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第3回 白虎の渓谷だった!!

「全くもぉー。早とちりですよー」


 姫、そう呼ばれた女性が、銃を構えていた男を叱り付ける。

 まるでペットか何かを叱る様に、彼女は叱っていた。


「は、はぁ……すみません……。ただ、見知らぬ者が居たので、つい……」


 それが、当然の反応だと、一馬は思う。

 一方で、彼女の非常識的な認識に助けられたと、安堵する。

 きっと彼女が彼と同じ認識を持っていれば、今頃一馬は投獄、もしくは射殺されている可能性があっただろう。

 ホッと胸を撫で下ろし、脱力する一馬は極度の緊張から解き放たれ、思わず腰を抜かした。



 それから、一馬はこの世界についての説明を受けた。

 ここは、風の谷、白虎の渓谷と呼ばれている。

 切り立った崖と崖の合間にこの町は存在する。そして、この谷に時折吹き抜ける突風が、白虎の吐息と言われ、この風が町へと降りかかる災いを吹き払うと言う。

 切り立った崖と崖の合間に暮らし、陽の当たらない不便な生活をしているのか、と一馬は思ったが、そうでもないらしい。

 どうやら、この世界は一馬の住む世界よりも大分、技術、文明が栄えている。と、彼女は胸を張り答えていた。

 姫、と呼ばれていた彼女は、キャル・クラン。実際にお姫様で、彼女が現在はこの白虎の渓谷を治めている。

 そして、後からこの部屋に入ってきた奇天烈な髪型をした男は、彼女の付き人でオールド。幼い頃にキャルの父に拾われた為、姓はないとの事だった。

 どうやら、一馬がこの世界に来る事は、大分前から分かっていたと言う。これも、科学力の進んだこの世界だからこそ、知りえた情報で、ここでは次元の扉――あの光り輝くマンホール型の魔法陣――の研究がされている。

 元々、異世界が存在する事は、この世界では解明されている為、現在はあの魔法陣の研究に辿り着いたようだ。

 その話を聞き、一馬はようやく、この世界が自分の居た世界よりも進んだ文明なのだと、実感した。


「まぁ、そんなわけで、私はあの次元の扉――いえ、魔法陣について、詳しく知りたいと思っているんです!」


 話を終えたキャルが、目を輝かせ一馬を真っ直ぐに見つめる。

 期待に満ち溢れたその眼差しに、一馬はただただ苦笑していた。残念ながらその期待には応えられないと、心の中で思う一馬に対し、キャルは胸を抱くように腕を組むと、視線を上げる。


「はうぅぅーっ。いいですよねー。異世界トリップ。私、幼い頃から憧れていたんです。いつか、自分の手で異世界に繋がる扉を作り出すんだって」

「あぁ……えっと……」


 キャルの言葉に、一馬は小声でそう呟き、目を細める。

 言い出しにくい。魔法陣について、何も知らないと言う事実を。

 実際、キャルの勘違いなのだ。彼女は、一馬が自分で異世界への扉を開き、やってきたと思い込んでいる。だが、実際は突然現れた魔法陣が無理矢理一馬を異世界へと連れて来ている、と言う方が正しい。

 その為、原理は分からないし、どうしてこの様な状況に陥っているのか、一馬自身が一番知りたい所だった。


「私のデータが正しければ、あなたは何度も異世界へと渡っていますよね」


 キャルがそう言いながらタッチパネル式のボードを操作する。そのモニターには幾つかの丸い玉が描かれ、一定の周波数が波状に広がっていた。


「コチラが、あなたの世界。これを中心に、更に別の世界が円を描いている。そんな構図ですね」


 中心に描かれた緑色の球体を指差すキャルが、ニコッと一馬に微笑みかける。

 表情を引きつらせる一馬は、静かにモニターへと視線を移した。

 すると、彼女は自信満々に自分の考えを説明する。

 緑の球体の上の方には赤い球体が描かれ、キャルがその球体を指で二度叩くと、その情報が事細かにモニターへと映る。


“異世界B。

 異世界Aと初めて次元の扉が開いた世界。

 扉が開いた回数二回。

 周波数の乱れがある事から、頻繁に連絡を取り合っているものだと思える”


