第10話「優しい時間」
「とりあえず、もう直ぐ遅くなるからどうしようか?」
「今日はビニ町に宿泊しよう! レイさんのこともあるからね〜
それと先にスズハさんには泊まるって連絡はしてあるから。
後、宿屋も抑えてあるのだよ!」
「母さんにも? 仕事が早い!
じゃあ、帰る時間が省けたから少しこの町を観光しようか!」
「うん! いいのだよ〜」
「はい」
俺達は洋服店に向かった。
洋服店に入った瞬間。
女性店員さんが目を丸くさせているのを俺は気づいた。
それはそうだ。
俺の隣には絵に書いた様な美男美女がいるのだから。
女性店員さんは鼻息を吹かせながら。
熱心にセナとレイの洋服を見立てている。
俺は言われるがままに購入をした。
正直、全て似合いすぎていた。
そして、次にアイテムショップに寄った。
店に入ると─アイテムや初めて見るの物が。
ランダムにぎゅうぎゅう詰めに置かれていた。
俺はカウンターに腰かけている老婆に、
プラティークはないかと聞き、そして、色を選び。
青のブレスレットのプラティークをレイにプレゼントした。
レイは何も身につけていなかったので。
少しでも元気になればいいのだが。
そして、買い物を済ませた。
セナは俺の為に、
新しい黒のブレスレットのプラティークをプレゼントをしてくれた。
それを見たレイは、右手をギュッと握りしめながら、
とても申し訳なさそうな表情をしていた。
「私……こんなに貰っても……。何も返せない」
「返してもらう為に渡したんじゃないよ!
だから、いらなくなったら好きにしていいから」
「わかった。ありがとう……」
「あぁ!」
レイの表情は変わらなかったが喜んでいるのを感じた。
俺はその姿がまるで、自分自身の様に嬉しかった。
「セナも俺のためにプラティークありがとうね。
大切にするよ」
「うん、僕も服、ありがとうね!」
ビニ町に入り、何もかも、新鮮に感じた。
俺は色々な場所を見てまわりたいと思った。
そして、俺達は宝石丸という名前の宿屋に向かった。
〇〇丸と名前が付く宿屋は系列店らしく。
ギルドと提携していて。
どこの場所にも大体ある宿屋だ。
ビニ町の宝石丸は外観は赤レンガの建物だ。
中に入ると、とても活気があり広い。
一階は料理のお店が借り入っている。
二階は宿泊施設みたいだ。
俺は店の中を漂っている、
かぐわしい匂いに食欲をそそられていた。
そして、可愛らしい服を来た店員さんが案内に来た。
「すごいなぁ! とてもいい匂いがする」
「酒場──ルルージュにいらっしゃいませ〜
三名様ですね! どうぞご自由にお座りくださいませ」
俺達は茶色い丸いテーブルを囲んで椅子にかけた。
セナはその丸いテーブルの中心部にはめ込んでいる、
丸いプラティークを押した。
すると、メニューの映像が出現し、
それはどの方向からも見れるようになっていた。
「うわぁすごい! 何がおすすめなんだろう」
「僕のおすすめは灼熱石で焼かれる。
ハンバーグやステーキがおすすめだよ。
ビニ町は石の町だから!」
俺はセナにそう言われて、
頭の中のイメージと店内の匂いでそれを確定させた。
「そうなのか! じゃあ、ハンバーグとスープを」
「じゃあ、僕も同じものかな」
「私もその──同じ物を」
「そうなのか?
みんな違う物を頼んで、シェアしたりしないのか?」
「僕は同じものがいいかな」
「はい」
気を使ってる感じはしないな。
まぁ、いいか。
テーブルにはめ込んでいる、
プラティークから情報がキッチンへと飛ばされる。
魔力は本当に電気の代わりでもあるんだな。
俺達は晩飯を食べ終わった。
セナの言う通りルルージュのハンバーグは絶品すぎて。
二回もお代わりをしてしまった。
そして、予約している二階の宿泊部屋に入った。
部屋に入り、俺は一点を見つめて固まっていた。
「セナ、その……ベッドは一つなのか?」
「そうなのだよ! いつも一緒に同じベッドで寝てるから〜」
「そうだよなぁ」
これはセナの計算だった。
ベッドを一つにしたのもわざとである。
だが、レイと出会う前から予約していたので。
それだけはセナの予想外であった。
俺はその一点を見た瞬間にベットで寝るのを諦めた。
「レイはベッドで寝て! 俺とセナはソファーで寝るから」
その言葉を聞き、レイは俺の右腕の袖をつかみながら。
瞳をしっかり見つめていた。
「これ以上申し訳ないから……
その一緒に三人でベッドで寝よう?」
「僕も三人でベッドに寝るほうがいいと思うよ。
下手に病気になったりするとダメだよ。
せっかく休まる場所なんだから」
俺はレイとセナの返答にハッとした。
そうだよなぁ──俺は断じてロリコンではない。
俺は心に悟りを開きながら。
ベッドへと向かった。
「そうだな、じゃあ三人で寝よう」
セナはベッドに横になると、直ぐにスース寝ていた。
なんて……可愛らしい寝顔なんだ。
天使がここにいる。
男なのに。
あ〜可愛い。
俺もクエストの疲れか、眠りに落ちていこうとした。
横になって寝落ちそうになっている所に……。
レイがすごいべったりとくっついてきた。
俺は突然の事に動揺する。
レイは俺に肌をスリスリ寄せている。
そして、こちらを美しい蒼眼でジッ見つめていた。
俺はその柔らかさと可憐な姿に、
無言でレイを見つめ返してしまった。
レイはまたすりすりくっついている。
「……返せるものがない……。だから渡せる物を渡す」
俺はレイの言葉とオロオロとした表情で理解した。
セナが起きないように小さな声でレイに言う。
「俺が考えてるのと違う事のかもしれないけど、そう言うのはダメだぞ。
レイはめちゃくちゃ綺麗なんだから、男は勘違いする。
あれは急に勝手に思って。
勝手に俺がやった事だから気にするな、俺の自己満足だからさ」
「……ありがとう」
レイはニッコリと微笑んだ。
俺の頬にキスをして少し離れて、眠りについた。
私の声はあまりに静かで、
時間がなくなったかのような一時だった。
彼がくれた安寧は、
星が瞬く音も聞こえてきそうなほどの静寂であった。
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