静謐 瑣末 (2篇)
静謐
白に近い満月がすーっと
針葉樹林山の上に浮かび上がる
空気を震わせることなく
大地を天を揺るがすこともなく
星たちは姿を消す
私の頭の中が
冴え冴えと白い月明かりで満たされる
心にたまっていた重かった何かが
すとんと落ちていった
満ちた潮が突然引き潮に変わるように
静謐の蓋を開ける
心が静かに横たわっている
全ての音が蓋をしたガラスのビンの中で
キラキラと輝いている
深い深い宇宙が手招きをする
*** *** ***
瑣末
氷がコトリと音を立てて
ガラスのコップの中で崩れた
汗をかいたコップがテーブルに
丸い輪を描いた
指先で触れると糸じりの痕が
自分の涙のようで
拭き取って湿ったナプキンの重さが
なんだか私を悲しくさせた