 などと、キャルはまとめていた。もちろん、詳細はもっと細かいが、一馬が理解出来たのはこの程度の事だった。

 キャルは他の異世界にも興味があるらしく、


「この異世界Bは、どんな世界だったか教えてくれませんか?」


 と、目を輝かせていた。その為、一馬は一応、火の国について説明した。

 守護聖霊と呼ばれる朱雀が存在する事、現在は鬼によって苦しめられている事、召喚士と呼ばれる聖霊を扱う者がおり、彼女によって自分が呼び出されたと言う事も、ちゃんと説明した。

 すると、キャルはその言葉をボードへと入力し、小さく何度も頷く。


「そうですか、そうですか。あなたは、その紅さんと言う召喚士の方に呼ばれて、異世界に……。私も、異世界の人に呼ばれたら異世界に行けるんでしょうか?」


 キャルのささやかな疑問に、一馬は困り顔で首を傾げ、「さぁ?」と静かに答えた。

 一馬の答えに、笑みを浮かべるキャルは首を傾げる。


「えっ? あ、あのぉ……さぁ? とは?」


 僅かに笑顔を引きつらせるキャルに、一馬は苦笑し右手で頭を掻いた。


「いや、実は……」


 一馬は非常に言い辛そうに本当の事を告げた。

 確かに火の国へは、紅によって呼び出されたが、それも殆ど偶然の産物で、本来は伝説の戦士、紅蓮の剣を扱える者を呼び出すはずだった。

 その為、狙って一馬を呼び出したわけではないのだ。

 それに、水の都や土の山へと行った際には、誰にも呼び出された形跡はなく、フェリアと初対面の時は魔術で攻撃され、周鈴には殴られ捕らわれた。

 しかし、その後、青龍と契約を結ぶとフェリアの意思で簡単に水の都に呼び出せる様になった。

 恐らく、今現在、火の国へも土の山へも、紅と周鈴の意思で呼び出す事は可能だろうがまだ、あれ以来火の国へも土の山へも呼び出されていない為、本当に行けるかは一馬も分からない。

 だが、水の都だけ特別だと、言う事は無いだろう、と言う考えを一馬は述べた。

 それに、一馬が別の世界に火の国の紅や柚葉、水の都のフェリアを呼ぶ事が出来るのだから、可能性はかなり高いだろう。

 一馬の説明と意見を聞き、キャルは「はうぅっ」と声をあげ肩を落とす。


「そう……なんですか? うぅー……残念です。私も、自由に異世界に行ってみたかったのに……」


 落胆するキャルに、オールドは呆れた様な眼差しを向け、腰に右手を当てると深く息を吐いた。


「だから行ったでしょ。異世界に行くなど、そう容易くないと」

「けどー……」


 いじけるキャルは俯き、子供のように唇を尖らせていた。

 余程、異世界に興味があるのだと、一馬は苦笑し落ち込むキャルを見据えていた。

 落ち込むキャルの頭を、オールドは優しく撫で、穏やかな表情で微笑む。

 その姿に、一馬は幼い頃の夕菜と雄一の姿を思い出す。今に思えば、雄一にもあんな風な――と、思った一馬だが、その記憶の中ではどちらかと言えば夕菜の方が今のオールドの立ち位置だった。


(あぁー……。そう言えば、昔っから雄一は喧嘩っ早かったから……夕菜が良くあんな風に嗜めてたなぁー)


