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第12話「家族」

 俺達はビニ町から出て、ラサマ村に向かっていた。


 それは突然、スズハから連絡があり。

 仕事から父親が家に戻ったとの事だ。


 そして、家族団欒でご飯が食べたいと言う事で、

 俺達は向かっている。


 俺はレイを一人にしておけないので、

 事前に友達が増えたと伝えた所。

 スズハはびっくりし、喜んでいた。


 そして、俺達は家に到着した。

 だが、玄関の前で立ち往生していた。


 何故ならば、レイの手が震えていたから。

 隠そうとしていても、わかるくらいのレベルだった。


 まあ、それはそうだろう。

 急に知らない人の家に行くんだ。

 だがレイ、大丈夫だ。

 母さんは太陽みたいな人だから。


「レイ、大丈夫だよ。心配ないさ」

「そうだよ! 僕もスズハさんには、とてもお世話になったから」


 レイは俺を見つめ、無言でコクリとした。

 その表情は少し不安が、和らいだように見えた。

 そして、俺は玄関を開けた。


「いらっしゃい!!!!!!」

「……」


 思いもよらぬ、大声で俺達は戸惑った。

 その大声で出迎えてくれたのは、

 眼鏡をかけた学者みたいな格好している父親だった。


「母さん! 母さん! この二人が息子の! お友達かね?」

「よろしく!! うちの息子をよろしく!!」

「よろしく!! うちの息子をよろしく!!」


 父親は直ぐにセナとレイを交互に両手を掴んで。

 よろしくと伝えながら、両手をブンブンとしていた。


 俺はその姿を見て、またキョトンとした。

 それ以上にセナとレイはキョトンとしていたが……。


 だが、この人が俺の父親の、マグノイア・クリスさんか。

 ものすごく嬉しそうに出迎えてくれた。


「僕もお世話になってます」

「私もです」

「そうかね〜そうかね〜さあさあ晩御飯できてるから!

 みんなで食べよう!」


「今日は私がよりをかけてたくさ〜ん作ったから、いっぱい食べて!」


 俺達は食卓を囲って晩飯を食べていた。

 テーブルの上には様々な種類の料理が並んでいた。


 それはきっと、どれが好みか分からないので。

 スズハは多くの種類を作ったのだろう。


 その料理を見ただけでわかる。

 とても、歓迎してくれてことを言わなくてもわかった。


 穏やかな雰囲気の中でクリスはセナを見ていた。


「セナくんは息子とはこの村の幻想の森であったんだね?

 セナくんは神秘的な場所が好きなのかい?」

「はい! 僕はこの世界で見た事ない物を沢山、

 見てまわるのが趣味です」

「そうか! そうか! それはいい事だ!

 もし、よかったら僕の大切な息子も、一緒に色々ところを連れて行って欲しい。ダメかな?」

「もちろんです!」


 うんうんと頷きながらクリスは満足気な顔をしている。

 そして、次はレイの方に視線を転じた。


「レイちゃんはどこで息子と出会ったんだい?」


 その言葉にレイの変わりに俺が告げた。


「ビニ町の近くの草原でシルバーファングに襲われていて。

 そこで出会ったんだ」

「そうか、そうか! タクロウとレイくん、二人が守ったんだな!

 偉いぞ! 男の子は女の子を守る存在だ。本当に偉い!!」


 クリスはレイの姿を一瞥(いちべつ)するや何も言っていない、

 伝えていないのに、突然クリスはレイに言う。


「レイちゃんは帰る場所がないのかい?

 なら、うちの娘になるといい!

 好きなだけここにいなさい。ねぇ母さん」


「そうねぇ! 女の子も欲しかったし。

 いいかしらねぇ〜 賑やかになるし! もちろん大賛成!」


 ────えっ??

 クリスとスズハは何を言っているんだ。


 そのクリスの言葉にレイと俺は言葉を失った。

 俺はスズハとは会っているが。

 だが、クリスと会うのは今回が初めてだった。


 父親は俺がこの世界に来た時には魔法学園に仕事に出ていた。

 今回初めて会ったけど、何故そんなこと言えるんだ。

 レイの事、何も知らないのに……。

 何故、なんだ。


 いや……。

 レイだって今回が初対面だ。


「はっはっはっは!

 何で僕がこんな事を突然言ったのかって顔をしているね?

 僕は幼い頃、()()だったからさ。

 親の顔の記憶もない。

 幼い頃は教会で過ごしていて、色んな体験をいっぱいした。

 とても貧しかったし、嫌なこともあった……。

 だが、沢山、幸せもあった。そう、最大の幸せ!

 学園で母さんと出会って、結婚して、タクロウと出会った。

 現時点は大変かもしれないけど、幸せになる前の準備期間だと思えば、少しは前向きになるだろう?

 僕はそう信じている」


 そんなことで……。

 そんなことだからか。


 クリス言葉はとても重みがあった。

 そして、レイも俺もクリスの言葉に吸い込まれた。

 俺は何も言えなかった。


 ただ、この人が父親で良かった。



 ---



 その後、レイはマグノイア家に住むことになり。

 言葉を交わすことは少ないが、

 気持ちを通わせる事が多くできた。


 それから数日が過ぎて、

 レイはマグノイア・レイになった。


 家族で過ごす時間はとても和やかで、

 それが当たり前だった事を、俺は思い出しながら、

 日々を過ごしていた。

この度は、読んで下さり有難うございます。

皆様の評価とブクマが励みになっております。

今後とも、引き続きご愛読いただければ幸いです。

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読んで下さり有難うございます。
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