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ショートミステリー①

作者: ローリング

最近、家がおかしい。




別に、地盤が傾いているとか、両親の仲が険悪とかじゃない。単に、少しばかり気味が悪いだけ。害も無いから気にしなければ済むのだが……。




最近、帰宅する度に、私の部屋の電気が付いているのだ。電灯、という意味じゃ無い。エアコンもついているし、家電全般が勝手に起動している。




初めは、うっかり消し忘れたのかとも思った。




我が家は両親共に共働きで、兄も昨年から社会人。なので大学に行く私が、朝最後に家を出て、そして1番早く帰ってくる。そう考えると、犯人は私しかいないのだ。




だが……流石に、納得がいかない。私はこれほど忘れがちな人間だっただろうか?




毎日、毎日、念入りに確認をして、それでも電気を消し忘れるほどに?




そんな疑念に駆られた私がまず行ったのは、医者に行くことだった。




だが、結果は健康そのもの。若年生の健忘症などでは無いらしい。




そうなってくるといよいよ心当たりがない。違和感が不安を生み、不安は疑心暗鬼を生じ、私はすっかり参ってしまった。




よもやこれは怪異、物の怪、悪鬼悪霊の類の仕業ではないかと言う懸念が脳内で渦を巻き、家に帰るたびなんとも言えぬ恐怖を感じるようになってしまったのである。




このままではいけない。なんとかしよう。そう思い立った私は、すがる様に、近隣でも有名な神社でお祓いを受ける事にした。少なくない出費だが、もはや神頼みにも縋りたい気分だったのだ。




そうして迎えたお祓いの日。特に何事もなく儀式は終わったが、生憎の雨。幸い、兄の休日だったので迎えにきてもらおうかとも思ったが、傘もスマホも忘れるという間抜けを晒してしまった。




仕方なしにコンビニで傘を買い、家に帰ってみれば、やはり消した筈の電気が付いている。……お祓いの効果というものは、どうやらあてにならないらしい。




だが、一縷の望みはある。今日は兄が家にいるのだから、兄が私の部屋の明かりをつけたのかもしれない。




そう思い立って、家に帰るなり兄に問うた私は、そこで漸く、全ての謎の答えを知る事になる。




「は? スマートホームのアプリ入れただろうが。この前の機種変の時に。お前の帰宅に合わせて照明が自動で着くようにしてんの。……ははーん、どうせ金払うの親父だからって聞いてなかったな?」




タネがわかれば、そんなものらしい。私は自らの過失で、1人てんやわんやになっていたわけだ。




今度から契約内容はちゃんと聞け、社会人になるなら絶対に注意して聞け、と小言を垂れる兄の忠言を心に刻みつつも、私は肩の荷が降りた開放感で、笑ってしまう。




思い詰めていたのが馬鹿らしいやら、兄に間抜け話をしてしまって恥ずかしいやら。




そんな気分で自室に戻った私は、机の上にスマホを見つけ、兄の言ったアプリとやらを探してみた。確かにそれは、私のスマホ内にあり、GPSと連動している。




通知が出ない設定になっていたから、気づかなかったのだろう。私はアプリの通知をオンにし、悩みのことはすっかりわすれて、夕食の支度が出来たと呼ぶ母の声に応じて部屋を出る。




閉じた扉のその向こうで、消し忘れた電灯がひとりでに消えた事に気づかぬままに。


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