第7話 無表情アルビノロリとお出かけするやつ(画像あり
「九郎さま。大変ぶしつけで申し訳ありませんが、お願いがあります」
「んー……なんだ?」
休日の読書は最高だぜ、という感じでインドア生活を堪能していると、同居中のロリが珍しく「お願い」をしてきた。居候の身分ということもあり、稀にドン引きするほど献身的な提案をすることはあったが、こうしてお願い」をされるのは初めてのことだ。
珍しいことに気を引かれ、本にしおりを挟んで閉じて、聞く姿勢を取る。
「外に出たいです。具体的には、ショッピングがしたいのですが」
「ちょっと待ってくれ」
「難しい注文なのはわかってますが、そのうえでお願いします。お礼に何でも言うことを聞きますから」
なんでも、と言われても。今以上に何かをしてもらおうという考えはない。待ってくれと言ったのも、お願いを断ったわけじゃなくて言葉通りの意味だ。ニホンゴッテムズカシイ。
「外に出すのはいいんだ。ずっと家の中ってのも不健康だし。ただしいくつか問題があって、それを解決するために、考える時間をくれ」
「わかりました。何分ほど?」
「……五分」
「コーヒーでも淹れましょうか」
「ありがとう」
彼女を連れ出すときに起きるであろう問題を考えてみよう。まず彼女の容姿だ。十人いれば九人が美少女と答える容姿、外国人+アルビノ+ロリ。外を連れて歩けば超目立つ。下手すれば通報モノ、そうでなくても注目はされるだろう。近場で歩けばご近所でよくない噂が流れるのは避けられない。
では、どうすればそれぞれの問題を解決できるだろう。
容姿はごまかせばいい。髪の色が問題? 染めるかウィッグを被ればいい。じゃあ目の色は? カラーコンタクトやサングラスという便利なものがあるじゃないか。肌の色は? メイクを使おう。よし解決。
近所の噂は? 近場を避ければいいじゃない。マイカーもあることだ、町を出るまで荷台に隠れていてもらおう。
最後に本人の健康について。アルビノというのは日光に弱い……が、最近の日焼け止めクリームは優秀すぎるほど優秀と聞く。
「コーヒーお待たせしました」
「ありがとう。問題は解決できそうだよ。今すぐに、ではないけど一週間以内には」
「ありがとうございます」
「どういたしまして。ところで、髪は染めるかウィッグかどっちがいい。カラーコンタクトとサングラスは……」
そんなこんなで、化粧品とウィッグ(女性用かつら)、それからカラーコンタクト、日焼け止め、ついでに生理用品もamaz〇nでまとめ買い。注文内容を誰かに聞かれたら女装でもするつもりかと笑われそうだな、そんな心配は万に一つもないだろうが。
そんなわけで一週間後。色々と買ったら諭吉さんが何枚か飛んで行ったが、まあいいだろう。他には飯くらいしか使い道もないし……しかもそんなにこだわりがあるわけでもないし。言ってて悲しくなってきた。
「ありがとうございます」
それも美少女に礼を言われれば吹いて飛ぶ悲しみだ……キャバ嬢に貢ぐタイプだわ俺、絶対行かないようにしよう。女遊びで破産なんて外聞が悪すぎる。
ともかく、一通りの変装道具を装備した彼女を上から下まで眺めてみる。その感想は。
「別人だな」
「ですか」
「完璧だ」
そりゃそうだ。髪の色と目の色が変わって、肌に化粧で血色を足して、そこへ眼鏡も追加すれば印象は全く変わる。服装はブラウスとカーディガン、下はグレーのジーンズとできる限り目立たない恰好をさせて、日焼け止めクリームも濡らせた。俺も伊達メガネと帽子とで印象を変えて。これで完璧。
「財布と携帯は……よし。じゃあ出よう」
玄関を出て、周囲に人影がないかを確認。ご近所さんの目は大丈夫だな、よし。車の荷台を開けて、彼女に入ってもらう。
「町を出るまでは荷台で我慢してくれ」
「大丈夫です。窮屈には慣れていますし、私のわがままで迷惑をかけているんです。文句は言えません」
「すまんな」
できるだけ優しく荷台を閉じたら、運転席に乗り込んでエンジンをかける。懐の都合で買ったワゴンだが、まさかこんな形で感謝することになるとは。前の事故で潰れたセダンだともっと窮屈な思いをさせるところだった。