プロローグ
新作連日投稿開始 先ずは一週間ですが
宗教によっちゃ世の中の出来事は全部神様の決めた事、苦難辛苦は与えられた試練だって教えらしい。まあ、俺は宗教には興味無いし、否定も肯定もしないけれど、それが本当だっつうなら、俺の人生は随分とラノベみたいなもんに定められたって事だな。……神様もネット小説を読むのか?
「……ふむ。何から説明したら良いのか。まあ、先にこれだけは言っておこう。愛しているよ、ダーリン」
嵐でも起きたのかって位に破壊された公園、外灯がぶっ壊されて月明かりだけが周囲を照らす中、怪我をして尻餅着いちまっている俺に向かって女神みたいに綺麗な女が手を差し伸べる。臆面無く告げられたこっぱずかしいセリフを聞いた俺はその手を迷い無く取って、こう言ったよ。
「俺もだぜ、ハニー」
平穏無事な俺の人生に何が起きたのか皆目見当が付かないが、分かっている事は一つだけ。こうやって手を握り、そのままの流れで俺の胸に飛び込んで来た女神様と俺は赤い糸で結ばれているって事だ。
んじゃ、自己紹介でもしておくか。俺は成上 迅。彼女持ちの高校生……いや、世界一美人で愛おしい彼女持ちの高校生だ。
時間は少し巻き戻り、今朝の目覚めの瞬間。目を開けた時、俺は今日も最高の一日だと確信したよ。何せ俺の上には女神みたいな美少女が乗っかっていたんだからな。
「やあ! 今日も素晴らしい日だね。こうして君と顔を合わせる事が出来るのだからさ」
悪戯気に笑みを浮かべ、少し頭を動かせば艶の有る黒髪が揺れている。軽く手を伸ばせば絹みたいな手触りが伝わるし、こうして近くに居れば甘い香りさえ漂って来そうだ。前屈みになっているから胸が目の前で揺れているのが目に毒だぜ。分かっていてやっているんだろうがな。
この容姿端麗スタイル抜群な美少女こそ俺の幼なじみ兼彼女の剣谷 雫。ちょっと悪戯好きで隣に住む俺の部屋に無許可で侵入してはこんなドッキリを仕掛けるんだから心臓に悪いぜ。
だって、天国で女神様が迎えてくれたのかと思ったからな!
「なあ、雫。お前って本当に人間か?」
「当然! だから君と寄り添って人生を歩めるのさ。ほら、朝ご飯の時間だから行こう。父さんと母さんが待っているよ」
うん、確かに人間同士だからこそ人生を共有出来るし、人間の方が良いか。でも、本当に此奴が人間なのかって疑いたくなるんだよな。人間だろうが違おうが、俺の愛は微塵も変わらないんだがよ。
雫を部屋の外で少し待たせ、着替えたら直ぐに雫の家に一緒に向かう。まあ、別に着替えを見られても平気なんだが節度って奴だよ。雫は新しい下着と服を買う度に着替えの映像をスマホに送って来るんだがな。うん、迷い無く保存させて貰っているぞ。何せ愛する彼女の着替え映像だ、消す理由が見付からないだろ。
さて、こうやって家で朝食をご馳走になるって流れから分かるだろうが、俺の家と雫の家は交流が有る。何せ俺達二人の父母両方の祖父母、この八人の頃からの幼なじみ。交際も家族公認で、俺の両親が揃って海外出張に行っている間は飯の世話になっている。
「おや、来たかい、婿殿」
「早く座りなさい。それと昨日、雫に似合いそうなウェディングドレスを見つけたけれど……」
「おいおい、母さん。結婚はお互いが成人してからって話だろう? まあ、私は迅が十八になって直ぐでも構わないんだけれどね」
まあ、こんな風に交際の公認を通り越して外堀を完全に埋められいるって感じだ。まあ、お互い嫌な気はしないし、寧ろ良いんだが恥ずかしいっちゃ恥ずかしいな。まあ、俺もこうして飯の世話になるだけじゃなくって剣谷家の味を仕込まれているよ。夫婦共同で家事をしたいし、どうせなら雫には慣れ親しんだ味を食べて欲しいからな。学生しながらの家事の修行は大変なんだが、愛さえ有ればどうにでもなるってもんさ。
「続いてのニュースです。朱住市で発生している連続通り魔事件ですが……」
ニュースのナレーターが告げているのは最近近隣で発生している事件の話題だ。年齢性別関係無く夜道で襲われているんだが、情報通の友人の話じゃズタズタに引き裂かれて大量出血を起こしているってのに周囲に血溜まりが無いらしい。でも、現場の状況とかから現場が犠牲者の発見現場なのは間違い無いって話だが……。
