第46話「真実」
俺は家の前まで来ていた。
なんか、緊張するな。
いつもの玄関なのに、ドキドキする。
セナとレイはニッコリ微笑んでいる。
とりあえず、俺は意を決して玄関を開ける。
「あら! 今日の今日に来たのね!」
「おかえりなさい!! 三人とも!」
クリスとスズハは俺達の姿を見て、喜び勇んでいた。
俺はその姿を見て顔が綻んだ。
レイとセナも俺と同じ表情をしている。
俺はクリスとスズハに告げる。
「時間があったから、後──お祝いがしたくて」
その言葉を聞いたクリスは俺をギュッと抱きしめる。
「タクロウはまたお兄ちゃんになるんだな。
そして、レイはお姉ちゃんだ」
クリスの優しい心が抱きしめる、
熱によって俺に伝わってくる。
お兄ちゃんか。
来てよかったな。
ほんとに。
「はい! お父様」
「今日は僕とレイで夕飯を作るので、スズハさんはゆっくりして」
「お二人の為に腕に縒りを掛けてお作りします!」
俺達はビニ町でお祝いをするために、
食料を買い込んでいた。
その食材を持ちながら気合いを入れて、
セナとレイはキッチンへと向かった。
「あ〜とても楽しみだな」
「はい! そうですね!」
スズハとクリスはそれを見て、安らぎを感じていた。
「二人はとても電話の後から気合いが入っていたんだよ」
「そうなのか! それは楽しみだな。
──タクロウ! 母さんのお腹をさすってみなさい。
新しい命だ」
「うん、そうね!」
そう言われて、俺は服の上からスズハのお腹をさすった。
撫でる度に心がとても震え。
なんとも言えない恩愛が心に染みていく。
よかった。
「父さん、母さん、おめでとう……」
「……あぁ」
「……うん」
暖かい雰囲気の中、俺達は食卓を囲って、
セナとレイの料理を楽しんでいた。
食事が終わる頃──
ビニ町で起きた事を俺はクリス達に話をした。
クリスも内容は大まかに噂として知っていたみたいだ。
セナとレイは片付けをしていた。
「本当に岩龍のクリスタは盗まれたのか」
「はい」
クリスはそこの現場にいた当人から聞いて、
その噂が事実だったのだと、噛み締めていた。
「そこには俺とララベア家の人達が捜索に一緒にいたんだ」
「そう──なのか。お転婆お嬢様の所だね」
「知っているの? リリーの事」
「いや知らない。
ただ周りの人は古くからの友達なんだ」
「そうか」
周りの人と知り合い?
セバスチャンかな。
それを聞き、クリスはものすごく考え深そうにしていた。
「大丈夫? ──父さん」
「……あぁ」
「お二人共、暖かい紅茶です」
俺とクリスにスズハは優しく微笑みながら、
暖かい紅茶を用意してくれた。
「母さん! ありがとう」
「ありがとう」
スズハは無言でクリスの目を見つめ視線が絡み合う。
クリスはアイコンタクトを理解し、
目を閉じた。
そして、少し時間を開けて、
重たい口を開けた。
「タクロウ……幻想の森に来て欲しい。
僕は先に行っているから」
見た事の無いクリスの表情と予想外の声色。
俺は息を呑んだ。
急にどうしたんだ。
「……わかった」
クリスはその後、直ぐ、家から幻想の森へと向かった。
俺もセナとレイに出かけると伝えた。
────玄関へ向かう。
そこには笑顔で見送る、スズハの姿があった。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
俺は探知範囲を使い。
走って、クリスの元へ急いで向かった。
幻想の森って一体何があるんだ。
あのクリスの思い詰めた表情。
気になる。
「ここはセナと初めて出会った場所だな……
色々あったな本当に……」
そう、思いを巡らせながら、
俺は走った。
また、この森をあの時と同じ様に走るとは思わなかった。
目の前には他の木と比較にならない、
巨木があった。
あぁ、すごい。
何年過ごせばこんなに成長をするんだ。
巨木の下にある小さな祠の傍で立っている、
クリスを発見をした。
「……早かったね! タクロウ。成長したね」
「そんなことないよ」
クリスはニッコリと穏やかな表情で、
俺の目を見つめている。
「いいや──そんな事はない。
初めて出会った日から、君はとても成長をした」
「えっ……」
「君が転生して来た──その日にくらべたら」
俺が思いもよらなかった真実が…………
運命ってのが本当にあるのであれば、俺は感謝したい。
母親と父親に会えたことを──
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