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Episode 0 「救いを求めない悪魔」

※今回は出会い編なので、残酷なシーンはありません。お気楽にお読みください(^^)


「うざい…」


銀髪の天使アルシェの人間形「浅野俊介」は、思わずマンションの自室で呟いた。


このところ「清廉な歌声を持つ魂」である主人マスターの「北条きたじょう圭一」に、次から次へと下級悪魔が戦いを挑んでくるのである。

圭一の歌は、悪魔の動きを封じ込める力を持つのだが、救いを求める悪魔だけに効果があるようだ。だが、今までどの悪魔も動きを封じ込めてきたので、関係ないのかな?と浅野は思っていた。それも驚いたことに、讃美歌に限らない。圭一の鼻歌でも、動きを封じ込められたようなどじな悪魔もいるため、悪魔たちにとって圭一が脅威であることは確かである。

だが、今のところ上級悪魔が来ることはない。万一、自分たちが出て圭一に動きを封じ込められてしまったら、プライドが許さないんだろうと浅野は思う。そのため、大きな戦いにはならないが、下級悪魔たちの間断ないちょっかい(天使アルシェにしてはその程度のもの)に頭を抱えている。それも圭一に気を遣わせないよう、気付かれないように封印または消滅させなければならないので、浅野を始め、圭一の守護天使たちは疲れ果てていた。


……


浅野の家に突然、圭一の守護天使の1人「リュミエル」が現れた。この男(?)には珍しく、顔色が真っ青になっている。金色の髪に照らされて、どちらかというと白く見えるほどだ。


「とんでもない奴を見た…」

「飛んでもない奴?…じゃぁ歩いてるのか?」


リュミエルが目を吊り上げて、浅野の首に両手を回した。


「すいません!もう言いません!」

「ザリアベルだよ!!」

「ザリアベル!?…シャベルじゃなくて!?」

「本気で怒るぞ!」


真剣な時につい茶化してしまう癖のある浅野に、リュミエルが本気で浅野の首に回した両手に力を込めた。


「ごめんなさい!!…もう言いません!」


浅野が慌てて言った。リュミエルは浅野を突き離すようにして手を離した。浅野は首に手をやりながら言った。


「いや、冗談抜きで…本当にザリアベルだったのか?」

「あの姿を見間違える訳ないだろう!?」

「…そういや…そうだ…」


浅野は納得した。


ザリアベルとは、魔界の中では「大悪魔」という階級で、魔界と人間界を生体とともに行き来できる悪魔である。浅野が以前生体を持つ天使だった時は、生体が邪魔をして魔界も天界も行き来できなかった。本来はそれが普通なのだが、ザリアベルは唯一それができる存在なのである。人間だった頃の貢献から、魔王からもらった力だと聞いたことがある。

悪魔たちを統率し、天使はおろか神まで殺せるほどの力を持っている。実際に邪神を殺した経歴も持っているという。敵に回すともうこちらの命はないとあきらめるしかない。

またその姿は、顔の両頬に長短2本ずつの傷があり、目は常に赤い。人間界では異様な様相とも言えるその姿で、ザリアベルが人間界を歩きまわれば、リュミエルが言うように、見間違えるはずはないのである。


