第97話「剣を持つ理由」
俺はクリスに追随して、カフェで少し休憩をとっている。
あの後、ガウェイン達はルベルトを回収してすぐに去っていった。
あの光のブックマンのNO.V、ガウェインが、
セナのお兄さん……。
光のブックマンの目的はセルシアの見聞じゃなかったのか?
二つの世界を一つにどういう事だ。
だが、考えても仕方ない。
セナはセナだ。
もうちょっと動揺すると思っていたが、
俺は意外にもクールだった。
それは目の前に見えるものを大切にしたいと、
俺はそう思ったから。
「少し推測とかでもしているのかい?
色々と難しいからね、この世界は」
「正直、あまり気にしてない、ただの一般人だから。
後はこう言うのは時間薬ですよ」
クリスは俺の考えている事が透けているかのように告げる。
そして、俺の言葉を聞くと、ニコニコと笑みを浮かべていた。
「だから、私には聞かないのかい?」
「まぁ、聞いたって仕方ないだろ? 後は自然に向こうから近づいて来そうだし」
「まあ、そうみたいだね」
クリスは呪いでもかかっているのだろうか、
ガウェインが言うには、クリスは話せないって言っていた。
この世界が何だろうと漠然としすぎて、あまり関心がない。
のんびり、この世界を楽しみたい。
ただ、それだけだ。
そう思っていた。
だけど──
「でも、私はタクロウは剣を使うと思っていたけどね。
まさか、格闘家みたいな事をしているとは思わなかったよ。
私は驚きながらフェスティバルを観戦していた」
クリスはまた俺のモヤモヤしている部分にスポットを当てて、
優しく話している。
「武器はちょっと……苦手です」
「そうか、だが、それはダメだ。タクロウは剣を扱うべきだ」
俺の言葉にキッパリ否定するクリス。
俺は一驚していた。
この人は……同じ転生者だからか?
剣はカッコイイよな……。
「俺は剣、今まで触った事もない、その、今更って言うか……」
「セナちゃんとレイは君に甘々だからね。ん〜」
「えっ?? それは……その……」
セナとレイは俺の言葉に優しく肯定をしてくれる。
俺はセナの言葉につけ込んで諦めを手にしたのか?
俺は人の血や人が死ぬのが見てられない。
前の世界より人の命が零れやすい世界なのに。
たまたま、そういう場面に、
出会にしていないだけかもしれないのに。
「タクロウ自身もそう、思っているんじゃないか?
フェスティバルで武器があれば、もうちょっと立ち回りは出来たのではないかと。
悔しくないのかい?」
「俺はいいんだよ……」
「タクロウは憧れを人に託す為にこの世界に来たのかい?
憧れを自分で手にしたくないのかい?」
「剣……」
発破をかけるクリスの言葉。
だが、俺は逡巡して吃っていた。
俺の心はもう諦念している。
突拍子もなくクリスはアイテムボックスから剣を出す。
銀光を纏う長さ二メートル強の大剣。
その大剣は俺の瞳をすぐに奪った。
「これは私の師匠から頂いた剣なんだ。
名はグングニル。槍じゃないけどね。
この剣は不殺の剣と言って、人を斬ることは出来ない剣なんだ。
私は昔、殺生をし過ぎたからね。
この剣には幾分か救われたよ」
「……綺麗だ」
「持ってみるかい?」
剣を諦めた俺が、自然と剣を求めてしまった。
吸い寄せられように俺はグングニルを握り、持ち上げた。
その大剣は質量以外の重さも感じるような気がした。
だが……重い。
「おもっ……めっちゃ重い。片手じゃ、絶対無理だ」
「まぁね! 魔強化をすれば、持てるだろう?
