第47話「無償の愛」
俺達は幻想の森で話し合っていた。
クリスの言葉に、
俺は時間が止まったように声を呑んでいた。
言葉が詰まりながら、
理解しようとしながら、俺はクリスに告げる。
「とっ──父さんどういう事?」
「そのままの意味だよ。
君は他の世界から来た、転生者なんだろう?」
「えっ……」
父さんは、じゃあ知っていたのか。
本当に。
本当に。
転生者と知っていたのか。
だが、どうして?
俺はその言葉に驚愕していた。
「勿論、母さんも知っている。
君がここで倒れていてたからね。
そして、家に運んでから数日間。
私の家で眠っていたからね」
なるほど……
だから、俺はこの世界の記憶がないのか。
あの時、目を覚ました風景が、
この世界の初めて見た映像なのか。
何も知らないのは当たり前か。
だが、何故。
「どうして──転生者って知っているんだ?」
「──それはシルビア様から神託があったのさ。
家に運んでから、数日経った後にね」
シルビアの事も知っているのか。
俺はわからないことだらけで、
頭の中がぐちゃぐちゃになる。
ただ、クリスが言う言葉は事実だと感じた。
真実だから、どうして俺を息子だと言うんだ……
「じゃあ、父さん達の本当の子供じゃないってこと……だよね?」
「本当の子供ってなんだろう?
君は僕の大切な息子じゃないかい」
「いや……そう……じゃなくて……」
俺はクリスと話して幾度に、
クリスとスズハと一緒に居た、時間を頭に浮かび上がっていた。
じゃあ……
じゃあ…………
母さんは俺が目覚めた時ワザと前世にある。
食べ物を出したって言うのか?
あの時も……
あの時も…………
この世界の知らない料理を初めて食べて、
美味しいって言った時の喜んだ。
母さんの姿もそう意味合いだったのか…………
俺はいつの間にか足下から崩れ落ちていた。
「……なんで……なんで……おかしいだろ」
「まぁ、突然森にいた男の子を拾ってきて、息子って言ってるのはおかしいかもな」
クリスは変わらない笑顔で俺を見つめている。
なんだよ……それ。
なんだよ、なんだよ、それ。
俺は何で、気を遣っていた?
この世界から来て、ずっと、
他人だと感じたからか?
いや、母親、父親だと毎回思っていても、
血が繋がっていない。
きっとそうだ。
俺には記憶が無いから、
そう、思ってしまうんだ。
思い出がなかったから。
怖かった。
でも、クリスとスズハは、
そんな事、はどうでもよかったのか。
血の繋がり、記憶なんて。
レイの時もそうだったな。
そうだよな……
この人達は俺を愛しているんだ。
何で、じゃない。
ただただ、俺を大切な息子と思ってくれているんだ。
言葉が何度も頭に浮かびながら
今までの優しさを思い浮かべる度に確信を感じていた。
────愛されているという事に────
「そんなこと……」
「まあ……簡単な事だ……ただ君を愛しているだけだよ」
「そんな事……!」
「レイも同じさ、私の大切の娘だ」
レイを探しに行く際の事。
クリスが本気で俺達のことを考えてくれてた。
表情と声を──
俺はこうべを巡らして幾度に……
自分の顔がグチャグチャになってゆく。
「そんなことが……そんな……」
クリスはそっと俺を抱きしめた。
俺は号哭していた。
俺はこの世界に来て、変に気を使っていた。
外側と中身の違いを上手く誤魔化しながら、
わかっていても、距離をとっていた。
その距離をクリスとスズハはモノともせずに、
そっと優しく近づいていたのである。
---
「君は三十五歳なのに本当に子供なんだね」
「えっ……」
俺はまたクリスの言葉に驚愕した。
ええっえええお!
どういう事だ。
「僕よりも精神年齢は六つも年上なのに。
どちらでもいい事さ、そんな事」
「それも、知っているのか……」
「うん──まぁね。
最初は聞いた時はとても疑っていたけどね。
でも、直ぐに確信したよ」
「なんで、だ?」
「それはレイとセナちゃんの関係を見ていたりするとね。
あぁ確かになぁって思ったよ」
「えっ……?」
「だって、あんなに綺麗な子達。
普通の同い年の子なら確実に好きになるだろ?
だけど精神年齢が違うから、とても気を使ってる感じがしたからさ、あと僕達にもね」
「……なるほど」
「君が三十五歳の精神年齢がいいなら、僕は友達にもなる。
まぁどっちも父親は変わらないけどね」
「なんだよ──それ」
クリスはニッコリ優しい顔で俺を見つめた。
あぁ、アホらしい。
馬鹿だな俺。
もう、甘えよう。
頼ろう。
助け合おう。
俺はこの人達の家族でほんとによかった。
俺は考えるのをもう辞めた。
頭で考えるよりもこの人達の愛情が心をもう、
優しく埋めて、いっているからである。
異世界に転生して。
きっと誰しもが少しは、心残りという物があるだろう。
それを優しく埋めるような深い愛情に、
ただ今はただ──それに俺は浸っていた。
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