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希望の国のアノテロティス  作者: 麻埜ぼったー
2/6

しろ


――いま、私は白い部屋の中にいる。

そこそこ新しい、小規模な精神病院。もしくは施設と言った方が正しいのかもしれない。

その病室のひとつ。それが今の私の城。白い白い、私の城。



「城」とは言ってみたものの、自由がきくことなんて何もない。せめてもの救いはここが個室であることか…。

小規模とはいえそれなりの大きさの建物の割に患者が少ないので、この病院の患者は皆個室らしい。




――――ここは嫌。自分が研究されているように感じるから。

自分より自分のことを隅々まで知られているなんて、……なんて、なんていたたまれないのだろう。

初めてお医者様と話した時、まるで自分が人間でなくなったかのように感じた。その記憶は未だ、頭の端に粘く 鮮明にこびりついている。



私はなぜここにいるのだろう。

無理に思い出す必要はないのだとお医者様も看護師さんも言っていたけど、そう言われると逆に気になってくるのが人の性というものじゃないだろうか。





ここに来て早くも一週間が経つ。

最初の二日はこの白い白い城に閉じこもって、偶に来るお医者様たちと話をして過ごしていたのだけど、

三日目からはこの病院の方針で一日の半分、交流室という大きな部屋に押し込められるようになった。


そこでは患者同士が自由に交流を図り、いずれ社会に出るときのためのコミュニケーション能力を鍛えるのだとか……同年代の人間と会話すること自体が治療に効果があるのだそうだ。

もちろんその行為全てが強制されるわけではなく、部屋にいさえすれば本人の過ごしたいように過ごすことができる。

中には人と話さず、ひたすら本を読んでいる少年や楽しそうに幻聴と会話する少女、そんな人たちもいた。




そう、この交流室に入って初めて気づいたのだけど、ここは若い人のための精神病院らしい。

精神病院というと社会人…大人ばかりというイメージがあったから、とても驚いたのを覚えている。


基本的に「統合失調症」という若い人がなる病気の患者が中心に入院しているそうだ。

鬱病も、最近は老人に多いけど本来若い人のなる病気だったのだって。




私の病気は「短期反応精神病」というのもので、強いストレスが原因なのだとお医者様がおっしゃっていた。

その病気は統合失調症の症状によく似た症状が出てくるもので、約一ヶ月で完治するらしい。


統合失調症の症状は幻聴・幻覚・妄想知覚・妄想着想・作為体験…あとは何だったかしら。

正直聞いても幻聴や幻覚くらいしかよくわからなかった。



今のところ幻聴とかはないと思うけど…それらの症状は自覚できるようなものではないらしいから、不安。

自分が何かおかしいことをしていてもわからない、というのがとても怖い。


でもこれは限定された時間の中のもの。あと二週間耐えれば私はこの白い白い拘束から自由になれるの。

他の患者とは違う。終わりの見えない恐怖に縛られない。




――ああ早くこの不快な白を壊したい――



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