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お前は誰だ(生き方を考える)  作者: 向井 立彦
ちょっと振り返ってみた
2/5

スーパーマンになりたいんだ

「え、なんで分かった」

今の思考はものの数秒間に全て行われたことで、そんな表には出ていなかったはず。

不思議に思うと同時に()()不安になる。

「区切り良いから不自然じゃねぇよ。渡した後に、お礼の後だから、物で人から好感度得ているように思われたら嫌だとか気付いて思うところは本当に面倒くさくて馬鹿らしい」

「はっきり言うね」

あぁ、嫌われたかな…。

「あ、言い方が悪かった。悪い、勘違いするなよ。1つの話が終わって区切り良いところで言ったんだから、不自然じゃない。それから、食べるか聞いた後に、自分がした行動を物で釣る人間みたいだ、失敗した。と思うような天然を悪い奴だとは思わない。物で友人を得ているような奴ではない。だって、言った後に気付いたんだから、下心無しじゃないか」

「っは、敵わないわ。うん、ほんと好き」

自分に上手く伝わらなかったことに気付いて、言い方を変えた友人。

フォローしつつ、自分でも不安に陥って気付けなかった。

また、忘れていた「食べるか?」と、「物で釣る人みたいだ」と思った思考の順番。

それこそ自分が物で釣って友人をつくっている人間ではないという証拠になると、確かな証拠を示して自分を不安から救ってくれた。

「中高生までは、人と話すしそれなりに周りと上手くやれているようでも、どこのグループにも属さず、いや、属せなかったんだろう。一人を寂しいと思うような、でも困ることないし気にしないときもあった。二人組をつくるとか、グループを作るって時はいつも一人残されて、あぁ、友達居ないんじゃないかな、いや、そもそも友達って何だ、とか考えた」

「つまり、今まで友達居なくて俺が初めてのお友達って事か」

「ばか、茶化すな。にやけんな」

「それならそうと、早く言えよ。俺、嬉しいわー 笑笑」

コイツの『初めての友達で嬉しい』はフリかどうかはともかく、ちゃんと友人が居る事を証明したい。

「いや、居るから。友達ちゃんと居るし遊びにも行くから」

別にコイツが初めて、ってのが嫌なわけじゃなくて証明をしたいだけ。

いや、そもそも友人が居る事を証明する意味も、居るから良い人、まともな人間、ってわけじゃないとは思うが。

「へー」

「はぁー。ほら、これ。花見に行った時の写真」

「おぉ」

「基本的にそうであっただけで、本当にちゃんと友人と呼べていつも共に行動していた人も居た。今は学校違うから、また1からなだけ」

「お前の友達の定義ってなによ」

「さぁ、ただ、今まで生きてきた中で、周囲も観察して、俺が思っている友人とは常に共にいる存在。移動教室とか。弁当とか。誕生祝いとか。まぁ、自分の付き合っている友人達とはまた違う付き合い方だ」

こいつの答えについては、一般的に見てみれば、言われた事は周囲の人々が言う「友人」という関係に当てはまっているし、そうだねと頷いたり納得出来る部分がある。

「皆友達とか言ってる偽善者とは違う。まぁ、本気で思っているバカも居るんだろうが、全ての人から好かれることは無理」

嘲笑うかの様に言う姿。

こいつの過去、今おかれている状況や立場を考えると、察するところはある。

それを理想として頑張って、傷付いて、何度知っても自分の口から事実を言っても、それでも誰からも嫌がられない様に…そう思って頑張っているんだよな。

「でも、お前は「良い子」を演じてそれを目指してるだろ」

「さぁ」

「演じてないなら、素直にすごいよ。そしてバカだ」

「すごいと言いながらバカというのか。尊敬しているのか、呆れているのか分からないね」

「悪いっ!尊敬はしてないわ 笑」

「そういう、ここでふざけたように装って明るく茶化すところ、そうやって暗いばかりにしない気遣い好きだよ」

「男に好きとか言われても嬉しくないわ」

「ふっ。いつか友情ではなく本当に愛の告白が欲しくなったらしてやっても良いぞ」

「ま、でも俺はお前みたいなバカは人として愛しいよ」

「バカなのは自覚してる。だが、男に好かれる行動をした覚えはない 笑」

「誰かのため、行動してしまうこと、ついフォローをしてしまうこと、別に悪いことじゃない。ただ、お前の陰の活躍なんて所詮「陰」で、誰にも礼なんか言われない。道理に沿ってやったことや、皆のことを考えて発言して、最悪の事態を免れた事だってある。正しいと思うことをしているし、実際正しい。ただ、正しいだけじゃ周囲に潰される。お前がしてきたことで、自分がフォローした相手に嵌められてクラスから省かれた事だって噂で聞いて知ってる」

「そんな噂が流れてたのか」

「正直さ、悔しかったよ。お前が頑張ったことを仇で返すしか出来ない奴らが居ること」

ズボンの太腿辺りの布を握りしめる。

理由はない、ただ握りしめやすかった、何のためらいも無く握れる場所だっただけ。

「いつからそんなに熱い奴になったんだよ 笑」

スボンを握りしめる姿に、友人が本気で悔しがってくれていることが分かる。

俺の為にそんなにまで怒りを感じてくれるのか、それだけで泣きそうだバカ。

「お前は白すぎるんだよ。ま、変われなんて言わないさ。それがお前なんだろうし、変わりたきゃ勝手に変わるだろ。お前めんどくさいから」

「良いのか、そんなこと言って」

「何が」

「お前の知ってるように面倒くさい男だから、いろいろと考えて変わるかもしれないぞ」

「決めるのはお前の意思だろ。それにお前、忘れっぽいし、いいかげんなところあるから、、変わった方が良いのか、それともこれが自分だから変えたら自分がなくなる、アイデンティがとか気にしつつ面倒になって、塡まる前に寝るか何かして朝起きたら忘れるだろ 笑」

「以外と軽く見られてんのな 笑」

分かられすぎている。

この友人に自分はどれだけ理解されているのだろうか。

いままで、こんなにも自分を理解してくれた人は居ただろうか。

いや、居ないな。

こうやって、全部言葉にして、話をしながら自分の行動に対してどれだけ理解していると伝えてくれた友人は居なかった。

伝えてくれないって言い方はおかしいかもしれないな。

相手も自分のことを思って言いにくかったり、思い出さないように気を付けてくれた可能性もある。

だが、分かられているからこそ、忘れっぽいから忘れてしまうだろうという、事実を混ぜた軽口に笑ってしまうし、わざと嫌みを言ってこちらからも軽口を言いたくなってしまう。

「違うのか」

「いや、大体合ってる。だが、深みに塡まって抜け出せないこともあるのが自分だ。本当に面倒くさい」

以前、親類に「正義の塊」「白い」「少しは黒くなきゃ」と言われたことはある。

が、それでも今も変わっていないんだから、変わらないんだろうな、と思う。

「笑笑」

吐き捨てるように自分のことを面倒くさいと言うので笑ってしまった。

「ま、自分の根本にあるのが、「良い子」「スーパーマン」だからな 笑」

格好いいだろう、と自信たっぷりに笑って、自分に自信と、相手には笑いを誘う。

「お前のアクション映画好きはそこからか 笑笑」

「おっ、ガキっぽいとは言わないのか」

「スーパーマン目指してんなら、悪いことはしないんだから良いんじゃねぇの」

「軽いな」

「でも、だから良いんだろ」

「あぁ」

こうやって軽く返されると、こっちも軽く明るくなれるから、暗い話をしていても話しながら深みに嵌まってしまわないから良い助けになる。


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