「よく、警察官に職務質問されないものだよ…」


浅野が思わずそう呟いてから、はっとした。


「おい、ちょっと待て!圭一君を狙ってるかも知れないってことか!?」


浅野が声を上げた。リュミエルは「気付くの遅いぞ」と舌打ちした。


「だから、とんでもない奴だって言ったんだ。」

「この際、飛んでくれっ!」

「お前はまだそんなこと…!」


浅野はリュミエルにまた首に手をかけられた。


「ごめんなさい!つい口から出ちゃうんだってばっ!!!」

「2度と口をきけないようにして欲しいか!?」

「嫌です!すいません!ごめんなさい!」


浅野は両手を合わせて懇願している。


……


2人がそんなことをしている同時間-


圭一は、2人の警察官に職務質問されている男をふと見た。

目の下に2本の傷があり目は赤い。異様な雰囲気に警察官が不審に思ったのだろう。男はじっと警察官たちを見て黙り込んでいる。


圭一は思わず駆け寄った。

1人の警官が圭一を見た。そして思わず「あれ?君、アイドルの…?」と呟いた。


「はい。北条圭一です。…この方がどうしました?」


男が圭一を見て、赤い目を見開いた。


「こんにちは。どうしてこんなところに?」


圭一が親しげに話しかけた。


「北条さん、お知り合いですか?」


警察官が言った。


「はい。うちのプロダクション関係の人なんですよ。こういう格好するのが仕事なんです。」

「そうでしたか。」


警察官たちはほっとしたように顔を見合わせた。


「これは失礼しました。」


警察官たちは男にそう言い、警察帽を少し上げると、その場を立ち去って行った。


男は圭一を見て言った。


「…清廉な歌声を持つ魂…」

「やっぱり…天使か悪魔か…そのたぐいの方だと思いましたよ。」


圭一がそう言って微笑んだ。


「北条圭一です。お名前をお聞かせいただけますか?」

「…ザリアベルだ。」

「ザリアベルさんですか。よかったらうちに来ませんか?そのお姿で外におられると、また職質(職務質問)受けますよ。」


男、ザリアベルは目を見開いた。


……


とりあえず、浅野とリュミエルは、圭一の家に行くことにした。

家族がいるかもしれないので、圭一の家の玄関まで瞬間移動し、浅野の姿で呼び鈴を押した。リュミエルが隣にいるが、圭一にしか見えないので気にすることはない。

インターホンから、圭一の声がした。


「はい?」

「浅野です。」

「あ!待ってたんですよ!どうぞ!玄関開いてます!」

「了解!」


浅野がそう言うと玄関を入った。リュミエルがついてきている。浅野は靴を脱いで、玄関を上がった。


「お、いい匂い!クリームシチューだな、こりゃ。」


浅野はそう嬉しそうに言った。浅野もリュミエルも、圭一の手料理は大好きだ。


「お邪魔ー…」


と言って、浅野が入りダイニングを覗いた途端、あまりの驚きに玄関まで飛びずさった。


「?…浅野さん?どうしたんですか?」


圭一が驚いて、玄関まで追いかけてきた。何故かリュミエルまで浅野と同じように、玄関に背中をくっつけて固まっている。


「…なんで…ザリアベルがこんなところに…」


浅野が震えながら呟いた。リュミエルが声にならず首を振っている。


「ザリアベルさん、ご存じなんですか!そこでお会いしましてね。」


圭一が呑気にそう言った。


「そこでお会いしましてって、近所のおっさんとは違うんだぞ、圭一君…」


浅野が震えながら言った。


「…それも、シチューうまそうに食べてるし…」

「浅野さん達も一緒にどうぞ。いっぱい作ったんです。」

「…どうする?リュミエル…」

