第102話「彼女の目的」
俺は謁見の間に入り、
邪魔にならないように端に屹立していた。
クランリーダーは玉座の前にしゃがみ、
王女、ミルディア・B・デリラの話を聞いている。
フェスティバル三位の珊瑚は、
リーダーのリリーが。
俺の所属する円卓の騎士は、
リーダーのルークが同じようにしている。
一位の七色の十字に関しては、
ハドリーのみしか参加していなかった。
閉会式は粛々と進み。
三組はフェスティバルの報酬を受け取った。
一位は水龍のクリスタのレプリカ。
二位はバクチからアース行きの超豪華客船。
三位はこの街のホテルの無料券一年間分。
そして、その映像はリスブン街に流されながら、
盛大に閉会式は終わっていった。
七色の十字と珊瑚は、
閉会式が終わると同時に早々と帰って行った。
俺達も同様にその場を去ろうとしていた。
「しかし、バクチ街から、
島国アースの豪華客船とか普通に嬉しいな!」
「お兄様! そうですね。
学園に入学する前に見学など、いいかもしれませんね」
「タクロウと一緒に船に乗れるなんて幸せなのだよ〜」
「むぅ〜抜け駆けずるいですよ! セナ!
私だってお兄様との船で旅なんてセナが思っている以上に幸せです」
何故かセナとレイはどっちが幸せか対決をしている。
まぁ、なんか、恥ずかしいな。
でも普通に嬉しい。
「タクロウしゃま! ルークちゃんと出来ましたでしょうか?」
ルークは進化しているのだ。
タクロウ様とタクロウしゃまを使い分けている。
甘えたい時、自然としゃまになっている。
これは計算ではなく自然とやっているからとても可愛い。
「あぁ! ルーク立派だったぞ!」
「えへへ」
「主殿が言う通り、ルークは確かに立派でありました」
そう言いながらうんうんと頷いているアテナは、
もう完璧にお姉ちゃんである。
「とりあえず! リリーの依頼がある。
ダンジョンの三十階層に潜る為。
美味しい物を食べて準備しよう!」
「「「「はい!」」」」
「みゃあ〜」
俺達は謁見の間から出ようとした。
「タクロウ。妾のモノにならんか?」
その一言で、
セナ、レイ、アテナは視線を転じ少し威圧を見せる。
「どうして、貴方は俺に固執するんです?」
俺の問いを聞き。
デリラは俺の目の前まで優雅に歩き。
そして、俺、セナ、レイ、ルーク、アテナを一瞥する。
それを見た宰相は人払いをし、
自身も謁見の間から去っていく。
「それはのう、妾の故郷を取り戻すためじゃ!」
デリラの一言で俺は息を呑んだ。
その表情は固い決意の表れを見せていた。
「どういう事だ?」
「お主には話す。巻き添えにしてやる」
巻き添えって、超怖い事言うよこの人。
めっちゃニヤニヤしてるし、
どうしよう、でもこの雰囲気……聞くしかないよなぁ。
「妾の故郷はアスバル帝国でのぅ」
「アスバル帝国」
その俺の反芻にキョトンとしたデリラ。
セナ、レイ、ルーク、アテナは、
俺が転生者だと知っているので普通に見ていた。
「お主、アスバル帝国を知らんのか?」
「まっ……まあ」
ヤレヤレと首を振りながら、
少し訝しむ瞳で俺を見ていた。
そうだな、時間がある時に、
この世界の文化について色々聞こう。
えっどうして知らないのって言う、
空気は本当に慣れない。
「仕方ない妾が教えてやる。
六大王国は知っておるかい?」
「ん〜少ししか、わからないです」
「六大王国というのは、それぞれ崇める国家である。
一番の大王国は光の神セルシアを崇めるラスク教王国。
風の神ファンドを崇めるマルタニア王国。
土の神デュオを崇めるカルバーム王国。
火の神レーネシアを崇めるミスト王国。
学園国家アース。
そして妾の故郷、水の神アルテウス様を崇めるアスバル帝国じゃ」
なんかクロが言ってたな。
火の神レーネシアと光の神セルシアはやばいって。
あれ?
頑張り屋さんでやばいって言ってた、
現闇の女神のラーラがいない。
いや、その前にクロを崇める王国がないじゃん。
クロは人気がないのか?
クロは念話で答える。
『ワタクシは一番人気者ですよ』
まぁ、クロは美人だからな。
『ふふふっ』
クロはスリスリしている。
『あなた様の行動にお任せします。
ワタクシはあなた様の意志を尊重いたします』
突然、クロはそう告げる。
ん? まぁ、ありがとうクロ。
「何、惚けている」
デリラは俺を睨んでいる。
念話をすると確かに惚けて見えるのか。
「まぁ、よい。
妾の故郷、アスバル帝国は──」
「「──あ〜!!」」
セナとレイがデリラの話の途中で、
まるで扇風機の前であ〜って言うかのように邪魔をする。
「セナ、レイ。話の途中だったぞ!」
「お兄様はそう言うドロドロ系は進みません」
「そんなのだよ! 貴族のぐちゃぐちゃとか大っ嫌いなのだよ!」
「まぁ、聞くだけなぁ! 聞いてみよセナ、レイ」
デリラはイラつきもせず再度話し出す。
「今のアスバル帝国は傀儡国家じゃ。
光の女神セルシアの使徒によってな」
「セルシアの使徒?」
「異邦人じゃよ」
デリラの言葉、異邦人。
転生者って事か。
「ほぅ、その表情は何か知っているようじゃのう。
だが、アスバル帝国の女王には気をつけろ。
妾は必ず力をつけ、あの女を討つ」
「覚えておく」
「まぁよい、今はお主の事は諦める。
だか、妾とお主は同い年。
アースでまた一緒になる」
デリラは同い年なのか!
どう見ても色々成長し過ぎのような。
「お兄様!」
「タクロウ様!」
「むむむなのだよ」
その俺の視線に気づいて注意するレイ、ルーク、セナ。
デリラは言い終わるとどこか満足気な顔をしていた。
「では、またの円卓の騎士よ」
そう言いデリラは去っていく。
印象に残りそうな言葉を納めて。
まだ見ぬセルシアの不可解を残して。
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