 感慨深そうに何度も頷く一馬は、口元に薄らと笑みを浮かべる。

 いじけていたキャルは、瑠璃色の髪を右手で弄りながら深々と息を吐き、気持ちを切り替える様に二度、三度と強く拳を握り頷いた。

 そして、満面の笑顔を一馬へと向け、また目を輝かせる。


「でも、キミを調べれば、異世界に行き来できる方法が分かるって事だよね!」


 両手をワキワキと動かしそう言うキャルに、一馬は半歩退く。


「ど、ど、どうだろう? す、少なくとも、俺を調べても何も出ないよ」


 苦笑する一馬に、キャルは残念そうに繭を曲げる。


「そうですか……」


 明らかに声のトーンが下がった。落ち込むキャルは、もう一度深く息を吐くと肩を落とした。

 そんなキャルの肩へと右手を置いたオールドは、鋭い眼差しを一馬へと向ける。オールドの鋭い眼差しに、一馬はビクッと肩を跳ね上げ視線を逸らす。

 威圧的で、まるで敵意を向けられているそんな感じがした。寒気がを感じ、表情を引きつらせる一馬は、この感覚を以前にも感じたことを思い出す。

 それは、夕菜に近づく男共を追っ払う時の雄一が見せる時の空気感だった。

 まさかと思うが、オールドも雄一と同じシス――と思ったが、すぐに一馬は思い出す。キャルとオールドには血のつながりは無い事を。

 だとすると、シスコンにはならないし、単なる恋愛感情なのだろうと、ホッと一安心する。

 さすがに身近にシスコンが二人もいたら、大変だと、一馬はわけの分からない事を思っていた。


「おい。貴様」


 考えて込んでいた一馬へと、オールドの渋い声が向けられる。

 一見穏やかそうな声に聞こえるが、その裏に明らかな敵意を感じ、一馬は表情を強張らせオールドへと目を向けた。


「な、何?」


 一馬がそう言うと、オールドはズカズカと歩み寄り、一馬の首に腕を回し顔を近づけ小声で告げる。


「キャルに色目を使うな。それから、なるべく異世界の話はするな。いいな?」

「えっ? どう――」


 どうして、そう尋ねようとして、一馬は言葉を呑み込んだ。

 それは、横にあるオールドの表情が恐ろしく怖かったからだ。

 何も聞くな、そう言っているように一馬は感じた。息を呑み込み小さく頷く一馬に、オールドは一旦瞼を閉じ、深く頭を下げる。


「よし。ならいい」


 そう呟き、オールドは一馬の首に回した腕を解き、身を離した。

 それから、一馬の背中を叩き、突き放す。よろよろ、前のめりで前方に一、二歩ほど進んだ一馬は右手で胸を押さえ、ホッと息を吐き出した。

 一馬とオールドのやり取りにキャルは不思議そうな表情を向け、右手の人差し指を下唇へとあて、尋ねる。


「どうかしたのかな? 二人でヒソヒソと?」

「いえ、何もありませんよ」


 キャルの言葉に、穏やかな落ち着いた口調でオールドはそう述べた。

 しかし、キャルは納得していないのか、目を細めると眉間にシワを寄せる。

 そして、唐突に声を上げた。


「あぁーっ!」

「な、何ですか?」


 キャルの突然の大声に、オールドは驚く。まさか、自分が一馬に釘を刺した事に気付いたのか、そう思うオールドだが、キャルは頬を膨らし子供のように声を張る。


「もーっ! 二人だけで異世界に行く為の相談とかしてたんでしょ! ひどーい! 私も異世界行きたい!」


 駄々を捏ねる子供のようにそう言い両腕を激しく上下に振るキャルの姿に、一馬は呆れる。

 見た目とのギャップが凄く、半分引いていた。大人びた印象が強かったが、まさかここまで子供っぽいとは思っても見なかった。

 いや、もしかするとそれだけ異世界に対して強い思い入れがあるのかも知れない。だからこそ、あそこまで子供っぽくなってしまうのかも……と、一馬は思ったが、すぐに違うかも、と考え直した。

