──キリコの泉──
今日はいい天気だった。
だから、俺は外に出た。
だから、俺はいつもの森に来た。
だから、俺はそこでいつもしている絵描きをした。
だから、俺はのんびりといい休日をおくれる手筈だった。
しかし、絵を描いてる途中、間違って筆を近くの池に落としてしまった。
慌てて池の中から筆を拾い上げようとした。
そして、池の中に手を入れようと思って、上着の腕の部分を捲ったんだ。
そこまでは別に良かったんだ。
なのに、………なのに、
『貴方が落としたのは、この金の筆ですか?銀の筆ですか?』
なんで、女神が出るんだよぉ!
そう!今、俺の目の前には女神がいる。
うん、俺の頭が異常でなければ目の前に女神がいることは確かだ。………うん。
『貴方が落としたのは、金ですか?銀ですか?』
これは、答えるべきだろうか?
まぁ、、答えないのも癪か。
「えっーと。黒い筆を落としました…」
えっと。これさ、女神様の回答、予想つくよね?
『貴方は正直ですね───────』
ほら、見ろ。考え通りの答えが返ってきたよ
。そこで、金の筆を───────
『───────ご褒美にこの茶色の筆をあげましょう』
────ほら、くれた。…………え?
「いやいやいや!何でだよ!?」
『え?』
え?、じゃねえよ!めっちゃ驚いたわ!
「いやいやいや、そこは『金の筆をあげましょう』とか『銀の筆をあげましょう』ってなるでしょ!?」
『いや、…別に正直に言っただけで金や銀とかあげなくね?』
この人、本当に女神か!?俺は心底驚く。
「いや、まぁ、そだよ。確かに俺は正直に言っただけだよ!でもさ、いや、さ……。えー…」
『でしょ?ほら、有り難く茶色の筆を貰っときなさい』
「えー、いや、えー。なんか、なんか、……ふに落ちねぇー」
俺は一応、茶色の筆を貰った。
……いらね。
「あ、黒い筆は返して貰えるんですか?」
『では、さようなら』
女神様は泉の中に入っていきました。
「って!おい!待てや、ごらぁ!」
泉の中に入っていった女神様はまたもや、出てきます。
『なにか?』
こいつ!惚けてやがる!
「俺の黒い筆を返せや!ってか、この茶色の筆!俺の持ってた黒いヤツよりも古いだろ!?なんか、カビとか生えてるし!」
『それは気のせいです』
「気のせいじゃあない!良く見ろ!この側面とこ!カビが生えて、変色してるぞ!」
『(笑)』
「てめぇ!」
え?女神様って笑うの?めっち可愛いだけど?
でも、やってることが最低だから素直にこの笑顔を受け取れないよ……。