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──キリコのマッチ──

あれから、二時間。

俺はくそ女神様と交渉して黒い筆を返してもらった。

いや、元々は俺の何だけどね。

とにかく、返してもらった。

なんか、とても重いものを見た気がする。

「………帰ろう」

俺は帰ることにした。あんなものを見たあとは、もう絵を描く気にもなれない。

仕方なく未完成の絵が描いてある画用紙とペンケースを片手に持った。

帰る用意もたったの二十秒で済ましたところで、帰ることにした。

「………ってか、金の筆って使いにくくねぇか?」

何となく思ったことを口にした。

まぁそんなどうでもいいことを口ずさみながらも、俺は足を動かして、歩いていた。

町についた。まだまだ家からは遠いところだ。

元々、あの森は俺の家からかなり離れている。

あと、何時間もかかるだろうな。

別に歩くのは好きだからいいけど。

そのまま、愚痴もこぼさず、ただ歩いていると。

「──────あれ?」

町の隅に小さい女の子がいた。

なんか、赤いずきんを頭に被っていた。

そして、その子の右横には二足歩行の狼がたっていた。

そして、その女の子はこう言った。

「ま、ま、マッチはいりませんか?」

……なんでだよ!?

「なんでそうなるの!?」

俺は本心からツッコミをいれた。

「え?」

と、狼が俺に回答した。お前に用はねぇよ!

……いや、ある意味ではあるけども!

「赤いずきんを被っていて、狼がいるなら、それは『赤ずきんちゃん』だろ!?なんで、『マッチ売りの少女』なの!?」

俺は声を張り上げた。

「いや、赤いずきんを被って狼がいたら、『赤ずきんちゃん』っていうわけではなくね?」

再度、狼が俺に回答する。

「お前に用はねぇよ!俺は童話の主人公たる、赤ずきんちゃん(仮)に話しかけてるんだよ!」

「主人公?いや、これ、『赤ずきんちゃん』じゃないしね」

「『マッチ売りの少女』でもないけどな!」

これはなんの童話だ?まさかの『赤ずきんちゃん』と『マッチ売りの少女』を足して、百で割った童話か?

「いや、この際、どっちでも良くね?」

また、俺に狼が『以下略』

「あー、うん。分かった。もう追求は諦める」

もう話すのが面倒になってきた。

だが、これだけは聞きたかった。

「ところで、なにしてるんだ?」

すると、即答で女の子の方が答えた。

「金稼ぎです。マッチ売りの少女っぽくすれば皆に同情をもっていただき売れるかなと」

かなり可愛い声だった。でも、言ってることは最悪だった。

「うん、うん。そうか。これで『マッチ売りの少女』路線もなくなったな。」

もうこれどんな童話なのかわからなくなってきた。


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