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女子校の男子君と男子校の女子ちゃん

作者: ゆいらしい

視点が女の子・男の子で交互になります。



「アキラ君さぁー…言ったよね?もう喧嘩しないってパパと約束したよね?」


ここは夏風学園理事長室。

喧嘩で腫れ上がった顔で仏頂面を決め込み夏風アキラは理事長…父の夏風秋次郎なつかぜあきじろうに立たされていた。


「もーパパ怒ったからね。パパもいくら可愛い息子相手でも怒る時は怒るからね。」


ーと親父が怒っていたのはつい最近ー


その時から嫌な予感はしていた。

しかし、まさか…






「な、なんで私が男子高校に行かなきゃ行けないのよ?しかも男装ですって!!?」


私、春山冬子はるやまふゆこは春山学園理事長室に呼ばれていた。呼ばれた部屋に入ると2人の男性がいた。…珍しい。春山学園は女子校だ。それもお客様ですら男性の方は珍しい伝統ある女子校。彼らを不躾にも眺めていると父である春山冬樹はるやまふゆきは咳払いをする。「物は相談なんだけどね?」と言葉を続けた。


「冬ちゃんさ、男子高校に通ってみない?」


父はボケたのだろうか?まだ若いのに可哀想だ…。


「今ね、そちらの彼、僕の友人の夏風秋次郎君が経営する夏風学園の生徒と交換留学をしないか話をしていたんだ。」


でもさ?ウチは女子校。夏風学園は男子校…性別に問題があるわけよ。あぁ、その問題は解決したよ。そう、だったらお互い女装・男装すれば良いんじゃないか、って所に治ったよ。だからさ、冬ちゃん暫く男子校に通ってきてよ。


「ふっつつつざっけないでよ!!!」

なんで私が男子校?なんで男装までしなきゃいけないの!父の襟首を掴んで揺する。目の端には、叫ぶ私に同調する様に夏風学園の理事長さんの隣にいる男の子は縦に勢いよく首を振る姿が見える。







春山理事長の娘らしい女は凄まじい勢いで理事長にパンチを食らわす。日頃喧嘩に慣れたオレから見ても素晴らしいパンチだった。そして、春山理事長は倒れるべくして倒れた。



これにより話し合いは終わった。いや、既に決定事項であったことから話し合いの場では無い。しかし、春山理事長が気絶してしまった今これ以上に文句を言うことも出来ない。


ハっと、女はオレに向かって申し訳無さそうな顔をした。おそらく、交換留学の相手方がオレだと気がついたのだろう。


オレは「いいんだ。気にしないでくれ。」と言うように首を横に振った…。更に申し訳無さそうな表情を浮かべる彼女に罪悪感が募る。


何故ならば、この交換留学の話はオレの親父がオレを要因として持ちかけたものだったからだ…。



オレ、夏風アキラは不良グループ『春夏秋冬』のリーダーだ。なんとなく入ったグループだが先代にリーダーを託された。そんなオレはあちこちのグループから喧嘩を売られは買う日々を過ごしていた。


以前から親父に「喧嘩したらダメだよ、メッ!アキラ君の可愛い顔が傷ついちゃう。」と怒ってるんだか怒ってないんだかわからない態度で窘め続けていた。そして、先日…オレは喧嘩で顔に怪我をした。それを見た親父の慌てぶりにドン引きもした。


親父がうるさいから顔にだけは傷を付けないように注意していたがやってしまったことは仕方ない。次からもっと注意しようと思っていた矢先だった…「アキラ君、ほら行くよ?」…親父がオレを連れて夏風学園のすぐ隣にある春山学園に入った。


オレは色んな意味でドキドキした。別に女に飢えてる訳ではない。


【春夏秋冬のリーダー、女子校に潜入して逮捕…】


そんな記事が頭をよぎる。恐ろしい…。それだけはリーダーとして漢として阻止しなければならない。


幸い人に見られることなく目的地らしい理事長室に辿り着くことが出来た。そして、女が現れた。オレも口出しをしたかったが隣に座る親父の「パパとの約束を破ったのはダーレ?」という無言の圧力に押されて何も言うことは出来なかった。


そんなこんなで


オレには一切責める権利が無い。あの女はオレに巻き込まれた様なものなのだ。





そうして、オレは体に合わないセーラー服を着ることとなった…





私の体に学ランは少し重い。でも慣れてきた。それもそうだろう国内留学が始まって1週間は経った。


「お前…女みたいな顔してるな。」


「………だろ?」


と周囲から可愛い系男子として可愛がられ友達も増えた。「おい、ばっか。あんま可愛い可愛い言い過ぎるんじゃねーよ。照れるだろ。」と適度に言いつつ、内心には有難う!もっと言って!!とテンションを昂ぶらせている。


女子校では可愛いよりかっこいい系女子の方がウケるのだ。しかも私より可愛い子もいっぱいいるからこの扱いはなかなかに新鮮だ。


アキラ君とは毎日会ってお互い情報交換をしている。留学を終えた後、元の生活に馴染みやすくするための対策だ。今学校で流行っていること今日は誰とどんな話をしたのかをお互いに語っていく。アキラ君はかっこいい系女子としてすぐに人気者になったらしい。


ウチの女子校は、ほのぼのおっとりとしたお嬢様が行く学校だ。だから最初はアキラ君みたいに大きな鍛えられている男が学校に来たら泣く子が出るんじゃないかと思った。アキラ君の姿はガッチリした男がセーラー服を罰ゲームか何かで着せられているような似合わなさだ。初めて見た時吹き出して笑った。睨まれたけど。…しかし、そこはおっとりパワー。「あらぁ、アキラ様はとても筋肉が発達していらっしゃいますのね。何かスポーツでもなさっているのですか?」とアキラ君を女子としての認識を示したらしい。誰も男が女装をしているという答えに辿り着かないクラスメートに若干の恐怖を抱きつつ生まれ持った面倒見の良さでクラスの人気者の地位を確立していった。…私も自分のクラスメートが心配になった。まさかそこまでおっとりだったとは…


