第4話 無表情アルビノロリと朝飯食うやつ
遅くなったけどゆるしてね!かわいい女の子との同棲生活が始まるよ!
夢を見ていた。夢を見ている。長い長い、終わらない悪夢。夢の中で死んで夢の中で目覚めて夢の中で死んで夢の中で目覚めて。痛いのに、苦しいのに、終わらなくて。数えきれないほど繰り返してから、ようやく最後の記憶にたどり着いた。
最期は、優しい人に、殺してもらったんだ。
おはようございます。今日もすがすがしい朝がやってまいりました。
「どこがすがすがしい朝だよクソ」
朝のニュース番組のセリフに嫌味を返す。ああ。テレビには何の罪もない、ただこっちの事情があるだけだ。
悪態をついた理由は寝不足でイライラしてるから。
寝不足の原因は、ベッドで穏やかな寝息を立てている美少女。草木も眠るウシミツアワーに起こされて、貞操の危機をなんとか脱したはいいものの、下半身に彼女の柔らかい感触と、熱と、重みが残っているような気がして。トイレで思い出しながら自己消化したが、それでも興奮は冷め切らなかったのだ。
おかげで道を半歩踏み外したぞ、魔性のロリめ。
眠り姫に念を送って、飯の準備にとりかかる。寝不足でも、今日は仕事だ。学生じゃないんだから「眠いから休みます」なんて甘いことは言えないし、言わない。冷蔵庫の中身を見て、朝食のメニューを考える。
今日はいつもより一時間くらい早く飯の支度をしているし、腹いせに少し凝ったものを作ってもいいだろう。
『本日の朝食 塩パンのエッグサンド』
材料(1人前)
卵 1個
有塩バター 適量
レタス 好きなだけ(多すぎると食べずらい)
塩コショウ 少々
マヨネーズ 好きなだけ
塩パン 1個
作業手順
熱したフライパンにバターを入れて溶かし、塩コショウと合わせた溶き卵を入れてかきまぜる。塩加減と火の通し加減はお好みで。
塩パンは真っ二つにしない程度に切れ目を入れてトーストする。
開いた塩パンにレタスと炒めた卵を入れ、マヨネーズをかけて完成です。ちなみに今日作ったのは二人分です。
同時進行で紅茶も淹れておく。ちょっとだけこだわって、ティーパックは使わずに、茶葉を精密スケールで量って。専用の丸いガラスポットまで買ってある(ちなみに3代目)。美味しい紅茶の淹れ方のルールに則って淹れているのだ。一杯分に使う茶葉は2.6g、湯150ml、蒸らし間は3分。これが自分が一番おいしいと思う分量と時間。ちなみに今日淹れたのは二人分です。
テーブルに紅茶とサンドイッチを並べると、バターの香りに釣られて眠り姫が起きたようだ。瞼を擦りながら、肌の上にシャツ一枚だけ着てふらふらと卓の前にやってきた。裾から覗く真っ白な太ももと、うっすら透ける胸の……オマエハナニモミテイナイ。イイネ?
「……あれ。ここは?」
「寝ぼけてるなら目を覚ませー」
「……ここまで世話になってしまって、よいのでしょうか。本当に、何かお返しを」
「いいから食べろ」
「はい」
いただきます、と言ってから食事にかかる。ジューシーなパンと、フレッシュなレタス、バターの香りが効いた卵、それからマヨネーズが合わさって……食レポの心得はないので、とても美味しいとだけ。パンは近くの、海外の人が経営してるパン屋さん、名前は確か……ロバートだ。ロバート・フィッシュさん。
目の前の少女も、パンを一口食べ始めるとおとなしくなって。
「……っ、ぅ」
なぜか泣かれた。こんな簡単なモノを食って泣かれるなんて思わなかった。以前はどれだけひどいモノを食わされてたんだ。
「すみません。昔を思い出してしまいました」
「どんなもん食ってたんだ」
「味だけが普通の食事と、吐しゃ物のような味の液体食糧を」
味だけが、とわざわざ言うあたり材料はヘンナモノだったんだろう。彼女の話を信じるなら、それこそ人肉料理とか? ハハ、まさか。それ以外はゲロってのも冗談だと思いたい。
そんな感じで朝食は終了。身支度を済ませて、時間も余ったので昼飯を作り置きしておいて。いざ出勤の時。
「そうだ……これから仕事に行くが、守ってもらいたいことがいくつかある。帰ってくるまで外には出ない。電話に出ない。人が来てもドアを開けない。暇なら……読めるなら本を読めばいい。パソコンを使ってもいい、パスワードはかけてないし、ゲームもいくつか入れてあるから好きにしろ」
エロ方面のゲームや動画も入っているが……まあいいだろう。
「じゃあ、行ってきます」
「……行ってらっしゃい?」