おふろ
なかなかキャラクターの掘り下げが難しく、苦労しています…。
あれから数時間にわたって、私達は土遊びをした。
鈴木ちゃんは恐ろしい伸び代を発揮し、今では3mほどの巨大な「ゴーレム」と呼ばれるものを生み出し、操縦していた。
私はというと、もともと魔術についてはある程度、勝手がわかっていたのでそこまで苦戦することなかったが、私は魔術については才能ナシと判断されてしまい「魔装」である、あの子がいなければロクに魔術を使えない筈だったのだ。
それを1年かけた猛特訓の末に、ある程度の魔術を使える様になったのだが、あくまで使えるようになっただけ。彼女の様なそこそこ大きい規模の魔術を使える訳ではないのだ。
(はぁ〜嫉妬しちゃうな。)
今でも私は身の丈ほどの壁を作るので精一杯だ。彼女の様に何かを操るなんて現状では不可能に近い。
(1年もかけて私は少ししか進まなかったのに、鈴木ちゃんはすごいな…。)
そのまま鬱々として思考に囚われそうになったとき、それを断ち切る様に声がかけられた。
「そろそろ暗くなってきたし、最初の訓練はここで終了ね!慣れないことでいっぱい疲れてるだろうから、後は
ゆっくり休みなさい!」
私達は揃って先生にお礼を言い、最初に集合した場所に向かった。
私達がそこに向かうと、すでに2人はそこにいた。
「お、来たな。秋月、鈴木。既にメイドさんがお風呂の準備をしてくれているらしい。早くその泥まみ
れな体をきれいにするぞ。私も早くこの汗を流したい。」
「そうだね。私も早くこのドロドロから解放されたいよ〜」
お風呂は昨日で初体験済みだ。このお城にあるお風呂の広さと快適さには虜になってしまった。
「ねぇねぇ。東條さん達はどんな訓練したの?」
私は湯船の中で思いっきり伸びをしながら聞いた。
「ん?ああ、私達はひたすら走ったよ。と言っても普段行ってるトレーニングと特に変わらなかったけどね。」
「特に張り合いなかったよなー。部活でやってることと特に変わらなかったし!」
確か田中ちゃんは陸上部で、東條さんは道場で剣道を学んでるんだっけ?
「まぁ、今回やったことは軽いテストらしく次回からはより実践的な訓練になってくそうだ。秋月達はどんなことやったんだ?」
「私達は土を使って魔力の使い方を練習したかな。それでね───」
私が会話を続けようとしたときに、事件が起こった。
「キャッ!」
それは短いものだったが、このお風呂場に反響し、この場にいる4人全員の耳に届いた。そして私が、声の主を探そうとすると、さっきのものより長く、そして低いものが再びこのお風呂場に反響した。
「おい田中!人の胸を突然揉みしだくとはどういう了見だ!!」
そこには顔を真っ赤にし胸元を手で押さえ、末代まで祟ってやる!ばかりに田中ちゃんを睨みつける東條さんがいた。
「揉みしだくなんて、大袈裟に言うなよ。千代ーちょっとばかし、スキンシップしただけじゃん!あと意外に可愛い声出すじゃ〜ん!」
それを聞いた東條さんの顔がさらに赤くなる。今まではピンクがかったレベルだが、今はリンゴやトマトよりもさらに深い赤だ。
「全然スキンシップの範囲じゃない!!あと可愛いとか言うな!」
今まで格好よく、キリリとした喋りから、少女が駄々をこねるような口調になる東條さん。それに面くらいながらも、さらに煽る田中ちゃん。そんな田中ちゃんに掴みかかる東條さんを見て、私は自然と笑みが溢れていた。
しかしそんな風に楽しくなればなるほど、大事なものが欠けた気持ち悪さに私は蝕まれていった。
今回も読んでいただきありがとうございます。更新頻度が遅いことにより迷惑をかけているかと思います。作者が言うべきことではありませんが、どうか気長にお待ち下さい。mm
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