まぁ、なんにせよ。割と満足しながら学校生活を続けていた。


ーこの日まではー


放課後、私は体育館倉庫に呼ばれた。


「お前さぁ、夏風と仲が良いんだって?」


5名の男子に囲まれた。

しかも相手は殺気を帯びている。そして、武器を持っていた…




オレと冬子は、毎日会っている。そしてお互いのことを話す。グループの奴らや学校の奴ら、女子校のクラスメート達と違いオレを極端に恐れていたり敬っていたりする様子とは違い、冬子はオレと同じ目線でいる。勿論、回りが鬱陶しいという訳じゃない。尊敬して持ち上げてくれることは嬉しいと感じる。…それ以上に自然体で接してくれる冬子により親近感を抱いた。



「…今日、冬子来るの遅いな…」


どうやら思っていた以上に冬子との時間を楽しみにしていたらしい。待てども来ない。その時、携帯から音が響き渡った。


「あ、兄貴!大変です!!」


冬子からかと期待したオレはその分不機嫌になった。「緊急時以外に連絡すんなったよな?」思っていた以上に低い声が出た。


電話をかけた主である亮太は少し尻込みながらも「緊急なんです!」と声をあらげた。


ー兄貴が様子を見てやって欲しいと言っていた春山冬って奴。あいつ、五十嵐に呼ばれてついて行っちゃったんです。…もちろん止めましたよ!でも、大丈夫だよって…ー


五十嵐はオレ達『春夏秋冬』と敵対しているグループ『常夏鬼熱』のリーダーだ。…まさか、オレが冬子と関係していることに気が付いたのか…と思考する。


………俺は働き始めた思考を途中でやめていた。気が付けば荒い息のまま学校に来ていた。


学校には来たは良いものの何処だ?何処に冬子はいる?


「ぎゃあああああああああああ!!」


悲鳴が聞こえた。すぐさま悲鳴が聞こえた方へ向かう。


そこで見た者は…



五十嵐含めた5人の男がボロ雑巾の様に横たわった姿だった。





「あ…しまった。」


誰だかわからないけど、武器で一斉に襲われそうになった私は反撃をした。


あんまり良いことでは無いけれど、私は喧嘩が得意だ。私には2人兄がいる。兄は私を弟の様に可愛がった。年齢の近い兄2人に歳の離れた女の子…兄は女の子をどう扱って良いのかわからなかったのだろう。その結果、私は妹としての扱いを受けなかった。その結果出来たのは喧嘩の強い男みたいな女の子。


しかし、父が経営してるのは男子校ではなく共学でも無い…女子校だ。父は子煩悩が故に自分の子供を自分の学園に入れたいと常々思っていた。そして、私は待望の春山家初の女の子…。私は父に押し切られる形で女子校に入学した。


学校は好きだよ。友達も沢山出来たし。

お作法もお琴の授業だって楽しいよ。

聞いて、挨拶はね「御機嫌よう」って言うのが普通なのよ?本当のお嬢様になった気分だわ!いや、私も元からお嬢様っちゃお嬢様なんだけどね。


なんにせよ、喧嘩は得意だ。男が5人いようが何人かいようが余裕で倒せる。


…ただ、他校で問題を起こすのは宜しく無いだろう……。その問題を理事長の息子の肩書きを持つアキラ君に見られて私は小さく舌打ちをした。





思い当たることは1つあった。

オレと冬子が初めて会った日だ。冬子は春山理事長をワンパン一発KOしていた。あの時はオレも隣の威圧に疲れていて気がつかなかったがアレは素人のパンチじゃない…喧嘩慣れした者特有のパンチだ。


「えーと、冬子…さん?」


思わずさん付けしてしまったオレに冬子は困った様に笑う。


「あー…ごめんね?」


ーとりあえず、逃げよっかー

そう言って冬子はオレの手を掴み走った。


走ってる最中の冬子は悪戯を楽しむ男の子の様でオレもまぁいいやと思って笑った。







結局あの問題はどうなったかって?…さぁ?知らね。だって、オレ未だに夏風学園に通ってるんだもん。でもって、冬子も春山学園に通ってる。男子が女子校、女子が男子校の変な状態である。


あの後、わざわざ連絡してくれた亮太にお礼を言う為に冬子と2人で会ったらあいつが交換留学する原因となったオレの話をうっかりとこぼしやがった。それを聞いた冬子が、ニッコリと怒った。…と怒りつつもこの男子校生活を気に入った冬子はもうすぐで期間終了になる予定だった交換留学の期間を延期した。


冬子の親父は、冬子を無理に春山学園に入れたことを後悔していたらしい。冬子の提案をすぐに受け入れた。一方、オレの親父は親父で「アキラ君が喧嘩しなくて良い環境だしまぁ良いかー」とお気楽である。


あ、オレ?

オレはまぁ、グループの奴らのこととか気になることはあるっちゃあるけど…楽しそうな冬子を見ているとオレも親父に似てまぁなんとかなるか、なんて思ってしまう…。


そもそも最近グループうんぬんどころか喧嘩自体急激に少なくなっているらしい…なんでも最近馬鹿みたいに強い奴がいてそいつが喧嘩を止めにやってくるらしい。


(亮太によると、丁度冬子が転校して来た辺りから…)


流石にそれは無いよな?きっと…自分の思考を頭の隅に置き、


オレは今日もこれから冬子に会いに行く。








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