「…ここで逃げたら、向こうにへんに思われるんじゃないか?」


リュミエルの言葉に、浅野がうなずいた。


「そうだな…。入るか。」


浅野とリュミエルは覚悟を決めて、またダイニングに向かった。圭一が嬉しそうに後に続く。


「…お邪魔します…」


浅野がザリアベルに言った。ザリアベルはスプーンを持ち上げたまま答えずに、浅野とリュミエルを見た。


「…天使たちか。」


ザリアベルが言った。


「邪魔してるのはこっちだ。」


ザリアベルはそう言って、またスプーンを口に運んだ。


「さ、お2人とも座って下さい。ザリアベルさん、シチューは初めてだったんですって。人間だった時も食べたことなかったって。」

「…そりゃそうだろう…時代が違う…」


浅野が圭一の言葉に思わず呟いた。

浅野とリュミエルはザリアベルの向かいに座った。


圭一が、シチューの入った皿を、浅野とリュミエルの前に置いた。


「どうぞ。ザリアベルさんも美味しいって言ってくれましてね。2杯目なんです。」

「…はあ…」


浅野とリュミエルが緊張しながら、スプーンを取り食べ始めた。


「悪魔がこういうの食べると…後はどうなるんですか?」


浅野がザリアベルに尋ねた。天使が食べると、食べ物の元になった魂は天に召されるのだが…。


「知らん。」


ザリアベルがそう答えた。


「…ですよね。」


浅野はそう言って、シチューを口に運んだ。


「…こっちには何をしに来たんですか?」


リュミエルがいきなり言った。浅野は驚いてリュミエルを見た。


「リュミエル!ばかっ!」

「彼に会うためだ。」


ザリアベルは、圭一をちらと見て言った。


「?…僕にですか?」


ザリアベルの隣に座った圭一が不思議そうに言った。


「最近、下っ端の悪魔たちが騒いでいるものでね。…その騒ぎの発端を確認に来たんだ。」

「!?」


これには、浅野もリュミエルも驚いた。


「確認に来ただけですか?」

「……」


ザリアベルが黙り込んでしまった。浅野とリュミエルはぞっとした。

…もしかすると、本当に圭一を殺しに来たのかもしれない。だが殺すつもりなら、とっくに殺しているはずである。


「…人間だった事を思い出したよ。ありがとう。」


シチューを食べ終わったザリアベルが、布巾で口を拭いながら圭一にそう言い、立ち上がった。


「え?帰るんですか?」


圭一も立ち上がった。何故か浅野とリュミエルまでが立ち上がっている。


「ああ。今日は帰る。」


ザリアベルはそう言うと、玄関に向かって行った。


「…また…来て下さいね。」


圭一が玄関まで見送りながら言った。

ザリアベルは圭一にふと振り返ったが、何も言わずに玄関を出て行った。


浅野とリュミエルも圭一の後ろで立ちつくしていた。


……


「なんなんだ?…どうしたらいいんだ…俺たち…」


浅野が、シチューを前にして頭を抱えている。リュミエルも食が進んでいない。


「いい人でしたよ。歌が好きなんですって。」


圭一がザリアベルが食べた後の皿を洗いながら言った。


「歌ぁ!?」

「ええ。軍隊にいる時、士気を高めるために、よく仲間と歌ったんだそうです。…でも、その仲間達をすべて失ってしまったって…。」

「なるほどな…軍歌か。」

「僕、今「フィンランディア賛歌」の稽古をしているんですってザリアベルさんに言ったら、ご存じなかったようで…。」

「そりゃ、知ってたらびっくりする…。」


浅野が突っ込んだ。


「「フィンランディア賛歌」は、フィンランド人を讃える歌で、皆で力を合わせて突き進もう…みたいな歌詞なんですよって言ったら…自分たちが歌っていた歌に似てるっておっしゃって…」

