第33話「譲れないモノ」
「お前ら!! ガキどもを絶対に守るぞ!!!!!」
「魔力切れがなんですか!! 僕には弓があります!!」
「私も!!!」
「お兄様にあんな顔を!!!! 万死に値します!!」
四人は奮起して戦っていた。
たが、状況は芳しくなかった。
下級天使アンゲロイは火力はないが増殖する。
────天使達がかなり厄介だった。
一方。
「綺麗に治ってる。さすがは僕の弟子だね……!
僕も参戦するかな……」
「怪我したばかりだろ……。少しは休めよ!!」
何で……そんな笑顔をセナは俺に見せてくれる。
俺のせいで死にそうになったのに。
「ちょっと油断しただけだよ。次は大丈夫だよ!」
「違うだろ。俺を……俺を……。
守ったからセナは怪我をして……」
「治ったよ!」
「そうじゃ……なくて……」
「タクロウはまた、僕にその顔をしてくれるんだね……」
「俺は無力だ……」
俺は何をしていたんだ。
武器も使えない。
せっかく会得した攻撃魔法も、
震えて出せなかった。
……本当に俺は何をしていた。
「ふふふっ無力じゃないよ!!
君は僕のヒーローだ。レイもそう思ってるよ……」
セナは俺を励まそうと信愛を込めながら。
会心の笑顔を俺に見せた。
セナ……何で、俺の事を……。
「そんなことない……」
俺は過信していたんだ。
まるでアニメの主人公になったような、
新しい力を手に入れ。
ここに向かったザマがこれだ。
俺は……。
俺は…………。
俺は………………。
セナは左手を俺の頬に当てながら、
もう一度、華麗な笑顔を俺に見せる。
「ふ〜ん。じゃあ僕はお腹刺されたから、
ちょっと休もうかな〜
この状況〜僕の弟子がなんとかしてくれるんでしょ?!」
セナの言葉に俺は驚愕した。
──えっ!!?
何言っているだセナ。
俺なんかじゃ無理だ。
ただの臆病な雑魚にとても無理だ。
セナならこの状況、何とかできる。
どうして、そんな瞳で俺を見つめるんだ……。
「いや……でも俺にできるのか……?」
「僕の弟子だから大丈夫! 自信を持って!
君なら世界一の魔法使いになれるよ! ねぇ!」
「……」
信じているって、その瞳で俺は伝わった。
セナの声援がシルビアの言葉と重なった。
様々な感情が駆け巡り、俺は唇を噛みしめた。
ここでやらないと、いつやるんだ?
俺はセナの弟子だろ……。
だが、怖い……。
「本当はこれは後で渡す予定だったけど。今渡すね!
ヒーローはカッコよく敵を圧倒するんだよ!」
セナはニッコリと微笑みながら、
アイテムボックスからローブが出す。
そのローブは左半分が黒色、右半分が白色。
フードが赤色のバラバラの色のローブだった。
「これ──どうしたんだ?!」
「君は無茶ばっかりするから、特注のローブを作っていたんだ。
どのかたにもハマらないように……」
「……」
俺はこのローブに色々な想いを込めて。
作ったんだと理解をした。
セナ……。ありがとう。
胸を突き上げてくる気持ち、闇雲に感情が溢れてくる。
セナは俺を強く抱きしめ鼓舞させた。
「僕が認めた最強の弟子!! 師匠を信じて!
さあ、蹴散らしてあいつらを!!!」
アニメみたいな主人公になれない?
いいや──なってみせる。
大切な人を守る為。
勇気を持った──アニメ主人公みたいに。
俺は千万のローブに袖を通す。
今までの恐怖が嘘のように勇気が溢れてくる。
ローブに込めた仁愛が心に染み込んでいく。
俺はニヤリと獰猛な笑みを浮かべた。
そして、顔を右手で覆いながら天を仰いだ。
響き渡るように高らかに笑う──
「──はっはっはっはっはっはっはっは!!!!」
「……」
その笑い声で皆が俺の方へと視線を転じた。
「……お兄様??」
俺は高らかに告げた。
「フハハハ!!! 我が名は邪魔女神シルビアの信徒!
