第17話「ダンジョンボス」
八回層、九階層ともにミニコボルト。
二メートル位の岩の芋虫、
ローグキャタピラーが沢山いたが、
レイの案内とグリフォンの圧倒的な火力。
──順調に進んで行く。
そして、十階層に着いていた。
十階層は魔物は居ない。
あるのはダンジョンボスのトビラだけ。
俺達は圧倒的までにデカい、扉の前に立っていた。
扉の前なのに、冷たい冷気を感じる。
扉の周りには何も無く魔物は居ないのに、
見えない物に常に監視されているような、
圧迫感を肌で感じていた。
すごい、デカイ扉だな。
恐ろしい。
「着いた……これがボス部屋の前か」
「はい! アイスワームがいるところです。
アイスワームは氷のモンスターで、硬い甲羅で覆われています。
攻撃は氷の糸を吐くのと体当たり、尻尾の攻撃です。
防御力はかなり高いです。
ですがこちらはグリフォンがいますので、勝機はあると思います」
「分かった!」
俺達は切り込むように気合を入れ、進む。
扉は目の前まで進むと自動的に開いていく。
俺は前に進む。
────絶対にレイを無事に帰す。
「行くぞ!!」
「はい!!」
入った瞬間──
身体を舐め回すような圧迫感感じた。
俺は目の前のその光景を見た瞬間。
足が竦み。
俺の細胞が全力でこの場から逃げろと、
警鐘を鳴らしている。
真っ直ぐ先には、
見た事のない、大きさの魔物が居た。
水色の芋虫。
こちらに気付き、ゆっくりと芋虫は振り向く。
八メートルの巨体の水色の芋虫が動く度に、
振動が俺の心臓をとてつもない速さで、鼓動させる。
──なんて。
っでかい。
怖いっ。怖いっ。怖いっ。怖いっ。怖いっ。怖いっ。
怖い。怖い。怖い。
俺は────レイの方に目を向けた。
逃げるな。逃げるな。逃げるな。逃げるな。逃げるな。
逃げるな。逃げるなぁあ!!!!
負けるな!!
負けるな俺!!
勝つ。勝つ。勝つ。
勝つ。勝つんだ!!!!!!!!!!!
「──クソ虫が!!! 絶対に勝つ!!!!」
グリフォンが雄叫びを上げる。
グリフォンの特性の奮勇気が効き、
おかげで俺の恐怖が少し和らいだ。
「クワァアガ!!!!」
────氷漬けの部屋。
高さ二十五メートル位はある空間。
アイスワームの背中の甲羅には、
氷柱がびっしりとついている。
アイスワームが背中をそって──糸を吐こうとする。
俺はそのモーションを見て、
シールドを唱えようとするが、
レイが声をかける。
「大丈夫です! ─
ここは私が 〝炎槍〟!!」
アイスワームが出した氷の糸を、
レイが出した、炎の槍が全て燃やし尽くしていった。
「レイ──す──」
俺は言葉が途切れた。
俺はレイの姿を見た瞬間。
言葉を失った。
震えていた。
足も。
手も。
魔法を。
使った後から。
俺の戦慄を消してくれた、
奮勇気がかかっているのに。
どれだけ、レイは魔法を使うのが怖いんだ。
俺は、何をしている。
呼吸を整え、レイの前に立った。
俺はレイに告げる。
「レイ、俺たちがなんとかする。少し見ていてくれ!」
レイはその言葉に──
自分の手足が震えていたのを理解した。
言われるまで気付かなかった。
(私は大切な人が死ぬかもしれないのに……
魔法が怖いの…………)
俺はレイの姿を見て、唇を噛み締め。
────心を鼓舞させた。
アイスワームが体当たりのモーションに入る。
ものすごい勢いで丸まって、突進をする。
俺は魔法を唱えた。
「──止まれ!! 〝魔力盾〟!!!」
アイスワームの体当たりが障壁で止まった。
障壁を越しの凄まじい衝撃波で足が震えた。
──氷の床が割れ。
耳から戦慄させる。
なんて、バカみたいな攻撃だ。
怖くていい、認めろ。
俺は怖い、逃げたい。
だが、絶対に俺の後ろには攻撃を通すな俺。
俺は必死にシールドを行使しし続ける。
グリフォンがその中、
風の刃を出し攻撃をしている。
シールド使いながら──
アイスワームを少しずつ追い詰めていく。
だが、俺の精神はかなり削られていた。
ウォークライで無理にごまかしている恐怖。
初めて見る、馬鹿でかい魔物との戦闘。
限界まで──心がすり減っていく。
レイはその戦いを見て、心を何度も打っていた。
(このままじゃ……彼が……タクロウが死んでしまう)
目の前のタクロウの背中を見て。
感服しながら──勇気を振り絞った。
「────もう一度! 私は魔法を!!!
〝炎柱〟!!!!」
火属性の上級魔法。
レイは全ての魔力を込めた──魔法。
とても大きな、火柱がアイスワームの下から貫いた。
アイスワームは倒れ、
それと同時にグリフォンは消えていった。
「やったぁ!! やったぞ!! レイ!!! 」
俺はレイを抱きしめた。
レイの震えは最初に魔法を唱えた時よりも、
震えが少なかった。
よかった……助かったんだ。
俺達。
レイ、すごい。
俺はレイの顔を見る。
だが、レイの顔は青ざめていた。
それは目を塞ぐことさえできない、
戦慄に支配されていたから。
消え入りそうな声でレイが言う。
「扉が扉が奥の扉が開いてない……まさか、なんで!?
こんな時に!!」
「どうしたんだ?? レイ!! レイ!!!!」
地の底まで届く絶望が救いを求める、
悲しい声が辺りに響いていた。
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