 ただ単に、こんな風になれる程オールドの事を信頼していて、それだけ心を許しているという事なのだろうと、一人妙な解釈をし小さく頷いていた。


「ち、違いますよ! それに、先程も話にあったじゃないですか。異世界に行く方法は分かっていないと」


 一馬が一人妙な解釈をしている頃、オールドは必死にキャルを宥めていた。

 もちろん、オールドの言っている事に偽りは無い。キャルの言ったような異世界へ行く方法を画策していたと言う事実はないが、涙目のキャルはその言葉を信用せず、更に頬を膨らし唇を尖らせる。


「ぶーっ。オールドの言う事はもう信じないもん!」


 やはり子供の様にそう言うキャルはソッポを向いた。

 呆れ顔のオールドは、困ったように右手で頬を掻き、鼻から息を吐き出す。こうなっては何を言っても無駄だと、分かっているのか、オールドは何も言わずにドアの方へと歩き出した。


「とりあえず、異世界の事など忘れて、現状をどうするのか、考えてください」


 オールドはそう告げると、部屋から出て行った。

 オールドが部屋から出ると、プシューッとガスの抜ける音と共にドアは閉じられ、部屋には気まずい空気が漂う。

 ここで一馬はようやく気付く。


(あっ! アイツ! 逃げた!)


