表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/107

第26話「武器」

 ────チイエ湖。


 俺達は想像していたよりも時間が掛かっていた。

 シグマが言っていたように経験が浅いのと、

 圧倒的な情報不足だからである。


 レイは幼い頃から執事たちと、

 一緒にダンジョンに潜っていた。


 だが、広い世界でクエストを受けての、

 魔物討伐は初めてだった。


 俺達は水のエレメントには、

 まだ遭遇していなかった。


 チイエ湖はのどかでアクアブルー色の大湖(たいこ)だ。


 湖の周りには綺麗な黄色い花が咲いていて。

 その周りに森が囲うようになっている。


 俺はこんなに綺麗な湖は見た事がなかった。

 海外とかのリゾート地みたいだな。

 しかし、魔物が多いな。


「なかなか広いなこの湖は。しかも、周りの森もかなり広い。

 それに森にいる魔物の多さ、大変だこれは」

「はい、ここはなかなかですね。お兄様」


「いや〜それにしても、レイの火の魔法は本当にすごいな。

 それと闇魔法も強力だし!」

「そんなことないです、お兄様」

「そんな事あるぞ、レイ!」

「お兄様〜」


 レイはとても喜んでいた。


 俺達は湖を周りを沿うように散策していた。

 だが、俺はほとんど魔法を使わずにいた。


 それはレイの魔法が強力で、

 魔物を瞬殺していたからである。

 レイ無双である。

 俺は心底、感心していた。


 前世のゲームとかだと、

 こう言うのは寄生とか言うのだろうか。

 俺の妹は強いのだ。


「なかなか、水のエレメントは現れないな。

 何か条件とかあるのか?」


「そうなのかもしれません。とりあえずお兄様。

 今日は満月も綺麗と言うことですし。一日ここで過ごしましょう」

「そうなのか! 満月かいいな〜」

「はい!」


 異世界で月見とか風流だな。

 しかも、異世界キャンプとか──楽しみだ!


「でも、何度も言うがレイはすごいな。魔法も使えて。

 しかも、レイピアで魔物を倒すから」


「お兄様はお使いになりませんの?

 魔物が急接近した際などは、とても便利ですよ」

「あぁ、確かにそうだな!」

「はい!」


 そういえばあの時。

 ダンジョンに潜る前にクリスから貰った。

 短剣のシルバーウッドがあったな。


 俺はレイの言葉で思い出し。

 アイテムボックスから初心者装備、

 シルバーウッドを取り出した。


 この武器の名前は単純で、

 タングからポイントまで鉄のシルバーだからである。


「──どうかなレイ?」

「カッコイイです! お兄様」

「初めて武器を使うから、

 ちょっと弱い魔物で試してみたいんだが、いいかな?」

「はい! もちろんです。お付き合い致します」

「ありがとうな!」


 俺達は弱い魔物を探し。

 湖の周りから森へ入り──森の中を散策した。

 そして、小さいうさぎを発見した。


「あれはホーンラビットだな!

 あそこのホーンラビットがいいかな」

「お兄様! ガンバです」


 ホーンラビットは前世のうさぎと見た目は変わらず。

 スライムの次に弱い最下級の魔物。

 一角獣の小さい兎だ。


 だが、この角がぶつかってきたら、痛いだろうな。

 これが最下級なのか笑ってしまう。


 俺とホーンラビットは睨み合っていた。


「お兄様! シルバーウッドで処理してみましょう」

「わかった。〝物理耐性(プロテス)〟よし、倒すぞ!!」 


 俺は物理耐性を付与させて、シルバーウッドを構えた。

 ホーンラビットは全力で威嚇をしている。


 ────ぴぎぃ!!!! ぴぎぃ!!!


「なんだコイツの鳴き声! スライムと同じ鳴き声だ」

「はい。ホーンラビットはスライムと間違われたりします。

 スライムと思って行くと、

 ホーンラビットでドスッとなったりするそうです」


 ドスッてなるのか……。

 これは……ドスッってなる前じゃないのか俺。


 そう思いながら、勇気を振り絞り。

 短剣をホーンラビットに向けて突いた。


「────消えろぉおお」


 ホーンラビットはぴょんと跳ね、余裕で避けた。

 俺は再度斬りかかった。

 だが空振りをした。


 最下級すら倒せないのか俺。

 しかも、ただの兎でこれだ。


「はぁはぁ、全然当たらない」


 着地と同時にホーンラビットが切り返し、

 ──突進してきた。


「くっ! やばい!!!」

「────止まりなさい〝弱遅化(スロウ)〟」


 レイが唱えた中級闇魔法。

 相手の動きを一定時間、遅くする魔法だ。


 すごい、兎がノロノロだ。

 これは楽勝だな。

 少し虚しいが……。


 すかさず俺はホーンラビットにシルバーウッドで斬りかかり、

 やっと倒した。


 だが、最下級の魔物相手にかなりてこずった。

 それと同時に俺は初めて手にした武器の重さを経験した。


「────はあはぁはぁ、やっと倒せた」


(……お兄様、手が震えている。

 あの時のダンジョンで魔法を使おうとしていた……私のように震えている)


「お兄様? 大丈夫ですか……?」

「大丈夫じゃないかも。

 まさか魔物と近距離で対面するのが……。

 こんなに怖いとは思わなかった。

 だが、これは多分経験だな! 慣れないとな!」


 生き物をこう狩りしたことが無いから。

 正直怖い。

 魔物だって生き物だ。


 武器を使えないとか情けない冒険者だな。

 全く俺は。


 レイは俺の為に少し考えている。

 そして、一拍を置いてニッコリと微笑んだ。


「お兄様! 私を信じてくれませんか?」

「もちろん!」


 レイは何か作戦があるみたいだな。

 俺達はまた森を散策しホーンラビットの前にいた。


「お兄様、ホーンラビットの体当たりを一回、身体で受けてみてください。

 今は物理耐性(プロテス)が効いていますので、

 お兄様の自身の魔法を信じてみてください!」

「わかった」


 ホーンラビットが勢いよく、

 俺に向かって突進してする。


 とりあえずレイの言った通り、

 俺は身体をグッと動きを抑え、身構えた。

 そして、ホーンラビットの角が俺の右腕にぶつかった。


「あれ? 思ったより痛くない」


 ホーンラビットの攻撃はチックっとするくらいで、

 全く痛くなかった。


 俺は意識を集中させ、

 シルバーウッドでホーンラビットを直ぐに倒した。


 少し緊張が解けたような気がした。

 これなら最下級魔物だったら倒せそうだ。


「倒せた!!」


(誰しもが心に余裕をもち。

 壁を超えれば動きが変わるはずです。

 あとは場数次第ですね。お兄様)


「さすがです!お兄様」


 だだ、手に残るこの感触はやはり苦手だ。

 武器か……。


 俺達は魔物を倒し場数を積んでいった。

 あっという間に──日が更けていく。

この度は、読んで下さり有難うございます。

皆様の評価とブクマが励みになっております。

今後とも、引き続きご愛読いただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感謝です。
読んで下さり有難うございます。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