りたいって言っていたね!」
「──あぁ。光属性が得意とする人が多く入る所だから」
「だと君はセルシア様を崇める学園に入る事になる」
「……」
──俺は今のクリスの言葉で理解してしまった──
「じゃあ──まさか、オプルニクスがシルビアを祀っているって言うか?」
「あぁ──そうだ」
オプルニクス、全ての属性を学べる学園。
だが、全ての魔法を強くできる人は、まずいない。
皆、どれかの得意の魔法を専攻する。
オプルニクスはフェスティバルで、
何百年で数回しか、勝ったことのない学園である。
「人は印象って言うのはとても大事なんだ。
その祭りが終わったあと、国から──その熱が周りに人──街へと伝えていく。
噂として隅々までに──熱が伝わる。
神様は忘れ去られたら存在しないのと近いのだよ」
「……そういうことか」
俺はブックマンの姿を思い出していた。
ブックマン達のやり方は酷いが、人のイメージに残る。
印象に──それで、忘れない。
一つの策としてはそうかもしれない。
「もう一つの原因は昔の文献が残っていないのさ。
有名な神様しかもう、人々はあまり知らない」
「そうなのか……?」
光のブックマンNO.IXは、
シルビアの名前を知らなかった。
そうすると、
どれくらいの人がシルビアの事を知っているんだ?
セナとレイもシルビアの事を知らなかった。
セルシアは知っているのに。
俺はこの世界に来て、全ての出来事を、
振り返り──決意を告げた。
「じゃあ! 俺はオプルニクスに入る。
そして、フェスティバルで優勝する。
シルビアの名前を頭の奥底までみんなに刻んでやるよ」
その言葉に見た事ない剣幕でクリスは怒鳴った。
「何言ってるんだ!!!
僕の息子の人生を棒に振る訳にはいかない!!
君がオプルニクスに入る事は未来を閉ざすに近い事だって……わかるだろ!!」
俺はクリスの聞いた事のない、怒鳴り声。
その行く末がとても険しい茨の道と言うのは──
クリスの言葉で理解をした。
俺はクリスの瞳をじっと見つめた。
「父さんも、オプルニクス出身なんでしょ?」
俺の突然の言葉にクリスは静まり返った。
「──母さんから聞いたのか?」
「いや誰からも聞いていない。
俺の父さんならそうしたかなって…思っただけ」
「………」
「父さんの息子だ。俺もその道を行く。後悔はしない」
クリスは目を瞑りながら、
何かそっと受け入れるように俺に言う。
「タクロウ……その言葉は卑怯だよ」
「お相子だよ! 父さん」
「あぁ──そうだな」
(君もその選択をするのか……)
そして少しの間、
無音の時間が続いた。
もうこれ以上、
言わなくても俺達は理解し合っていたから。
「とりあえずもうだいぶ時間が経つし帰るか」
「うん──母さんが心配するからね」
この俺の決断で世界がとても大きく動く。
忘れ去られた女神を思い出させる者。
俺はまだ気づかなかった。
女神に復讐を挑む者がいることを────
この度は、読んで下さり有難うございます。
皆様の評価とブクマが励みになっております。
今後とも、引き続きご愛読いただければ幸いです。