 オールドがこの場の空気を嫌い逃げた事に。

 残された一馬は目を細め、うな垂れていた。こんな所で一体、どうすればいいのか、そう考えていると、ポケットにしまっていた巾着から赤い光が漏れる。


「んっ?」


 その光に一馬はそんな声をあげ、ポケットに手を突っ込み、巾着を取り出す。口から赤い光を放つ巾着に、一馬は嫌な予感を覚えつつ、召喚札を巾着から取り出した。



 場所は変り、火の国、守護朱雀の門。

 鬼の襲撃も暫く無く、朱雀の門はとても和やかな空気が漂っていた。

 子供達の明るい笑顔と笑い声が響く庭園を正面にした部屋に紅は居た。いた、と言うよりも、そこが紅の部屋だった。

 座敷になっており、化粧台の布を被せた鏡の前に正座する紅は、胸元に召喚札を握り締めていた。


「えへへ……」


 時折、そんな笑みを零し、紅は口元を緩ませる。

 最近、中々、一馬と連絡を取れず、今日は一週間ぶりの通信になるのだ。

 その為、紅は何処か浮かれていた。久しぶりに一馬と話せると思うといやがおうにも心は躍っていた。

 何故、そんな気持ちになるのか紅には理解出来ない。こんな気持ちになるのは、初めてのことだったからだ。

 鼻歌を歌う紅は、リズミカルに体を左右に揺さぶっていた。

 そんな折、奥手の襖が開かれ、柚葉が両手に大量の本を持ち部屋へと入ってくる。


「きゃっ! ゆ、ゆう、柚葉さん!」


 突然の訪問者に、紅は体を向け驚きの声を上げる。

 持っていた本を畳の上へと下ろすと、柚葉は右手で腰を叩き「ふっ」と息を漏らした。


「お届けモノよ。と、言っても、全部書庫にあった召喚の儀に関する書物だけど……一体、何に使うつもり?」


 背筋を伸ばし脱力する柚葉は、書物を見つめ紅へと視線を向ける。

 相変わらず、羽織袴姿の柚葉に、紅はニコリと微笑すると、


「柚葉さん。着物とか着てみたらどうですか?」


と、何の脈絡も無く口にした。

 ジト目を向ける柚葉は、僅かに右の眉をピクッと動かし、


「何? いきなり。喧嘩売ってるの?」


と、不満そうな表情を紅へと向けた。

 そんな柚葉の言葉に、紅は慌てて両手を振る。


「そ、そんな事ありませんよ! 柚葉さんは着物が似合うと、そう思っただけですよ」


 艶やかな長い黒髪を左右に振り見出し、顔を振る紅の姿に、柚葉はため息を吐いた。

 紅がそんな嫌味を言う様な奴ではないと知っている為、本心からそう言っているのだという事は柚葉が一番知っている。

 だから、呆れた様にため息を吐き、彼女が胸に握り締めた召喚札を見据え呟く。


「全く……あんた、自分の立場分かってんの?」

「へっ? あぁ……はい。分かってるつもりですよ?」


 柚葉の言葉に、紅は不思議そうに首を傾げる。

 すると、柚葉は胸の前で握り締めた右手を指差し、


「それ、本来は聖霊を呼び出す為のモノよ? 異世界の彼と通信する為の道具じゃないわよ?」

「えっ? あっ、いや……そ、そんな! 別に、通信を楽しもう何て、そんな事思ってませんよ! ほ、本当で――」

『紅? どうかした?』


 紅の必死の言い訳を台無しにするタイミングで一馬の声が召喚札から漏れた。

 静まり返る一室。

 ジト目を向ける柚葉。

 赤面し俯く紅。

 そんな中、召喚札が光り、一馬の声がもう一度した。


『おーい。紅? もしもーし』

「…………」

「…………ほら、呼びかけてるぞ」

「は、はぅぅ……」


 耳まで赤くする紅は、そう声を漏らし静々と柚葉へと背を向ける。


「あ、か、かず、一馬さん……ですか?」

『えっ? あっ、うん。そうだけど……えっ、ちょ、ちょっと! やめ――』

『何? 何? 何してるんですかぁ? もしかして、通――』


 召喚札の向こうから聞き覚えの無い女性の声が聞こえ、紅の表情が凍りつく。と、同時に柚葉は妙な寒気を感じ、紅の背中を見据える。

 その背から、明らかに禍々しい何かを見た柚葉は、表情を引きつらせ目を細めた。結構、紅とは長い付き合いだと思っていたが、あんな姿は見たことが無く、柚葉は聊か驚いていた。


『ちょ、ちょっと! は、離れて――』

『ねっ、ねっ! 私も、私にも通信させて! ねっ? ねっ?』

『いや、そ、それはちょ、ちょっと……』


 召喚札の向こうから聞こえる楽しげな声に、紅の肩がワナワナと震え、その笑顔はぎこちない。

 召喚札から漏れ聞こえる声に、柚葉は呆れ眼を向け、


(あいつ……また別の女か……)


と、心の中で呟き、右手で頭を抱えた。

 そんな中で、紅の静かな声が響く。


「一馬さん。えっと、今どちらに?」

『えっ? い、今? そ、その――ちょ、ちょっとた、立て込んでて……』

『いいじゃない! 私も話したい!』

『いや、だ、だから、ホントやめてください!』


 随分と楽しげな声が聞こえるが、紅の穏やかな笑みは変らない。


「立て込んでると言うのは……えっと、また別の世界なんですか?」

『あっ、うん。そ、そうなんだ……』

『私もはーなーしーたーい!』

『だ、だから、ちょ、ちょっと、ま、また今度でいいかな?』


 この言葉は恐らく自分自身に向けられた言葉なのだろうと、紅は解釈し、静かに呟く。


「私もそちらに行ってもよろしいですか?」

『は、はぁ? な、何で?』

「私に出来る事があるかもしれないじゃないですか? 水の都の時のように」

『えっ……い、いや、それは……やめた方が……』


 明らかに一馬の挙動がおかしい。

 何故そんなに拒否するのか理由が分からない。

 その為、紅は笑みを作ったまま食い下がる。


「いいじゃないですか? その方、私と話したがってるみたいですし……」

『いや……ほ、ホント、やめた方――』

『こっちにきてくれるの! 呼んで呼んで! 私、会いたいし、話したーい!』

「そう言ってますし」


 女性の賛同もあってか、一馬は諦めた様にため息を吐く。


『はぁ……分かった。けど、知らないからな……何があっても……』


 一馬はそう言い、紅を召喚することを承諾した。

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