表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

千年木の判定

「いいかい?いち、にの、さん、で前足を入れて宣言するんだ。それでいいね?」

アキコは、きっぱりと言い切り、ヒデキは、それに答えます。

「おうよ、望むところだ。」


いち・にの・さん!


「私、アキコは、捕まえた虫の数は芋虫4匹です。」


「俺、ヒデキは、ヤゴ3匹とバッタを3匹とりました。」


二人は大きな声で、同時に叫びました。


二人とも、自分の言葉を信じていますが、千年木の根が、間違って締め付けはしないかと、気が気でありません。


1秒、2秒と時が進むと、心臓がドキドキして、耳が下がってきます。


が、何もおこりません。

相手の悲鳴も聞こえては来ません。


アキコとヒデキは、おそるおそる、お互いの顔を見つめました。


「う、嘘じゃなかったのかい?」

アキコが、不安そうにヒデキに聞きました。


「俺は、恋愛以外で、雌に嘘はつかないアライグマだぜ。」

ヒデキは、前足を根に突っ込んだまま、魅力的なウインクをアキコに飛ばして、アキコをあきれさせました。


と、言うことは。


アキコとヒデキは、一緒にゴローの前にかけて行きました。


「ゴロー、アンタだね!1匹も虫をとらなかったのかい!どうなんだいっ。」

無実のヒデキを疑っていたアキコは、真犯人を見つけた刑事のようにゴローに詰め寄りました。


「え?おれ?俺もちゃんと採ったよ。バッタを3匹。アキコさんが、それでいいって言ったでしょ?」

真犯人にされたゴローが、今度は不機嫌になりましたが、なんだか、頭の中で、何がが気になります。


「本当かい?なら、バッタはアンタの腕から逃げだしたのかね。」

アキコは、不思議そうに首をかしげました。


コマドリのヒロミは、みんなの様子を見つめていましたが、やがて、艶やかなゴローの胸毛にうごめくモノを見つけて叫びました。


「見つけましたよ。ゴローさん、皆さん、ありがとう。」

ヒロミはそういって、ゴローの胸毛の辺りにとまり、

毛に絡まるバッタを器用に1匹、2匹、3匹と飲み込みました。


「そうだ!俺、そこにしまったんだ。忘れていたよ。」

ゴローは、照れ笑いをうかべ、アキコは不服そうにゴローを前足で軽く蹴りました。


「全く、人騒がせなんだから。」

アキコは、そういって草原に伏せて休みました。


「まあ、そんなにショゲルなよ。そんな風に伏せてると、せっかくの美人が台無しだ。」

ヒデキは、優しくアキコを気遣いました。

「すまないねぇ。私と来たら、短気で。どうして、ゴローの事を疑わなかったのか!ああっ。」

アキコは前足で、自分の頭を押さえ込んでしまいました。


それを見ていたコマドリのヒロミが、アキコの背中に止まりました。


「アキコさん。みなさん、本当にありがとう。お礼に一曲歌います。」


ヒーン、カラカラ。


♪ここは素敵な、夏の森。

ゆかいな仲間が集まって

喧嘩もするけど、仲良しさ。




ヒロミの澄んだ歌声を聞きながら、ゴローがアキコの前に座り込みました。


「ごめんね、アキコさん。」

「もう、いいんだよ。」


ゴローとアキコも仲直りしたようです。


風の精も、ヒロミの歌に合わせて踊ります。


本格的な夏は、もうすぐそこです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