「…で、圭一君、歌ったのか!?」

「いえいえ…。まだレッスン中なので歌いませんでしたけど、一度聞かせて欲しいっておっしゃってました。…だから、がんばって練習しなきゃ。」


圭一のその言葉に、浅野はリュミエルに小声で言った。


「…ザリアベルって悪魔だろ?…動き封じこまれるのわかってて…歌を聞くのかな…?」

「……」


リュミエルがスプーンを持ったまま、黙り込んでいる。


「封じ込められたらいいが…。」


そのリュミエルの呟きに、浅野がぞっとした。


「…確かに…封じ込められずに、もし本気でかかってこられたら…俺たちも圭一君もひとたまりもないな…」


呑気に鼻歌を歌っている圭一の後ろで、浅野とリュミエルはその場に固まっていた。


……


夜中-


浅野はマンションの自室のベッドから飛び起きた。


「!!…なんだ!?この胸騒ぎ…」

「アルシェ!」


リュミエルが突然現れた。


「ばか!浅野やってる場合じゃないぞ!悪魔の集団が、海の上まで来てるんだ!」

「悪魔の集団!?」


浅野は銀髪のアルシェに姿を変えて、ベッドから立ち上がった。

リュミエルがうなずいて言った。


「たぶん圭一マスターを狙いに来てる。」

「…ザリアベルが呼んだのか?」

「…わからないが…だとしたら…俺たちだけじゃ無理だ。」

「だが…大天使様を呼ぶ時間がないな…」

「とにかく行こう!マスターを連れ去る前になんとか引き留めるんだ。」

「…よし…」


浅野アルシェとリュミエルは姿を消した。


……


埠頭に移動したアルシェとリュミエルは、驚きのあまり固まった。

海の上に、悪魔の大群が空を黒く染めている。今日は満月のはずなのに、光がほとんど届いていない。

リュミエルが、その悪魔の大群を見て言った。


「…何故か、ここから動かないんだ…」

「ザリアベルに止められてるんだろう。…しかし、どうすればいい…」


アルシェが弓を持ちながら、唇をかんだ。


「今のうちに、1体ずつでも消滅させるか?」

「いや、向こうが何もしないのに、こっちが手を出すわけにはいかない…」


アルシェとリュミエルはただ、悪魔たちとにらみ合いながら立ちすくんでいた。


その時、カツーン、カツーンという足音が聞こえた。ゆっくりこちらに歩いてきている。


ザリアベルだった。


赤い目を光らせて歩み寄るその姿に、アルシェ達はぞっとした。


「ここに圭一君がいないのが救いだが…」


そうアルシェが言ったとたん、タクシーが走り去る音が聞こえた。ザリアベルが立ち止まった。


「!?まさか!!」


圭一が子猫系天使「キャトル」を抱いて、ザリアベルの後ろから駆け寄ってきていた。だがザリアベルは振り返らない。ただアルシェ達の方を向いて立っている。

圭一が叫んだ。


「アルシェ!リュミエル!」

「ばかっ!なんで来るんだ!?」


アルシェがそう言ったが、ザリアベルが間にいるため、アルシェもリュミエルも動けない。


悪魔たちが騒ぎ出した。


「…もうだめだ…。」


アルシェが弓を下ろして言った。リュミエルがアルシェに言った。


「ばか!あきらめるわけにはいかない!俺たちがやられても、マスターだけは守らないと…」

「…それはわかってはいるが…どうやってザリアベルをやっつけるというんだ。」


アルシェが呟くように言った。今、アルシェ達は悪魔たちとザリアベルの間に挟まれた最悪の状況だ。

悪魔たちが一斉に羽を羽ばたかせたのがわかった。

アルシェとリュミエルは条件反射で振り返り、アルシェは弓矢で、リュミエルは光の刃で悪魔たちを攻撃した。


「もうこうなりゃやけだっ!!」


アルシェが次々と光の矢を出現させ悪魔たちを射ぬいていく。しかし悪魔たちの数が減る様子がない。


「なんだよ。この終わらないゲームみたいな状況…」


口では呑気な事を言っているが、表情はいつものアルシェではないほど歪んでいた。リュミエルは何も言わずに光の刃を放っている。


「アルシェ!リュミエル!…」


圭一が駆け寄ろうとするのを、ザリアベルが片手を開いて止めた。


「ザリアベルさん?」

「…そういうことか…」


ザリアベルの呟きに「え?」と圭一が聞き返した。


「…あいつらは、救いを求めてるんだ。」

「!?…救いを?」

「そう…君の歌声を聞くことで…救われることを求めている。…だが…」


ザリアベルは圭一に振り返り、苦笑するように口をいがめた。

その目は青くなっている。


「…悪魔に救いは来ない。」

「!?…そんな…」

「…神は残酷なんだ。…君が思っているよりずっとね。」

「どうしても無理なんですか?」

「無理だ。…悪魔は消滅するか、生き続けるかどちらかしかない…。」

「……」


圭一は悲しそうに手に抱いたキャトルを見つめた。キャトルが「にゃあ」と鳴いた。

そのキャトルの声に、ザリアベルがまた苦笑した。


「そうだな…その子猫の言う通りだよ…。消滅することが彼らにとって一番の幸せなんだ。」

「……」


圭一は黙り込んでいる。ザリアベルが青い目のまま言った。


「圭一君と言ったな。」

「…はい。」

「今日言っていた「フィンランディア賛歌」を歌ってくれ。」

「今…ですか?」

「そう…今だ。…奴らを消滅させる。」

「!!…ザリアベルさん…」

「…また仲間を失うことになるが…仕方あるまい。奴らが望んでいることだ。」


ザリアベルは、圭一に背を向けた。


「ザリアベルさんは?」

「さぁ…俺もどうなるかな…。君の歌を聞いてみないことには、わからない。」

「!!」

「…動けなくなったら、奴らを消滅させることはできなくなる上に、君の天使たちにやられるだろう。」

「そんな…」

「ほら…迷っている暇はないぞ。君の天使たちが手こずっている。」

「!…」


圭一はアルシェとリュミエルを見た。2人の力が弱ってきているのが目に見えてわかる。


「…わかりました…」


圭一は態勢を整えた。キャトルが圭一の手から飛び降りると、圭一の横でお座りをして悪魔たちの方を見た。


圭一は「フィンランディア賛歌」を歌いだした。声がかき消されないように、体中の力を振り絞って歌い出す。英語のその歌詞は、フィンランド人達の誇りと団結を讃えるものだった。

