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第23話「漆黒を纏いし女」

「お兄様、ギルドへ行きましょう。

 良いクエストがあるかもしれません。

 後、久しぶりに魔法を使ってみるのも、良いと思われます」


「おう、そうだな!

 でもなんでギルドにわざわざ行くんだ?

 クエストならサイトから行けるような」


「はい、もちろんですお兄様。

 プラティークから冒険者サイトでクエストを受ける事ができます。

 しかし、良さげなクエストはまず、リアルギルドに出してるのが多いのです。

 そして、その後に冒険者サイトに載せます。

 それは万人が冒険者サイトを見れますので、

 まずは地元の人からと言うギルド側の配慮があるんだと思われます」

「なるほどな、じゃあ、せっかくだし行ってみようか」

「はい、お兄様!」


 だから、冒険者達はギルド内に屯っているんだな。

 だが、レイは賢いな。

 情報収集は大切だな。


 そして、俺達はギルドへと向かう。



 ---



 突如、目の前には漆黒のドレスに身を包む女性がいた。

 その女性は妖艶な笑みを浮かべながら俺を見つめていた。

 俺は瞳を奪われながら、訝しむ目で見ていた。


 何でこんな道端にあんなに綺麗なドレスを?

 不思議だな。


 俺はレイの方へと視線を転じる。


「あれ、すごいなレイ」


 だが、レイは止まっていた。

 見惚れてしまっていて気づかなかったが。

 辺りを見渡すと俺以外──全て時間が止まっていた。

 俺はこの状況に驚愕していた。


 ──えっ??

 どういう事だ。

 何が──起きたんだ?


「はじめまして」


 にっこりと妖艶な笑みを見せながら、会釈をする女性。

 その言葉は妙に耳にスッーと入ってくる。

 俺は息も言葉も詰まっていた。


 だが、なんだ、この雰囲気。

 この女性は……。

 紫の鋭い瞳。

 黒い美しい髪。

 漆黒のドレス。

 黒だな。


「お前は一体、何者だ……?」


 そう言葉を放ったが、俺は不思議と恐怖はなかった。

 この状況下なのに……。

 恐怖がないのは現実味がないからか?


 女性はまた妖艶に微笑んでいる。

 そして、俺から目線を外さない。


「どうしても会いたくなったので足を運びましたわ。

 ワタクシはクロと申します。

 この状況は折角の二人の初めてを、

 他の方に邪魔をされたくなかったので、こうさせていただきました」

「クロ!? ……そうなのか」


 クロがこの状況を作り出したと言うのか……。

 何て魔法だ。

 時間を止める魔法なんて。

 いや……これは本当に魔法なのか?


 俺の頭の中にクエッションマークが溢れ出ている中、

 クロは言葉を入れる。


「クロですか。

 呼び捨ていいですわね! あぁ……何て素晴らしい。

 あなた様は転生者であられますわね?

 まあまあ、こんなに急に!! 突然!! 

 知らない土地でお一人でお可哀そうに……。

 ワタクシはとてもとても! 心配しておりますのよ」

「……」


 俺は動揺しすぎて返事すら出来なかった。

 クロは何故、俺が転生者って知っているんだ。

 本当に一体何者なんだ……。

 そして、どうして俺の前に現れたんだ。


 完璧にクロのペースでこの場の支配権もクロだった。


「ワタクシがあなた様に特別な、お力を授けようと思いまして。

 これで不安や恐怖は無くなると思われます。

 とても素晴らしい、お力を」

「いや、別に俺はいらないけど」

「……どうしてですか?」


 俺は即答で返事をした。

 何故かその言葉は直ぐに出た。

 だが、その返答にクロはとても綺麗な紫眼で少し睨んだ。

 そして、クロから少し威圧が溢れ出していた。


「この力があればきっと!! きっと!!!

 あなた様はこの世界で大樹されますわ!」

「まあ、クロが言う通りすごい力は魅力的だな」

「ですわね! なら!! なら!!!」


 セナとレイに会わなかったら、

 即答で欲しいって言ってたな俺。

 夢にまで見た。

 異世界、俺TUEEEEだもんな。

 だが、今の俺は……。


「俺は一人ではラサマ村から出られなかった。

 弱かった。心が臆病だった。

 今は俺自身の成長を、誰かと実感する幸せを、とても感じたんだ。

 それを大切にしたい、それは幸せだってわかったんだ……。

 ごめんなクロ」


「そうですか、寂しいですが、分かりましたわ!

 あなた様のお考えは……。

 ですが、どうしても初めてを! 何かを!

 ワタクシからお渡したいのです。ん〜そうですね!

 ではでは()()()()()をあなた様にプレゼント致します」

「ネックレス??」

「はい! このですわ!」


 ふふふっと笑みを見せながら。

 クロは黒い宝石をはめ込んでいる。

 ネックレスを俺に見せつけた。


 クロは一瞬にして俺の目の前に現れた。

 そして、サッと俺の首にネックレスをかけた。


「……ちっ近い! クロ!」

「これはプレゼントですわ〜」


 絶世の美女が瞬時に現れ、俺は動揺した。

 クロはそれを楽しむ様に俺の手を握りしめた。

 そして、サラサラの長い黒髪をなびかせて、

 妖艶にニッコリと微笑んだ。


 クロは踵を返し──消えていった。


「フフフフ、これで良しとしますわ。

 では素晴らしい異世界ライフをあなた様!」


 そう言ってクロは消えた。

 まるで瞬間移動でもしたかのように……。


 その後、直ぐに──世界は動き出した。



 ---



「何だったんだ……。一体」

「お兄様どうかされましたか?」

「いや……何でもない…………」


 俺は何故かクロの事を隠してしまった。

 やはり、レイは何も知らないか。


 吸い込まれてしまうほど綺麗な姿と表情に、

 足取りが気づかないうちにゆっくりとなっていた。

この度は、読んで下さり有難うございます。

皆様の評価とブクマが励みになっております。

今後とも、引き続きご愛読いただければ幸いです。

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読んで下さり有難うございます。
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