表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

106/107

第103話「誰が為の世界」

 俺達は宮殿を後にし昼食をとっていた。

 もう俺の膝の上には当然のように、

 ちょこんとルークが座っている。


 セナ、レイ、アテナは暗黙のルールを作ったのだろうか。

 ルークが満足気な顔で座っていてもルークだからいいかと、

 その流れに収まっている。


 突如、和やかな雰囲気の中で切り出したのはセナだ。


「僕は転生者なのだよ。ごめんなさい言うのが遅くなって」

「いいよいいよ! 俺だって言い出せなかった訳だし。

 何度も言うが、セナはセナさ」

「そうですよセナ! あなたはあなたです。お兄様もお兄様。

 しかし、()()お兄様です」

「まぁアタクシは主殿とセナが好きだから、それでいい」

「私もタクロウ様とセナ、大好きです」


 その言葉に満面の笑みを見せるセナ。

 俺も自然と笑顔になる。


「セナはセルシアに会った事はあるのか?」

「あるけど見た事はないのだよ!」

「どういう事だ?」

「眩しく見えなかったのだよ。ピカ〜って光ってて白くて」

「なるほど」



 ---



 突然、クロが猫ちゃんから元の姿に戻った。

 そして、座っている俺の背後から抱きついている。

 双丘の暴力が俺の肩に当たっている。


「──なっ! クロ」

「ワタクシもちゃんと会話に参加をしようと思いまして」

「ベッタリはずるいのだよ!」

「そうですわね」


 クロは珍しくセナの言う事を聞き、

 空いてる席にちゃんと座った。

 座ったと同時にクロが話し出す。


「先程、セナが言いました眩しくて見えないに関しては、

 命に興味がない、ゴミクズ女神だからですわ」


 クロはセルシアの事を、本当に辛辣に言うな。

 だが、命に興味がないか。


「どういう事だ?」

「転生者ですら、姿を表さなかった理由は、

 単純に見せる価値もないって思っているのです」

「……なるほど」

「あなた様、これでわかりましたわね。

 セルシアの気持ち悪さ」

「あぁ」


 すると、セナは俺の顔をじーっと見つめ、

 またニッコリと微笑んだ後、話し出す。


「じゃあ次は僕の話をするね。

 多分、僕とタクロウの元の世界は違うかもだね。

 僕の世界ではアニメってのは存在しないのだよ」

「えっ!! セナ、アニメないのか!!!」

「うん!」


 俺は驚愕した。


 何だ……その世界。

 絶望ではないか!!!

 この世界にもアニメはないんだが。


「そして、僕はコピーだったのだよ。有名な科学者のコピー。

 前世で生きてたのも三歳位だったかな?

 そして、直ぐに死んじゃってこの世界に来たの」

「セナ……」


 俺達は絶句していた。



 だから、初めて魔法を教えてくれた時、

 簡単に自らの腕を切ったのか……。

 まるで、自分の価値を知らなかったかのように。

 

 ルークは察して直ぐに俺の膝から降りた。

 そして、俺は直ぐにセナを抱きしめた、


「セナ……」

「タクロウ! そんな悲しい顔しちゃダメなのだよ!

 僕は今がとても幸せなのだよ」


 突如、クロが殺気立つ。

 その表情は苦虫を噛み潰したように顔をしていた。


 俺は初めて目にする、クロのそんな顔を……。

 真剣にムカついている顔だ。


「あのゴミクズ……絶対に許さない。

 人の命を何だと思っている」


 低い殺気に満ちた声色を放つクロ。


「さすが女神様。僕の事、直ぐに分かるんだね!

 僕はこの世界でもコピーなのだよ」


 その言葉にクロ以外は驚愕した。


「……セナ……何……言ってるんだ」

「それは僕はセルシアのコピーなのだよ。

 姿も見た目、そっくりらしいよ。

 僕が転生すると際、眩い光の中で声のみが聞こえて。

 同じにしますって言われたの」


 俺はもう一度セナを抱きしめる。


「あなた様、これはセルシアのただの皮肉なのです。

 そういう事を無関心で、できる女なのです」


 俺に抱きしめられニコニコしているセナ。

 そしてセナは俺の頬をムニュムニュしている。


「僕はタクロウに変えられたのだよ!

 少し抵抗したのさ。個性が欲しくて──

 あの時、転生した時、

 セルシアが喋っていた口調と僕の口調が似ていたのだよ。

 気持ち悪いほど。

 僕は抵抗のため、一人称を私から僕に変えたのさ。

 でも冷たい口調は変わらなかったのだよ」

「……」


 セナがムニュムニュするのを辞め、両手で大事そうに、

 俺の頬を触っている。


「変な癖がついたのだよ

 タクロウと会って、語尾がなのだよになったんだよ!」


 セナがそう言った後、柔らかい感触が当たる。


「──ひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁあ」

「──主殿」

「タクロウ様がちゅちゅ!」


 俺は固まった。

 唖然とした。


 セナは可憐な笑みを見せる。


「前世と今、合わせてファーストキスなのだよ! タクロウ」

「……セナ」


 俺は照れすぎて、セナの顔が全く見れなかった。

 やばい──めっちゃドキドキする。


「セナ残念。タクロウ様のファーストはワタクシが貰ってます。

 ワタクシもファーストキスだったので、

 ファーストキス同時です」


 クロがセナに対してニヤリと悪い笑みを見せている。

 いや──クロ!!

 それ、言葉で言ったら!!!


「お、兄、様!!!!!!!!!!!!!!!!」

「主殿……アタクシもちゅちゅ」

「タクロウしゃま〜」


 アテナとルークはたらこ唇を作ってムチュ〜っとしているが、

 レイは完全に鬼の形相で睨んでいる。

 しかも、レイの背中に龍が見える。

 こっこれはス○ンドか?


 だが、セナも話したんだ全て。

 じゃあ俺も──


「俺はその前世は──」


 俺が話そうとした──セナが俺の口を指で抑える。


「タクロウはタクロウだよ!

 二回目なのだよ」



 ──ちゅ。



「セナ……もう許さない」

「えへへ、二回目なのだよ〜

 極楽なのだよ」

「女神のワタクシを出し抜くとはセナ。

 あなた様、五回くらいしましょう」

「主殿、むちゅ〜」

「タクロウ様、むちゅ〜」


 俺が呆気にとられすぎて、

 ポカーンとしているところ。

 声が掛かる。


「いやいや……まさかこんな修羅場に会うとはね……」

「誰に似たのでしょうかね?」


 クリス、スズハ、アリエラが現れた。

 クリスはその状況を見て、

 まるで自分の事のようにオロオロしていた。


 スズハがクリスを睨む瞳が珍しく。

 冷たいったら冷たい。


 だが、その桃色雰囲気は直ぐに分散する。

 アリエラだ。


 片膝をついて俯いているのだ。

 クロの前に──


「我が敬愛する神よ──ノエル様

 我がエルフ族の寵愛の感謝────」


 アリエラは自らをエルフと告げ、

 そして、クロの事を敬愛の神と──

この度は、読んで下さり有難うございます。

皆様の評価とブクマが励みになっております。

今後とも、引き続きご愛読いただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感謝です。
読んで下さり有難うございます。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