タクロウだ!!!!」
レイは俺の姿を見てキョトンとしている。
だが、光のブックマンは俺の姿と言動を見て。
瞬時に悪情感を持った。
「邪神女神シルビア? なに言ってるのでア〜ル!!
そのローブはいったい……
白色のローブじゃないのかぁぁぁあああああああ!!!」
俺は魔法を唱えた。
「滅殺せよ。〝雷槍〟」
雷の槍が三人の光のブックマンを直撃して、
光のブックマンは倒れた。
光のブックマン達は速すぎる、
雷魔法に何も出来きなかった。
「えっ嘘……」
「すごぃ……」
「すげえぇ……」
「なんだアール……。その魔法」
冒険者達と光のブックマン達が静まり返る。
俺はまた高らかに笑う。
「フハハハ!! 俺のフラッシュファンタスティックに、
見惚れてしまっただろう?」
セナもとても──キョトンとしていた。
いきなり変わった言動と────
本当に光魔法の派生を俺が使った姿に。
だが、セナは急に後ろから俺を抱きしめた。
そして、後ろ見つめると綺麗な蒼眼をうるうるさせながら、
上目遣いをしていた。
「派生魔法はすごい!
すごいけど、おかしくなっちゃダメ!
お願い戻ってきて……」
──えっ!!?
めっちゃくちゃ泣きそうになってるよセナ!
さっきのお腹刺された時より、
目をうるうるさせてるじゃん。
俺は動揺した。
「いや! これ違うんだ!!
これはその厨二病って言って……。
最強で強くなれるやつなんだよ。
その、倒すからちょっと待ってて」
俺は異世界の人に厨二病をどうやって、
説明していいか分からず吃った。
セナはむ〜っとした顔で、
俺に抱きつきスリスリしている。
だが、俺はそっと──セナを諭して離れた。
「コホン……。右腕の黒炎を持って。
パーティの終焉には我が導こう」
「なに言ってるのでアール!!!
コイツ、おかしいでアーール!!!」
頭おかしいって!
お前ら光のブックマンに言われたくねぇ!!!!
「レイ! エンジェルズ達が此方に向かわないように、
インフィニティジャスティスファイヤを唱えて欲しい」
「はい! お兄様!!!」
セナの目線が後ろから痛いほど感じる。
「増やすのでアーール!!!! 私の!!!!!!
私の!!!! 全魔力を使って!!!!!!」
光のブックマンは全ての魔力を──
下級天使アンゲロイに渡していく。
下級天使アンゲロイはラッパーを鳴らす。
数百の天使達が上空を覆う。
「……なんだと」
「こんな……」
「嘘……」
三人の冒険者はその光景に張り詰めた心の糸が切れ、
深い絶望がおそう。
光のブックマンは満足に酔ったような声を上げる。
「フハハハ!!!! これがラプソディ──!!
セルシア様の!!! 愛!!!! 愛!!!
でア〜ル!!!」
「くだらん!! 我が歩みはそのような下劣では
止められぬ!! ここからが俺のスタートだ!!!!」
「くだないだと!!!! 我があいを!!!!」
ブックマンは発狂していた。
そして、俺は思い出す。
セナが最初に魔法を教えてくれた時に言った言葉。
詠唱が長い魔法ほど魔力を込めれ威力が上がる。
なら、俺のオリジナルだ。
俺は左手を前に出して魔法を詠唱した。
「〝天をわかつ力を持って大地を屠らん。
音色は幾万を恐怖させ幾万に知らす。
閃光の前に全てを滅せよ。
神裁〟!!!!!」
「なっ──なんて魔力を込めてるのでアーール!!
そんな光の魔法も知らない! 私は知らない!!!」
天から激しい雷が天使達を鏖殺していく。
一瞬で青白い閃光が光って全てを透明にする。
湖も山も空も全て透けて見えた──
この度は、読んで下さり有難うございます。
皆様の評価とブクマが励みになっております。
今後とも、引き続きご愛読いただければ幸いです。




