第32話「狂気」
「────トォウー!!!」
そう声を上げて。
セナはグリフォンから飛び降り、
俺の元へ降り立った。
蒼眼に似合う。
とても鮮麗な銀色の髪。
俺はまた瞳を奪われていた。
なんて、綺麗な姿なんだ。
「セナ、どうしてここに?」
「お兄様、それはセナに私が逐一をメールを送っておりました。
なので、ここに現れたのかと」
「なっなるほど!」
「──さみしかったかい?」
セナは艶然に見せている。
男なのに可愛い。
クソっ──可愛い。
「あぁ、さみしかったよ。
来てくれてとても嬉しかった!」
「へっええぉ! タクロウ!」
セナの顔は自分で言っておいて、
恥ずかしそうに乱心していた。
「お! 兄! 様!!! あれを……」
そう言うが、
レイは片頬をプクッ〜と膨らませながらしていた。
「そうだなぁ、戦闘中だ!」
セナが唱えた、上級水魔法で天使達は消滅した。
だか、下級天使アンゲロイは健在していた。
それは二人の光のブックマンが自分の身を守らず。
下級天使アンゲロイに障壁を張っていたからだ。
四人の光のブックマンと下級天使アンゲロイが、
その場にまだ残っていた。
下級天使アンゲロイのラッパが響き渡る。
再度複数の天使達が出現した。
「なんて奴らなの、自分の身を守らずに召喚獣を守ったなんて……」
「狂ってます……」
酷薄な態度に──
アンリとナクラは嫌悪感で青ざめながら言う。
確かにアンリとナクラの言う通りだ。
自分の身体を守らずに障壁を張るって。
どんな、執念だ。
光のブックマンは自足感に満たされている。
「フハハハ!!! セルシア様の眷族を守るのは、
当たり前でア〜ル!!
そして、新たに増えたゴミムシも消すでアール」
セナはそれを一喝する。
「僕はゴミムシじゃない!!!
光のブックマンは全員!!
語尾にアールアールうるさい!! 僕が射殺してあげる!」
セナが珍しく怒っている。
会ったことでもあるのか?
「冷静になるアール。冷静ア〜ル──そうだ!!
そうだ! そこのボウヤ!!!
五人の冒険者は屠る!!!
君だけは助けてやってもいい、
セルシア様の光の魔法を愛する。君なら!!!!」
俺はす──っと。
神経が凝結したような気味悪さが身体を走った。
なんでコイツらはさっきから、
俺の方ばかり見ている。
しかも、俺だけは助けるってどういう事だ。
コイツら。
「だから……何でこんなことをしているんだ!!!」
光のブックマンは悦楽に酔いしれている。
仮面で顔が隠れているのに、その表情が透けて見えた。
「フハハハ──新たなる!!!
使徒の問でア〜ル!!!!
真理をとおううう!!
それはセルシア様の存在を!!!
存在を!!! 知らしめるためでアーーール」
「なんだよそれ……。そんなことためにしているのか!」
セルシア?
存在?
どういう事だ。
俺の問に光のブックマンは冷笑している。
そして、一段と高らかに声を上げた。
「存在を!!! 知らしめる!!
それが光のブックマンの存在意味でア〜ル!!
忘れられたモノには価値がないのでア〜ル!!!」
その言葉に俺はシルビアの言葉を回想した。
俺は感慨を抱いた。
『全ての存在は誰かに。
認識をされている事で生きていると言う実感が湧くんだ。
認識されていないのは死んでいるのに近い事なのだよ』
コイツはシルビアと同じ事を言っている。
俺はその言葉に言葉が詰まった。
「そうか……。なるほど……」
「ほうほうほう!!!! 理解したかでアーール!!
さすがは!! さすがは!! 寵愛を受けしもの!!」
レイは光のブックマンの言葉を聞き。
光のブックマンを睨みつけ激怒した。
「お兄様はブックマンにはなりません!!!」
「まあとりあえず!! 光のパーーーティは!!!!
この開催者が!!! お開きするとしましょうか!!!」
「──────ささねええええ!!!」
ゲイザーは大剣で詰め寄り、
光のブックマンと再度交戦した。
「──つめろおおおお!!!
寵愛を受けし子にアール!!!
対人戦は慣れてない! あの坊やを!!
魔法がぶれる!!! 天使はそれ以外の虫けらを!!!」
だが、光のブックマンは仲間に大声で告げた。
俺が対人戦が苦手だったことを光のブックマンにバレていた。
「クソ!! 貴様あああああ」
「くっすまない……。魔量がもう……」
「ごめんなさい……。私も……」
ナクラとアンリは魔力切れでフラフラだった。
物凄い数の天使達と下級天使アンゲロイが、
ナクラとアンリに襲いかかる。
レイとセナは魔法を唱えて。
ナクラとアンリを守りながら、
天使達の数を減らしていく。
その隙を見て、三人の光のブックマンは剣で俺に襲いかかる。
クソっまた俺にコイツらは剣で。
それに気づいたセナとレイは向かおうとするが、
天使達が邪魔をする。
狂気めいた光のブックマンの殺気に満ちた剣が俺に迫る。
俺は獣に襲われたような、首を縮める感覚を感じた。
動揺しながらも魔法を唱えた。
「────〝魔力盾〟!!」
俺の目の前には障壁が三枚ちゃんと出ていた。
それを見た俺は安堵した。
よかった……出せた。
よかっ……た。
すると、突如として乱れた呼吸。
震え声で叫ぶ、レイの声が響き渡った。
「セナ……! セナ!!!!」
ハッとした俺はレイの方に視線を転じる。
それは息が凍るような光景だった。
下級天使アンゲロイがレイピアで、
セナの腹を突き刺していた。
俺が出した障壁は一枚だった。
残りの二枚の障壁は自分の身を守らず。
セナが出したものであった。
──なっ……。
何が起きたんだ……。
セナ、セナ、セナが!!!!
「────セナ!!!!!!!!!」
俺は叫びながら走り出した。
それを見たゲイザーは剣を地面に刺して、
上級土魔法を唱えた。
「なんだ……クソ!! 魔力量なんて気にできるか!!
〝突出岩〟!!」
レイとセナの周りを守るように、
岩が波紋の様に地面から突き出した。
その魔法で複数の天使は消滅した。
突き出す岩は四人の光のブックマンにも襲いかかっていた。
だが光のブックマン達は魔力盾を唱えながら。
後ろに下がり体制を立て直す。
「お兄様!! セナを頼みます。私も加勢してきます!!」
レイは下級天使アンゲロイに急いでレイピアで攻めた。
下級天使アンゲロイとセナが防戦していく。
セナ、血が血が……。
俺のせいだ。
俺が俺が俺が、俺が俺が弱いから……。
「セナ!!!! セナ!!!
大丈夫か??? 直ぐに直ぐに治してやるかな!!!」
俺はセナの姿を見て。
愛惜の念に耐えれなかった。
一番起きて欲しくない事が目の前で起きてしまった。
その現実に俺は震えが止まらなかった。
「……〝修正光〟」
俺の表情を見てセナは優しく微笑んでいる。
俺は全身が震えていた。
完璧に心が折れてしまった。
「……僕は大丈夫だよ??
君が来てくれるって信じていたから……」
「……」
セナは魔法で無事回復した。
魔力の尽きた三人の冒険者。
レイと冒険者達は、
複数の天使と光のブックマン達を相手にしていた。
自分の為に誰かが死ぬかもしれない。
リアルはとても恐ろしいものであった……。
この度は、読んで下さり有難うございます。
皆様の評価とブクマが励みになっております。
今後とも、引き続きご愛読いただければ幸いです。