アルシェとリュミエルが圭一の声に驚いて、圭一に振り返った。

悪魔たちの羽が次々に止まり、海に落ちていく。2体、3体と海に浮かび始めた。


ザリアベルは身じろぎもしない。動きが封じられているというより、聞き入っているように見える。

リュミエルが両手を伸ばして重ね、ザリアベルに向けた。


「!待て!リュミエル!」


圭一が歌いながら、ザリアベルの前に守るように立ったのを見て、アルシェがリュミエルを止めた。


「圭一君に任せよう。」


アルシェが、歯ぎしりしているリュミエルに言った。リュミエルが手を下ろした。

悪魔たちは苦しんでいるものの、まだ耐えている数が多かった。さすがの圭一の歌でも、すべての悪魔の動きを封じ込めるのは無理だ。

目を閉じて圭一の歌を聞いていたザリアベルが赤い目を開いた。そして圭一の横に立ち、空の悪魔たちに向かって親指をつきだすと、ゆっくりΩ(オメガ)のマークを描いた。

アルシェがはっとした。消滅紋である。


「!!…圭一君、伏せろ!!」


アルシェはリュミエルを押し倒しながら叫んだ。

鋭い光が周囲を包んだ。音のない爆発が起こった。


……


圭一はその場に倒れていた。キャトルも圭一の傍で体を横たえている。

アルシェとリュミエルも、離れた場所で倒れたまま動かない。


悪魔たちの姿は全く消えていた。空にも海にも1体たりとも姿が見えない。


ザリアベルは、倒れている圭一を見た。


「…ありがとう。また歌を聞きに来る。」


ザリアベルはそう言うと、背を向けてゆっくり歩き出した。


……


翌朝-


浅野は目を覚ました。


「?」


起き上がってから、首を傾げた。


「…なんかおかしいな…夢か?」


そう呟いて、頭を掻いた。


「…そうだよなぁ…ザリアベルに会えるなんて事…そうそうないんだから。」


浅野はそう苦笑しながら言うと、ベッドから降りた。


「それも、ザリアベルがクリームシチューを食べるなんてのも、考えてみればおかしな話だ。…俺って、お茶目ー!」


そんなことを言いながら伸びをした。


……


浅野は圭一の家の呼び鈴を押した。


「はい!」


インターホンから圭一の声が返ってきた。


「浅野だよー!」

「どうぞ!待ってたんですよ!」

「了解ー」


リュミエルはいないが、夢とほぼ同じだな…と浅野は苦笑しながら、玄関を入った。

くつを脱いで、ダイニングに向かう。


(夢なら、ここにザリアベルが…)


そう思いながらダイニングを覗くと、あまりの驚きに玄関に飛びずさった。


「浅野さん?」


圭一が玄関まで浅野を追いかけてきている。


「…ザ、ザリアベルが…いるの?」

「ええ。昨日のお礼に僕が呼んだんですよ。」

「夢じゃなかったの?」


圭一が笑った。


「違いますよ。」

「ザリアベルを呼んだってどうやって?」

「会いたいって念じてたら、来てくれました。」


浅野は「そんなべたな!」と思わず言った。

リュミエルがダイニングからスプーンを持ったまま、現れた。


「何してるんだよ?」

「リュミエルっ!?お前いたのか!?」

「うん。ザリアベルと一緒にチャーハン食べてたんだけど。」

「ザリアベルとチャーハン!?」


合わない取り合わせだ…と浅野は思った。


(見たいような、見たくないような…)


浅野は苦笑しながらそう思ったが…


「やっぱり見たい!」


そう叫んで、ダイニングに飛び込んだ。


(終)


-----


挿入曲「フィンランディア賛歌」

シベリウス作 交響詩「フィンランディア」より

<あとがき>


最後までお読みいただきありがとうございます!


さて、今回主役になっている「ザリアベル」ですが、実はこのキャラ、天使と悪魔に詳しい息子が他のサイトで発表していた小説の主人公なんですよ。

今も残っているようですが、同じファンタジーにもかかわらず、私と世界観が全く違う(--;)

それでも、うちの浅野と会わせてみようと思い、息子にインタビュー(?)して登場させ、何度か読みなおしてもらい、修正をもらって、発表となりました。

ま、内輪受け感もありますが、今後のザリアベルの活躍をお楽しみいただけると嬉しいです。


是非、次回からもよろしくお願い致しますm(_ _)m

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