第13話「逃げられない過去」
クリスは学園に戻らず。
ラサマ村の幻想の森で泊まり込みで調べごとをしていた。
そして、俺は数日間の間にセナに魔法を教えてもらい。
使える魔法の数が増えていた。
だが、派生魔法や攻撃魔法は使えていなかった。
ただ、あの日以降──
ラサマ村からは出ていなかった。
それはレイが魔法が使えない。
使うのが、嫌なのか。
俺はそれが気になって。
とりあえず数日はラサマ村で、
魔法の知識を増やすことにした。
「ふむふむ、流石だね。光魔法は僕が教えたやつは直ぐに使えるね。
このペースだと光魔法は僕を直ぐに越えるかもなのだよ」
「なんだよ、セナは全属性使えるじゃん。
属性満遍なく強いって、ずるいよ〜」
「うん! 僕はお師匠様だから。それくらい使えないとでしょ?」
「まぁ、まあな!」
セナは上級魔法を全属性使えていた。
チートTHEセナだった。
まぁ、誇らしいけどな。
弟子としては。
二人の魔法の練習を見るのが日課だった。
レイが初めて魔法について告げた。
「魔法は楽しい?」
「うん楽しい! 今は光属性しか使えないけど。
いつか攻撃魔法も覚えて。
そして、色々な場所を見てまわりたい」
「そうなんだ」
レイが魔法の事を聞いてくるなんて、
珍しいな。
レイはほんの少しだけ口元が緩んだような気がした。
「魔法を覚えてて損することはないからな。
何かあった時に、大切な人を守れるかもしれない、そう思ったんだ。
俺、最初に魔物と会った時めっちゃくちゃ怖かったんだ……。
震えて全力で逃げて、何もできなかった……。
少しでも強くなれば、勇気になるかなって思ったんだ」
「……そう」
「だけど無理にしなくて良いよ。
好きな時にやろうとすればいいのさ。
きっと必要になる時が思う時が自然と来るさ」
あの時みたいにレイが襲われていたりしたら、
俺が助けれるように、なりたい。
俯きながらレイはコクリと頷いた。
セナはその横でじ──っと俺を見ていた。
──セナめちゃくちゃ、見てるなぁ。
「たまに大人っぽい事を言うよね?
そこがまた、いいところなんだけど!」
「そうか?」
「うん! そうなのだよ〜」
そうしていると、スズハが声をかけてきた。
「三人とも〜 夜ご飯よ!」
「はーい!」
---
この世界の料理は前の世界と全く似たような料理があり。
全く見たことない料理もあった。
今回のスズハの料理は後者だった。
転生して初めて、見た事ない料理を目の前にする。
ビニ町に行った際も、沢山、見たことない料理はあった。
手をつけられなかった。
それは知らない食べ物は正直怖い、と思い避けていた。
今日のスズハの料理はすごい真っ赤なスープ。
見たことない、野菜が入っていた。
これは辛いのか?
味がわからない。
聞くことができない。
そう考えていると──
二人はフランスパンみたいなパンをちぎって。
スープにつけて食べている。
「美味しい! スズハさん」
「美味しい」
「ありがとうね!」
そして、美味しいっと──言っている。
二人の感想でどんな味なのかわからない。
とりあえず──美味しいって言っている。
母さんの料理だ。
食べてみよう。
俺は徐ろに、硬いパンをちぎって。
スープにつけ口に、入れた。
その料理を口に入れた。
パッと頭が覚醒した。
甘い。
でも甘ったるい、感じじゃない。
くどくない。
なんだこれ──
すごいまろやかだ。
前世で感じた事のない、ちょうどいい甘さ。
食感も絶妙である。
パンをスープにつけてるのにもかかわらず。
パンの外側の美味しい硬さはそのままで……。
中だけスープが染み込んでいく。
その口の中に入れた。
舌触りと絶妙な甘さがとても癖になる。
次にスープの中にある。
黄色い野菜をスプーンですくって口に入れる。
塩気ちょうどいい。
この塩気がアクセントに、なっている。
スープに入れているのに、
シャキシャキ感はそのままである。
その甘いとしょっぱいがちょうどいい。
何これ。
美味しい。
俺は美味しさのあまり声に出した。
「美味しいい!!」
俺がその言葉を言った後。
スズハは急に俺の瞳を見つめ……。
見た事のない表情を見せた。
「──母さん! 大丈夫??」
「うううん……。母さん、とても嬉しかっただけ……」
「そうなのか……? この料理、母さんとても美味しいよ!」
「ありがとう! タクロウ」
---
夕食を食べ終わろうとしていた時。
スズハはクリスの来客と玄関で話していた。
ラサマ村に住んでいる。
ご年配の男の人が来客していた。
「クリスさんいるかね?」
「今、幻想の森に行っております」
「そうかな、そうかな。
またタッチの差で出会えんかったわい。
久しぶりに顔を見て話したかったわい」
「すいません、クリスにも伝えておきます!」
「いやいや、突然きた、ワシが悪いんじゃわい。
数日前にダンジョンで、ペガサスのティスモが発見されたみたいじゃわい。
それについて、いろいろ話してみたかったのじゃわい」
「ペガサス? まあすごい!!」
俺とセナとレイはその会話は聞こえていた。
ペガサスかすごいな空飛ぶ馬だよな。
そんなのも存在するのか。
「そうじゃわい、それを発見したのはお姫様らしく。
すごく、話題になっておるんじゃわい」
「まあまあ! すごいですね」
「シフォン・S ・クリサイド様みたいじゃわい。
長居は悪いのう、またやってくとするとかのぅ」
その話を聞いてレイは青ざめていた。
えっ?
────レイ。
そのレイの表情に俺は動揺した。
「レイ? レイ? 大丈夫か? レイ!!」
「……」
レイは青ざめてまま。
俺の言葉を無言でコクリと頷くだけで何を話しても、
変わらずレイは青ざめたままだった。
その表情は出会った時のレイの姿だ。
そして、時間だけが過ぎていった。
---
セナと俺は一緒のベッドで寝ていた。
「なあセナ、シフォン・S・クリサイドって人って。
どんな人なんだ? 知っていたら教えて欲しい」
「うん! シフォン・S ・クリサイドって人は、
シフォン家の第二王女で冒険者をしていて。
ランクは上から二番目のハート。
シフォン家は火の魔法がとても有名で王族なんだ。
火の魔法を使うならシフォン家を越える家はないと。
後は、シフォン家は赤い真っ赤な髪が有名で、
赤ければ赤い程、その血が濃く、遺伝している信じられているの。
僕が知っているのはこれくらいかな?」
その家とレイは関係があるのか……?
その人の会話が出てから、レイの表情が一変した。
「そうなのか、ハートすごいな。
セナありがとう教えてくれて。
だけど、レイは大丈夫かな……?
いったい、何があったのか」
セナは俺の言葉を聞きながらニッコリと微笑んでいた。
「一緒に考えてフォローしよう。
でも、とりあえず今日は寝よう!
夜に考え事は良くないよ! ねぇ?」
「おう、ありがとう!」
そして、俺は眠りに着いた。
---
翌日。
レイはマグナイア家から消えていた。
赤い糸のような血が私の青髪を縛っていく。
嘆きの声が風船のように、
彼女の心の悲愴を膨らませてゆく。
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