【農民】の家族と旅人
ユーナは洞窟内で倒れていた女性を村へ連れて帰った。
「へぇ〜本当にあるんだ。前に来た時は村なんかなかったんだけど・・・」
ユーナは驚いた。
村が出来たのは30年位前だと聞いている 。
隣にいるお姉さんはどう見ても20代前半だったからである。
「ユーナちゃん。その方は誰だい?」
畑仕事をしていた老人がユーナに尋ねた。
「旅をしている方です。宿がないとの事で私の家まで案内する途中です。」
「そうかい。旅の方、何もないところですが、ゆっくりなさるといい。」
と言って老人は畑仕事に戻った。
「ここが私の家です。両親を呼んできますね。」
「その必要はない。お帰りなさい、ユーナ。隣の方は?」
「お帰り、ユーナちゃん。」
と玄関から両親が出てきた。
恐らくは【戦士】のスキル〈探知〉だろう。
「ただ今戻りました。お父様、お母様。こちらは、旅の方です。街道で出会いました。」
「はじめまして。ドゥと申します。」
さっき自分でつけてもらった名である。
「はじめまして。私の名前はユナイト。こっちは妻のユリで職業は共に【農民】です。明日、娘の誕生日と村の祭りがありましてな。バタバタしてますがゆっくりしていってください。ユーナ、夕食は作ってあるから旅の方と食べなさい。では失礼します。」
と言って両親は村の広場の方に行ってしまった。
ドゥさんに家に上がってもらい、一緒に夕食を食べている時、
「ユーナちゃん、明日誕生日だってユナイトさんが言ってたけど幾つなの?」
と聞かれた。
「明日で16歳です。でも、何の職業に就いたらいいのかわからなくて・・・。特にやりたい事もありませんし・・・。」
「もしよければ、やりたい事が決まるまで私の【見習い】にならない?」
【見習い】は弟子になり職を極めていく事ができる。
【見習い】のメリットは下級職を飛ばして上級職に就けるという事だ。
つまりドゥはユーナを何かの上級職の【見習い】にするという事なのだ。
「それは何の【見習い】ですか?」
ドゥは笑顔で返した。
「それは、【職業神】よ!」
え?今何って言ったの?
ユーナは理解できなかった。
目の前の女性は自分の職業を【職業神】と言ったのだ。
「え?【便利屋】じゃないんですか?」
「まぁ、旅をしながら色々な事をしてたからそう語っただけ。【便利屋】の職歴があるから、あながち嘘ではないんだけどね。さて、どうするの?」
職業神とはこの世界にある職業を管理する神様でどこの集落にも御神体がある程有名な神様である。
もし、仮にそれが本当なら神様が目の前にいるのだ。
「ちょ、ちょっと待って!なんで僕にそんな大切な事を?」
ユーナはテンパり過ぎて素が出てしまった。
普段は両親の立場や歳上の老人に囲まれて生活をしているので、良家のお嬢様みたいにしているだけなのだ。
「あら?そっちが素なのね。理由は成りたいものが無さそうだったからかな?普通の子なら親の家業を継いだり、2つないし3つ位まで成りたいものがあったりするんだけど・・・。あ、夕食ご馳走さま。」
と食器をシンクまで運びながら言った。
確かにユーナには成りたいものが無かった。
幼い頃は親の跡を継ぎ【農民】として生きるつもりだったが、両親はユーナに
「【農民】にはさせない。家業を継がせない。」「就きたい職業にしなさい。」と日頃から言っていたのだ。
「まぁ、一晩悩むといいわ。」
と言いながら食器を洗っている。
「朝からお祭りをやるんでしょ?今日はもう寝ましょう。ユーナちゃん。」