「おい、雫。暫くは家まで俺が送り届けるからな」
「心配してくれているんだね、嬉しいよ。流石は私の騎士様だ。君に想われているってだけで幸せでの昇天をしてしまうかもね。でも、バイトの方は大丈夫なのかい?」
隣に座る雫は俺の言葉に冗談めかして腕に抱き付き、胸を押し当てて来る。ったく、幸せで昇天しちまうのは俺の方だよ。未だ雫と結婚してないってのによ。
「愛してる彼女の安全が優先だ。それに少し走れば問題無い」
そう、俺の事なんて雫の安全に比べたら些細な事だ。雫は俺の事を心配してか不満そうだが譲る気は無い。まあ、こうして心配させるってのは心に来るな。俺は雫には笑っていて欲しいってのによ。
「よし! 今度バイト代が入ったら遊園地に連れて行ってやる。偶には遠出しようぜ」
「なら、夜は私の奢りでディナーだね。株で儲けて自由な金がかなり有るんだ。スイートに泊まろう」
おいおい、まーた儲けたのかよ。実は雫は容姿端麗なだけじゃなくて頭脳明晰才気煥発って奴で、こうやって何にでも才能を発揮する。この前も何かのコンテストで賞金を手にしていたっけな。俺も負けていられないな。俺を馬鹿にされて雫が悔しい思いをするなんて有っちゃならないからな。
「あら、それは駄目よ、雫」
でも、流石に両親の前で高校生カップルが外泊宣言は拙いだろう。ほら、渋顔だよ。流石にな……。
「ホテルだって高校生だけを泊めるのはスタッフさんが気を持むでしょうし、迅君の家に泊まる程度にしなさい。それなら何をしても口出ししないから」
「分かったよ、母さん。じゃあ、お泊まりセットの用意をしなくちゃね。ベッドは一つで良いとして……どうせ脱ぐから寝間着は不要だね」
「こらこら、駄目だぞ」
俺としては寝間着姿の雫を見たいが(まあ、毎晩窓から見せられてはいるんだが)、此処で親父さんのストップが入る。まあ、当然だわな。
「ちゃんと避妊の用意はしておきなさい。未だ高校生なんだからな」
いや、高校生なんだから避妊の必要が有る行為を止めろよ!? ……まあ、俺も雫に手を出したくない訳じゃない。部屋で二人っきりの時に体を触ったり寝転がってキスをした事だって有るんだが、最後まではちょっとな。……勢いで雫に手を出したくないんだ。ちゃんと手順を踏んでだな……。
「さてと、私の愛しいダーリンをからかうのは此処までだ。ちゃんと君が私を想うが故に手を出さないって分かっているさ。……でも、何時でも出して良いからね」
やられた。これまでの流れは全部冗談だったんだ。親子でグルになっているなんて卑怯だが、ウインクしてくる雫が可愛いから許す! 流石俺の彼女、美人なだけじゃなくって可愛いだなんて最高だな。
そうこうしていると時間は過ぎ、俺と雫が学校に行く時間だ。当然だが同じ学校で一緒に行くんだが、いざ玄関から出るって時に膨れ面で袖を掴まれたよ。
「……何か忘れていないかい?」
「行ってきますのキスだろ? 偶にはお前からしてくれ」
「……私はされる方が良いんだけどね」
毎日俺からしているんだ。偶にはされる側に回ってみたい。少し不満そうな雫だったが、納得したのか俺の首に手を回して唇を重ねたよ。
「まあ、偶には私からも新鮮な気分だから我慢しよう。じゃあ、今日のお帰りなさいのキスは君からだからね」
当然俺だ。互いに条件を飲んでこそってな。何時もの様に指を絡ませて手を繋ぎ通学路を歩く。この時、少し思う事があるんだ。そして雫も同様みたいだ。
「会えない時間が無くなって、こうやって一緒に歩く時間が増えれば良いのにね」
「同感だ。俺はお前とずっと一緒に居たい」
「私もだよ、迅」
腕に抱き着かれるのは毎回ビックリするんだ。だって毎日愛が大きくなって、昨日よりも今日の好きの気持ちの方が大きい。慣れる筈が無いんだよ。
もう片方の連載も宜しくお願いします
https://ncode.syosetu.com/n8143ft/
お色気シーン、六話くらいから本格的に