第31話「天使」
目底まで眩ませるような強い光が消えた。
俺は目を開けた。
湖の上には眩い光を放つ。
五メートル強の四枚の羽の天使の姿があった。
何だあれは……。
光のブックマンが変な石を出したと思ったら。
でかい天使がいる。
これも魔物なのか?
俺は突然の事に驚愕していた。
「アンゲロイかクソ!!
あのブックマンがいなければ……」
「天使だわ……」
「状況が変わってきたな……」
三人の冒険者は呆然としている。
俺は直ぐにレイに質問をする。
「レイ、あれは天使、ティスモか??」
「あれはティスモではなく、召喚石から召喚した天使です。
ティスモは召喚をできるのは通常の魔物ですが、
召喚石は神の眷族を召喚できるのです」
「なるほど、あれが……神の眷属」
急な場面の変わりに対応しながら、
ゲイザーは周りに指示を出す。
「仕方ねぇ!! 俺があいつを倒す!!
お前らは天使を叩け!!!」
「わかったわ」
「そうだな」
ゲイザーの指示で、すかさずアンリとナクラは動く。
「お兄様! 大丈夫です。
あの天使は下級天使なのでそんなに強くはありません。
しかし、あのブックマンが強力です。
ジリ貧になるとこちらが負けます。
天使を早く倒しましょう」
「わかった!!」
あんなのが下級天使なのか。
かなり怖い。
──気合いを入れろ。
あの時のアイスバタフライ程では無いだろ。
奮い立たせろ俺。
冒険者達も気合いを入れて。
立ち向かう目をしている。
光のブックマンはそれを見て軽く嘲笑う。
「フハハハ──さあさあさあ!!
我が光を見せつけるのでアーール!!」
湖の上にいる下級天使アンゲロイがラッパを吹いた。
辺り一帯にラッパの音が鳴り響く。
下級天使アンゲロイの周りには──
二枚の羽の二メートル位の天使が複数出現した。
「〝放岩〟!!
消えろおおおおお!!!」
「単純な猪でアーール!!!
〝魔力盾〟!!」
魔法を唱え、岩を纏いながら攻撃をするゲイザー。
その攻撃を光のブックマンは障壁で防御しながら、
片手剣で瞬時に反撃をしている。
その攻防を見てナクラが言う。
「あちらはなかなか決着がつきそうにないですね」
召喚された複数の天使達はレイピアを使い。
俺達に襲いかかる。
俺は直ぐに魔法を唱えた。
「させねぇ!!!〝魔力盾〟!!!」
ゲイザー達は驚愕し──
光のブックマンは目を輝かせた。
「小僧……。 なんてシールドの使い方!
射程距離、そしてあの数は何だ!!」
「素晴らしい!!! 素晴らしい!! でアーール!!
あれがセルシア様の寵愛の姿!!!!」
障壁が複数の天使の前に現れ邪魔をする。
圧倒的な障壁の数に、
天使達の攻撃が止まっている。
「レイ達! 頼んだ!!!」
すかさずレイ、ナクラ、アンリは魔法を唱えた。
「お兄様がくれたチャンスを私が無駄にするわけないです。
〝炎竜巻〟!!」
「今が正念場です。〝疾風雨〟!!」
「私が今使える最強の魔法よ
〝炎津波〟!!」
レイの魔力を込めた炎の竜巻。
ナクラから放たれた。
弓矢は複数に分かれ天使達に向かって行く。
アンリの魔法陣からは炎の津波が現れ、
天使達を巻き込んでいく。
三人の上級魔法。
出現した複数の天使と、
下級天使アンゲロイは一瞬で消滅した。
「はあはあはあ……やりました」
「はあはあ……やりましたわね……。
魔力が切れちゃいましたわ……。はあはあ」
「瞬殺したな。レイ」
「はい……。お兄様」
凄いな。上級魔法のオンパレードだな。
あんなにいた天使達が全滅した。
本当にすごい。
天使達は消えた。
だが、レイは釈然としない終わり方に少し疑問を浮かべた。
(……おかしい。
あの光のブックマンが出した天使は中級クラスの天使だと思っていたのに。
なんでしょう、この違和感……)
「あとはテメェだけだ!!!!」
声を荒らげて大剣で薙ぎ払うゲイザー。
光のブックマンは大剣を受けて後ろに吹き飛ばされるが、
高らかに笑った。
「──フハハハ!! 単純でア〜ルフハハハ。
誰が召喚石は一つと言った!!!!」
「バッバカな!! こいつどれだけの魔力量を……!!」
光のブックマンは召喚石を再度使った。
召喚されたのはまた下級天使アンゲロイだった。
戦場は振り出しに戻ったのである。
出現したアンゲロイはランプを吹いて魔法を唱えた。
「さあさあさあさあ光のパァーーーーティでアール!!」
下級天使アンゲロイは倒れている。
五人の光のブックマンを回復させた。
続いて複数の天使を出現させた。
それを見た、三人の冒険者のそれまでの自信が、
音を立てて崩れていった。
「マジかよ……」
「くっ…………」
「そんなこと…………」
俺は冷ややかな意地の悪い微笑みを浮かべて。
光のブックマン達に告げた。
わりぃがこんな所で絶望する俺じゃない。
俺は殺られたりしない。
「俺がパーティとかいうやつをお開きにしてやんよ!!」
「お兄様、私もお開き手伝います!!」
(……あのガキ達……
対人戦であんなに足をすくんでいやがったのに。
この状況で言えるのか!! 強がりじゃねえ! あれは本気の目だ)
ゲイザーは俺の方を見て驚嘆をしていた。
「なぜ!!! なぜ!!!! なぜ!!!!
セルシア様から寵愛を受ける
貴様が!!!! 邪魔をするのでアーール!」
「──誰だそれ?? しらねぇ」
光のブックマンは赫怒し。
その感情を込めながら叫んだ。
「────キッキッキサマアアアアア!!」
──突然。
上空から無数の水の針が、
天使や光のブックマン達に降り注いだ。
俺はそれを見て告げた。
「あれは〝水針雨〟!!!」
上空のグリフォンに乗っている。
見覚えのある姿。
月の光のカーテンを銀色の髪の美しさが射し込んでいた。
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