君は魔力量が多いから、戦闘中にずっと魔力を身体に流し続けながら戦っても。
結構な時間、戦えると思うよ」
胸が高鳴っている。
まるで初めて魔法を使った、あの時のように……。
「俺は……」
「剣を持つ理由が憧れているから、それでもいいじゃないかな。
私はその理由で剣を持つ人が現れて、とても嬉しく思っている。
そして、この世界が優しい世界になってよかったと感じている」
「……」
ガウェインが言うにはクリスは三百年前の転生者。
だが、普通に人間だ。
何故、この人が生きているのか。
クリスの歳が俺の前世の時の年齢とそう変わらないのか。
それは気になる。
ただ、クリスが見てきた、重みがある言葉は。
俺の心に優しく突き刺さった。
この人には勝てそうもないな。
今度アニメの話とかしてみよう。
好きかな?
なんてな。
「タクロウの瞳はもう決まったみたいだね。
この剣はかっこいいから見惚れるだろう?
私もこの剣を使っていた人を心の底から尊敬し見惚れていたよ。
世界には絶対など、ないんだ。
君も強くなればいい。
なんたって魔法がある世界なんだ!
だからタクロウ、無理はないよ」
「父さん……俺、貰っていいかな」
「あぁ!」
クリスは優しく微笑みながら俺を見つめていた。
その剣を握る姿を見て、懐かしい面影でも見ているように。
「この剣は名を呼べば、
持ち主の手元に戻って来るようになっているんだ。
不思議だよね。槍じゃないのに、ふふふっ」
「まぁ、でもカッコイイ」
「あぁ、カッコイイだろう」
そう、俺は剣を持ちながら見惚れていると、
ルークは思いっきり走り、晴れやかな笑顔で向かってきた。
「タクロウ様!!」
「おお! ルーク」
紅葉より少し大きな手は柔らかく可愛い。
俺の手をいつもニギニギしているルークの手だ。
「どうしたんだ? 慌てて」
「二位ですよ! 二位!! プラティークから連絡が入りました!」
とても興奮しながらルークは告げた。
それはフェスティバルの内容だよな。
二位は凄いな。
俺なんか途中で……。
ウインドフィッシュを倒すのが目的って事を忘れていたからな。
「二位か! 凄いな!!」
「タクロウ様!! はい!!」
「ところで順位は??」
「一位は七色十字です。
二位は円卓の騎士です。
三位は珊瑚です」
やはり一位は七色十字か。
だが、珊瑚が三位かリリー達やるな。
それは完璧な番狂わせであった。
誰もが二位は赤羅の群青がなると思っていた。
それは金色のルベルトの暴走。
セナ、レイ、アテナの狩り。
その性で殆ど機能をしていなかった赤羅の群青。
その結果、こうなった。
それでも珊瑚は強かった。
だが、タクロウは知らない。
最後にカインに向けて放った魔法。
その光景を見ていたもの全てが、畏怖を込め。
尊敬をしていた事を。
見た事もない空を駆け回った稲光。
鮮烈なインパクトを残していた事を……。
この光景を街の多くの人が見ていたことを。
「やったな! ルーク」
「タクロウ様! 抱っこ〜」
ルークは両手をめいいっぱい広げながら、
甘え坊のポーズをしている。
可愛い。
俺はすぐにグングニルをしまい。
ルークを抱っこする。
そして、撫で撫で、ツウコンボだ。
「わかった、よしよし」
「えへへへ」
そのコンボ技で、もうルークは満面の笑みを浮かべていた。
嬉しそうだなルーク。
その光景をそっと見守っていたアテナが、
「主殿! やりましたな!!」
「あぁ! 俺は何もしてないけどな〜」
「そのような事はありません。主殿は立派でした!」
「ありがとう、アテナ」
すると、突然──アテナが鋭い目付きになる。
「主殿は剣を習われるのですか?」
「まあな、頑張ってみる」
アテナはアイテムボックスから大剣を出し構えた。
「なら、一度お手合せをお願いします」
「えっ……アテナ、そ──」
俺は動揺した。
口から止めようと零れそうになった。
だが、憧れを求めたい。
そして、俺は強くなる。
「あぁ勝負だ!!」
────だって剣と魔法があふれる、異世界なんだから。
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