第27話「異世界の満月」
空は綺麗な満月が見えるくらい、
更けていた。
そして、俺の真上にある月は黄色の花ひとつひとつに、
仄かな冷たい明かりを灯していた。
この世界の月は二つある。
不思議だ。本当に不思議だ。
「綺麗だな。いつ見ても満月は」
「──そうですね。お兄様」
空を見上げてから少し時間が経つと、
辺り一帯の月光花が光り輝いていた。
空と同じような明かりはとても幻想的な風景だった。
だが、レイの青髪はそれ以上に綺麗だった。
「なんだこれ? 花が──光っている」
「お兄様! これは月光花と言う花です。
月光花は満月が照らされている夜に、魔素を吸収して光るんです。
これが、この場所の名所なのです」
「──なるほど」
「ここには沢山の月光花が咲いていますからね」
「ほぉう! これが……」
(お兄様とこの風景を見れて、私はとても幸せです)
本当に異世界だな。
花がキラキラ光るなんて。
これは名所になるわ。
こういう場所で男はプロポーズとか、
するのだろうか。
俺は風景に見蕩れていると──
満月が映る湖心から水を纏う。
四角の水色魔物が出現した。
「お兄様! あれは、水のエレメントです!」
「あれが! 水のエレメントか?! 結構遠い所に現れたな」
四角のキューブに水がぷよぷよ浮いている。
違和感しかない。
すると、
俺達の周りに狼が六体が囲んでいた。
「また──シルバーウルフか!」
「お兄様。外見はよく似ておりますが、
シルバーウルフではなくウインドウルフです。
しっぽの尾が濃い緑、それで個体を見分けられます」
「なるほど、見た目そっくりだな」
「あまり強くはないので大丈夫だと思います!」
六体のウインドウルフは宙に浮きはじめた。
そして、空を駆けながら、こちらに睨みをきかしている。
空飛んでる狼とかありかよ。
だが、不思議と恐怖がない。
「いやいや──すごいな、この状況なのに余裕だな」
「はい、お兄様! 余裕ですね」
俺とレイはニッコリと笑った。
六体のウインドウルフは一斉に雄叫びとともに、
鋭い爪から風の刃を放った。
「────ワオオオオオオオオオン」
「火力が弱いな──〝魔力盾〟!!」
圧倒的な防御力でウインドウルフからの攻撃を退かせた。
三体のウインドウルフは空を駆けながら俺に迫る。
──間合いを詰めてきた。
「お兄様を狙うとは──いい度胸ですね
〝炎槍〟」
レイが魔法を唱え、炎の槍が三体のウインドウルフを貫いた。
そして、そのまま焼き尽くしウインドウルフが絶命した。
凄いなレイはあっという間に、瞬殺だ。
俺が惚けている間に。
即座にレイは残りの三体のウインドウルフに目掛けて、
魔法を唱えた。
「残りは私が── 〝火球〟!!」
レイは中級火魔法を唱えた。
魔法陣から大きな火球が現れた。
スピア系の魔法よりスピードは遅いが火力がある魔法である。
大きな火球は、
宙に浮いている三体のウインドウルフに向かっていく。
だが、ウインドウルフの前に突如として水の盾が現れ、
レイの攻撃を防いだ。
「なんだ、あの水の盾は」
「お兄様、あれは水盾と言って、中級水魔法です。
火属性の魔法に特化した防御魔法です」
「なるほど」
湖心にいた、
水のエレメントはウインドウルフの近くまで、
瞬時に間合いを詰めていた。
水のエレメントが魔法を使い、
ウインドウルフを守ったのだ。
魔物同士も連携をとるのか。
「こちらに気付いて他の魔物を守るとは厄介ですね!
エレメントは近くに主とするものがあると、
かなり魔力が上がるのです。
本当は湖から遠ざけて戦闘をしたかったのに」
「なるほど水のエレメントだから、
水の近くにいると戦闘力が上がるのか」
「はいその通りです。お兄様」
水のエレメントは、
初級水魔法の火耐性を唱えた。
ウインドウルフ三体は火の魔法耐性を得た。
(水のエレメントは私にとって──かなり厄介。
火の耐性これは時間がかかるかもしれません)
「残念だな────〝雷槍〟!」
雷の槍が四体の魔物を貫き、
三体のウインドウルフは絶命した。
だが、水のエレメントは健在だった。
やっと俺の見せ場だ。
あの後、俺はイメージで雷の魔法を使えてた。
雷や電気が存在しないこの世界で、
何故、俺が使えるのか謎だが。
それと、あの時、何故ダンジョンで、
静電気が起きたのか、全くわからなかった。
だが、まぁいい
やっと俺は攻撃魔法を会得したのだ。
長かった。
だが、やっぱり武器は無理だ。
怖い……。
「あれはお兄様のバチバチの魔法!」
「どうだ! レイ、俺の魔法は」
「かっこいいです! お兄様」
はわぁあわぁあとなっているレイ。
俺は嬉しかった。
(……すっすごい!
他属性のスピア系の中でも相手に届くスピードが一番速い。
あれが、お兄様の光の派生魔法!)
そう話していると、水のエレメントは魔法を唱えた。
上級水魔法の水針雨。
湖水を球体にして宙に浮かせた。
球体から無数の針が俺とレイに目掛けて降り注ぐ。
「なんだ、この数〝魔力盾〟!!」
頭上から雨のように降り注ぐ水の針を、
俺は障壁で防ぐ。
俺達はダンジョンでの戦闘を思い出していた。
あの時の俺は、
レイと自分に障壁を張るので必死だった。
だが、今回は余裕だ。
なんたってレイがいる。
レイは俺に笑顔を見せながら、魔法を唱えた。
「あの時とは違います。今回は私が倒します!!
〝炎竜巻〟!!!」
レイが唱えた、上級火属性の魔法。
魔法から複数の火球が付いた。
炎の竜巻が水のエレメントを巻き込み倒した。
「すごい、レイ、流石だ!!!」
「お兄様! クエスト完了をしておきますね!」
流石だな、レイ。
俺達はあの時とは違う勇気と強さを兼ねそなえていた。
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