第104話「幸せ」
俺達はビニ町にいた。
それは教会に行くためである。
リスブン街には教会がなく、
その為、アポートで転移してビニ町に来たのだ。
アリエラがクロの前で敬意を表していたが、
クロの無言の威圧でアリエラは直ぐに理解してそれをやめた。
これは俺の予想だが、
もしかしたら、クロの信仰者は人族以外なのかもしれない。
この感じが、なぜがカチリとハマるような気がした。
そして、俺達はクリスと別れてその場を後にした。
「僕の〜僕の〜タクロウなのだよ〜」
セナはずっと上機嫌だ。
新しいメロディーラインを開発している。
そのメロディーを聞いてずっとむ〜っていているレイ。
「ふん! セナにいつか目にモノ見せてやります!
ねぇお兄様!」
えっ……俺に確認を取られても。
強い目だレイ。
「あぁ〜そうだな」
「えへへ〜お兄様」
「タクロウしゃま」
「主殿、ルークは多分、何かしないとずっとこの唇ですぞ」
「あぁ、そうだな」
俺の右手を握りながら歩いているルーク。
ルークに視線を転じると絶対に、可愛いたらこ唇を作っている。
子供の前にはあれはよくなかった。
反省だ。
だが、そう俺を促しているアテナは
俺の唇を見ながら話している。
そう和やかに話しながら俺達は教会に入った。
そして、いつものように祈りを捧げた。
---
「フッハハハハハハハ!!!!!!!!
我が名はスーパーシルビアだ!!!」
目を開けるといつもの場所にいた。
精神と時の部〇、みたいな場所だ。
だが、いつもながらシルビアの姿を見て驚愕する。
それは日本の祭り人の服装を来たシルビアが居た。
「おい……シルビア何て格好しているんだ……」
「祭りだ!! 祭りだ!!!!」
シルビアは一人で目に見えない神輿を抱えて、
わっしょいわっしょいしている。
やべぇ……。
トチ狂ってやがる。
『あなた様、いつもこのようなのを対応されているのですか?』
まぁ……な。
『大変ですね』
俺の肩にちょこんと乗っている、
黒猫モードのクロが念話でそう話した。
すると、シルビアはクロを睨みつける。
「祭りには猫は禁止だ!!! 直ぐに消えろ!!」
ビシッとクロに指をさす。
クロはそっぽを向いて、可愛くしっぽをフリフリしている。
「ぐぬぬぬぬぬぬ! 貴様!!!!!!!!」
激情しているシルビア。
テンションがいつもよりおかしい。
増し増しだな。
「シッシルビア落ち着けなぁ! 落ち着け!」
「ふん! まあいい! 祭り人シルビアは寛大なのだ!」
「そうか〜さすがだな〜偉いな〜」
俺は棒読みでシルビアをもちあげる。
「でも、何かあったのか?」
「いろいろあったわ!!!!
ぐぬぬぬぬぬぬ思い出すだけで腹が立つ!」
「……そうなのか」
気迫迫るシルビアの表情と声色。
クロの試験の事を言っているのか?
多分、そうだな。
「みゃあ〜」
クロは可愛く鳴き、ぺろぺろしている。
「この!! 媚び猫め!!!
ワタ──いや女神が人にちゅちゅだと!!!!!!
万死に値する!!!!!!」
あーーそういう事か。
えっどういう事だ?
「まぁ、いい、私だっていつか──ごにょごにょごにょ」
「……」
顔を赤らめてごにょごにょ言い出したシルビアを、
俺は無言で見つめた。
何この……時間。
だが、シルビアはどの服装を着てもやはり似合うな。
「ひやぁぃあわぁあ──コホン。
私がこの格好をしているのはタクロウに新たな仲間が出来たからだ。
お祝いだ!」
「そうなのか!」
だから、こんな格好をしてくれたのか……。
って思わないよ!!!!
テンション異常だろ!!!
あっやべぇ……シルビア俺の思考読めるんだった。
「……」
逆に俺が無言で見つめられた。
「ごめん、シルビア」
すると、急に真剣な表情を見せるシルビア。
「まぁ、いい。タクロウが真実を知りたければダンジョンの、
百階層を目指しなさい。
三つのダンジョンのね。
それが真実への条件よ」
「あぁ!」
俺が聞きたかった事を先回りされた感じだな。
流石、女神。
「この世界は好き? タクロウ」
「この世界は知らんが、この世界の人は好きだな」
「そう」
ふふふっと笑みを浮かべながらウンウンと頷くシルビア。
ゆっくり世界を俺は知ればいい。
焦ることはない。
「また会いに来るシルビア!」
「やだ」
「──はぁ?」
いかんいかん、まさかの答えで、
はぁぁ? ってつい出てしまった。
「ぷいぷいだ」
「シルビア、俺は来るからな!」
「タクロウは私の事は好きか?」
俺の瞳をチラチラ見るシルビア。
可愛らしい。
「まぁ、嫌いじゃない。まぁ、好きだ」
「フハハハハハハ!!!! 仕方ないなら仕方ない!!!!
いつでも来るがよい!!!!!」
「あぁまた来る!」
「真実の先に幸せがあらんことを願う」
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俺は目を開ける。
セナ、レイ、アテナ、ルークが俺に視線を向けている。
「お兄様! 私は決めました。
お兄様に無理やりちゅっちゅっをしようとはいたしません。
その代わりにハグをして貰えますか?」
セナ、ルーク、アテナがえっ?
と無言だがそういうような表情をしている。
「あぁいいぞ!」
俺はレイにはぐをする。
「お兄様は私の好きですか?」
「あぁ好きだぞ」
「私はちゃんと段階を踏む女です。
お兄様──」
俺の唇に柔らかい感触が──
「──レッレイ……」
「ふふふっ幸せです。好き同士の行為です」
一瞬、時が止まった。
セナ、アテナ、ルークだったが直ぐに声を上げる。
「ずっずるいのだよ!! 好きからのちゅっちゅなんて」
「ルークもルークも!」
「主殿!!!!」
俺達は教会で騒がしくしていたので、
神父様に怒られ平謝りしながら教会を後にした。
これが私の大切な処女作です。小説の面白さをいっぱい教わりました。これからも描き続けます。読んで下さり有難うございます。
 




